“ツイッターの混乱” “メタの新サービス” 揺れるSNSの行方

アメリカのIT大手で、フェイスブックを運営するメタは、文章を投稿して共有する新たなSNS「スレッズ」を7月6日から提供する予定だと明らかにしました。

その一方、これまで日本国内で広く使われてきた「ツイッター」は閲覧制限がかけられるようになるなど混乱が続いています。

「ツイッター」のいまの状況は。今後の見通しは。メタに取って代わられるのか。専門家にも詳しく聞きました。

突然の閲覧制限

7月1日、アメリカの起業家、イーロン・マスク氏は自身のツイートでツイッターについて、アカウントの種類に応じて一時的に閲覧回数の制限を設けていることを明らかにしました。

制限する理由は、不正なデータ収集などインターネット上の不正な行為の急増に対応するためだとしています。

閲覧できるの投稿の数は1日あたり、
▽認証済みアカウントでは6000件、
▽認証されていないアカウントは600件、
▽作成されたばかりの認証されていないアカウントは300件までとしました。

その後、制限は一部緩和されています。

また、これまではウェブ上でログインしなくてもツイッターの投稿を見ることができましたが、アカウントを登録してログインしなければ限られた内容しか閲覧できなくなりました。

閲覧制限は、投稿一覧の画面をスクロールするだけでも適用されているとみられていて、実際にツイッターを読み込めなくなる人が相次いでいます。

さらに、投稿の保存や見られている投稿のランキングなど、ツイッターのデータを元にしたさまざまなサービスがツイッターとは別の会社から提供されていましたが、こうしたサービスが相次いで終了されるなど影響が出ています。

利用者からは「使いづらくなろうとも残っていたが、そろそろ限界」とか「本日限りでTwitterを辞めさせて頂きます」など、不満の声や代わりのSNSを探す動きが広がっています。

買収以降 揺れるツイッター

マスク氏が半年に渡るう余曲折を経てツイッターを買収したのは、2022年10月。

買収後、大幅な人員削減に加え、「認証バッジ」と呼ばれるアカウントが本人のものだと認証するサービスを有料化したり、永久停止としていたトランプ前大統領のアカウントを復活させたりするなど、新たな動きを次々に打ち出してきました。

ツイッターは個人の情報発信や情報収集だけでなく、国や地方自治体、企業などの情報発信にも使われてきました。

また、災害の発生で電話がつながらないときに救助要請に使われるなど、情報をやりとりする基盤の1つになってきました。

閲覧制限を受けて「災害時、ツイッターの情報収集力と拡散力は役立つ。助けを求めているときに閲覧制限になったらキツい」とか「命が危険にさらされているときに閲覧制限に引っかかると大変です」といった声も出ています。

何が変わったのか

マスク氏によるツイッター買収後、大きく変わった点をまとめると、以下のようになります。

<認証>
著名人など本人と確認されたアカウントには無料で青の「認証バッジ」。
→「認証バッジ」を有料化。「青」に加え「グレー」「金」のバッジも。(認証バッジがあると、投稿後の編集や長文ツイートが可能に)

<閲覧制限>
ログインなしでも閲覧可能。
→ログインなしでは閲覧できない投稿も。

閲覧できる投稿に制限なし。
→閲覧回数に制限。
▽認証済みアカウント 1万件まで
▽認証されていないアカウント 1000件まで
▽作成されたばかりの認証されていないアカウント 500件まで。

<アカウントの維持>
長期間ログインなくても問題なし。
→数年間利用されていない“休眠アカウント”を削除。

専門家はどう見るのか

いまの混乱の背景や今後の見通しについて、SNSに詳しい国際大学GLOCOMの山口真一准教授に聞きました。

Q. 相次ぐ仕様変更 ツイッターのねらいは?

A. 収入源の増加とコストの削減

まず第一に、マスク氏はツイッターを買収した当初から経営状況の改善を重視してきました。

ツイッターは収入の大部分を広告に頼っていますが、ビジネスモデルとしては難しく、実際、これまで多くの年で赤字となってきました。

そのため、認証バッジや、長文投稿などで有料ユーザーを獲得し、収入源を増やそうとしているのだと考えられます。

一方で、コストの削減も経営にはプラスになるため、外部のサーバーに頼ってきたものを、内部のサーバーで運用することを目指しているとされています。

その際に、サーバーに負荷がかかる閲覧を制限する必要性が出てきたのだと考えられます。

Q. 閲覧の制限は今後も続くのか?

A. いずれ解決 収益減で早期解除も

はっきりとしたことはわかりません。ただ、閲覧の制限は技術的な問題であり、いずれ、投資によって問題は解決されるものだと考えられます。

また、閲覧を制限することで利用者の利便性が下がれば、利用者、ひいては広告主が離れていく原因となり得ます。

利益を最大化することが目的ですので、大幅に収益が減少することになれば、制限を予定より早く解除する可能性もあると思います。

Q. 今後、ほかの仕様変更もさらに続くのか?

A. 間違いなく続く

間違いなく続くと思います。

マスク氏は走りながら考えるタイプですし、経営状況に問題があるのは間違いないからです。

広告収入に大部分を頼っているビジネスモデルが根本的な問題ですので、有料コンテンツを増やしていくのは当然の動きです。

今後も新たな課金制度を設けていくと思います。

【「スレッズ」など ほかのSNSの台頭は】

ツイッターで混乱が見られる一方で、フェイスブックを運営するメタはツイッターのように文章を投稿して共有する新たなSNS「スレッズ」を提供するとして、すでにアプリのストアでも7月6日以降、ダウンロードできるようになることが予告が出されています。

新たなSNSは写真や動画の投稿アプリ、「インスタグラム」と同じログイン情報を利用できるなど、既存のSNSと連動したサービスとみられ、ツイッターのように文章を投稿し、共有するということで、英語のほか、日本語や中国語を含む30以上の言語に対応するとしています。

こうした他社の動きについて山口准教授はツイッターに代わりうるものになっていく可能性もあると見ています。

Q.ほかのSNSに利用者が移ることはありえるか?

A. 可能性はある

ツイッターは世界に数億人の利用者を抱えているため、利用者の満足度が高まりやすい、先行者として有利な状況にあります。

しかし、マスク氏による買収以降、偽情報の投稿やヘイト投稿への対応が以前とは変わったこともあり、世界ではツイッター離れも起きています。

さらに相次ぐ仕様変更によって、利用者の中には利便性が損われていると感じる人も出てきています。

別のサービスを探す動きが活発化していて、ツイッター離れが今後、大きなうねりとなることもあり得ると思います。

Q.メタが新たなSNSを提供することについて

A. 1つのターニングポイント

予測は難しいですが、マーケットに大きなインパクトを与えるでしょう。

メタは大きな会社であると同時に、SNS運営について多くの知見を持っていて、ツイッターがどのように利用者を失ってきたかしっかり見ているはずです。

このタイミングをねらって、勝算があると思って提供を開始すると思われるので、今回の動きが1つのターニングポイントとなる可能性があると思います。