長時間労働で中学校教員死亡 市と県に賠償命じる判決 富山地裁

7年前、富山県滑川市で、中学校の教員がくも膜下出血を発症して亡くなったのは、部活動の顧問の活動などの長時間労働が原因だとして遺族が賠償を求めた裁判で、富山地方裁判所は市と県に合わせて8300万円余りの支払いを命じる判決を言い渡しました。

富山県滑川市の市立中学校に勤務していた40代の男性教員は、7年前にくも膜下出血を発症して亡くなり、公務災害の認定をする「地方公務員災害補償基金」が長時間労働による過労が原因だったと認定しました。

遺族は、教員がクラスの担任や部活動の顧問の活動など、過重な長時間労働が原因で亡くなったのは、学校側が安全配慮の義務を怠ったからだとして、市と県に合わせて1億円余りの賠償を求める訴えを起こしていました。

一方、市側は「部活動は教員の自由裁量に委ねられるため、安全配慮の義務違反にはあたらない」などと主張していました。

5日の判決で、富山地方裁判所の松井洋裁判長は「教員が勤務時間外に行った部活動の顧問としての業務は、教員としての職責を全うするために行われたもので、全くの自主的活動であったとはいえない」と指摘しました。

そのうえで「校長は、教員が心身の健康を損なわないよう安全に配慮する義務を負うが、教員の負担を軽減するための是正措置がとられたとはいえない」などと指摘し、市と県に合わせて8300万円余りの支払いを命じました。

遺族 “教職についている方 自分の働き方に疑問をもって”

判決のあと、教員の妻が富山市内で記者会見を行い「裁判には勇気が要り、きょうまで本当に裁判を起こしてよかったのか疑問に思っていたが、判決で、主人の働きが仕事として認められてうれしいです」と話しました。

教員が亡くなった当時、夫婦には2歳の長女がいて、妻は長男を妊娠中だったということで「もっと早くに『こういう働き方はおかしい』と教職についているすべての方が自覚していれば、こんなことは起こらなかったと思う。もう二度と私たちのような思いをする人が生まれてほしくないので、いま一度、自分の働き方に疑問をもってほしい」と話していました。

また、原告の代理人の松丸正弁護士は、全国で教員の長時間労働が問題になっていると指摘し「日本の教育を持続可能なものにするために、教育界には小手先の改革ではなく、根本的に解決するための1つの重要な判決として受け止めてほしい」と話していました。

富山 滑川 水野市長と新田知事コメント

判決を受けて、富山県滑川市の水野達夫市長は、「ご遺族の皆様に心より哀悼の意を表します。判決については司法の判断を真摯(しんし)に受け止め控訴はしないこととしました。教職員が心身ともに健康に働くことができる環境を整えることが重要であると考え、現在の学校での働き方改革の流れをより一層進めていきます」というコメントを発表しました。

また、富山県の新田知事は、「教育現場で高い志や情熱を持って頑張ってこられた教員がいわゆる過労死したのは誠に残念で痛恨の極みであり二度とあってはならないと思っています。判決については、判決文を精査し滑川市とも相談しながら対応を検討いたします」とコメントしています。