夏の国内旅行者数 コロナ前の水準に

この夏に国内旅行に出かける人の数は、新型コロナウイルスの感染拡大前の水準まで回復するという見通しを大手旅行会社がまとめました。
そして、旅行会社からこの夏の旅行のトレンドだという声もあがっているのが、「リトリート」。普段の場所から離れてゆったりと休暇を過ごすことだということです。

大手旅行会社「旅行需要が高まっている」

JTBは宿泊施設や航空便の予約状況、経済指標などをもとに夏休みシーズンに1泊以上の旅行に出かける人の動向について予測をまとめました。

それによりますと、7月15日から8月末までに国内旅行に出かける人の数は7250万人と、新型コロナの感染拡大前の2019年と同じ水準まで回復する見通しだとしています。

これについて会社では、新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行して以降、初めての夏休みとなり、旅行需要が高まっていることなどが背景にあるとしています。

一方、国内旅行にかける1人あたりの費用の平均は2019年より3500円多い4万円と見込んでいて、国内旅行の費用について調べ始めた1996年以降、最も高くなりました。

旅行需要の高まりや物価の上昇に加え、宿泊施設での人手不足で宿泊代が高騰していることなどが要因だとしています。

調査した会社では、「旅行需要の高まりでアンケートでは去年よりも旅行日数を増やすという声も多かった」と話しています。

都内めぐるバスツアー 利用客6割増

東京・大田区のバス会社では、7月から9月までの利用客は、去年の同じ時期と比べておよそ6割増えると見込んでいます。

7月6日午前10時に東京駅を出発し、都内の観光名所などをおよそ1時間かけてまわったツアーには、家族連れなど20人余りが参加しました。

天井がない2階建てのバスに乗った人たちは、国会議事堂や東京タワーなどをまわり、バスガイドの説明を聞きながら写真をとったり風景を楽しんだりしていました。

このバス会社では、コロナ禍で運行できなかったお菓子の製造工場を見学できるコースや、花火大会のコースなどについて、7月中に再開する予定です。

7月に運行するコースは、日帰りと宿泊あわせておよそ140で、去年7月と比べて60ほど増えます。

会社では、7月から9月までの利用客は、去年の同じ時期と比べておよそ6割増えると見込んでいます。

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことなどを受けて、旅行に行きやすくなったと感じる人が多いことや、観光客に人気があるコースが再開することなどが増加の要因だといいます。

はとバス広報室の伊藤百那主任は、「観光バスの予約は増えています。この夏、運行を再開するコースも多いので、たくさんの人に利用してもらいたいです」と話していました。

家族と一緒に訪れた名古屋市の20代男性は、「新型コロナの影響で行きたいところにも行くことができなかったので、気軽に旅行できるようになってほっとしています。東京の名所をまわることができるバスに乗りたかったので、念願がかないました」と話していました。

新たな旅行のトレンド「リトリート」

ことしの夏の宿泊予約がコロナ禍前を上回る見通しのホテルの中には、日常を離れたゆったりとした休暇の過ごし方を提供し、宿泊客の増加につなげているケースもあります。

「リトリート」は、普段過ごしている場所から離れてゆったりと過ごす休暇の過ごし方とされています。

旅行会社によると、旅先の観光地をまわって楽しむというよりも、落ち着いた時間で心身ともにリラックスすることが一般的だということです。

「リトリート」について、コロナ禍をへてこの夏の旅行のトレンドとしてあげる旅行会社も出ています。

千葉県君津市にある創業70年以上の老舗のホテルは、おととしから「リトリート」を宿泊客に提供しています。

訪れた家族連れは自然の中を散策したり、湖のそばでヨガのポーズをして体を動かしたりするなどして、リラックスした時間を過ごしていました。

宿泊客は、「リトリート」を取り入れ客室を増やしたことや、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことなどで、コロナ禍前の2019年の同じ時期と比べて2倍あまりに増えています。

また、ことし5月からはキャンプなどを楽しむことができる施設を運営していますが、8月の予約はほとんどうまっているということです。

家族と一緒に訪れた50代の男性は、「自然にふれあえることができていい時間でした。日常の忙しさを忘れられ、リフレッシュになってよかったです」と話していました。

亀山温泉ホテルの鴇田英将代表は、「これまでは新型コロナの影響などで宿泊客の数が伸び悩んでいると感じることもありましたが、ことしの夏は予約が順調に増えていると思います。お客が喜ぶことをたくさん用意して、夏の素敵な思い出づくりの後押しをしたい」と話しています。

海外旅行は回復も コロナ前の半数程度

一方で、海外旅行の需要も少しずつ回復しています。

大手旅行会社のエイチ・アイ・エスは、7月21日から8月31日までに海外旅行に出かける予約済みの人数をまとめ、5日発表しました。

それによりますと、人数は去年の7倍に増えているものの(703.7%)、コロナ前の2019年と比較すると半数程度にとどまっています(53.4%)。

人気旅行先のランキングでは、去年3位だった韓国のソウルが1位で2019年の水準まで回復しています。
2位は去年1位だったハワイのホノルル、3位は台湾の台北となっています。

ソウルは年代別では3割が20代、形態別では4割が女性同士の旅行となっていて韓国はプサンも7位に入るなど人気となっています。

1人当たりの海外旅行の費用は平均単価は17万8000円で去年より14%ほど低くなっています。

これはLCC=格安航空会社の運航再開や、円安のためアメリカやヨーロッパ方面を避け影響を比較的受けにくいアジア方面に予約の中心がシフトしていることが要因だとしています。

エイチ・アイ・エスは、「海外旅行を計画する人が増えてはいるもののコロナ前の水準には戻っていない。円安や物価の上昇などの影響で近場の旅行先を選択する人が目立つ」としています。