40年介護した妻を車いすごと海に突き落とした81歳夫 初公判

去年、神奈川県大磯町の港でおよそ40年介護を続けてきた79歳の妻を車いすごと海に突き落として殺害したとして殺人の罪に問われている81歳の夫の初公判が5日に開かれ、夫は起訴された内容を認めました。

大磯町の藤原宏被告(81)は去年11月、町内の港で足が不自由な妻の照子さん(当時79)を乗っていた車いすごと海に突き落として殺害したとして殺人の罪に問われています。

5日、横浜地方裁判所小田原支部で開かれた裁判員裁判の初公判で、被告は「間違いありません」と述べて起訴された内容を認めました。

検察は冒頭陳述で「被告は、およそ40年前に妻が脳梗塞で倒れてから介護を続けてきたが、去年6月ごろから妻の体の状態が悪化して介護の負担が増えたため家族などから施設に入れるよう説得されたが強く反対していた。施設に入れるくらいなら殺害してしまおうと決意し、『長男に会いに行く』とうそを言って港に連れ出して、岸壁から車いすごと突き落とした。犯行は悪質で結果は重大だ」などと主張しました。

一方、弁護側は「妻の状態が悪化していく中、被告は『自分が面倒をみられないと妻はどうなっていくのか』と不安を募らせ精神的に追い込まれていた。被告は、『一緒に飛び込むつもりだったが、死にきれなかった』と話していて、くむべき事情がある」などと主張しました。

介護の状況は

事件は、去年11月2日の午後5時半ごろ、神奈川県大磯町の大磯港で起きました。

町内に住む藤原照子さん(当時79歳)が海に浮いているのが見つかり、搬送先の病院で死亡が確認されました。

警察は、夫の藤原宏被告(81)が車いすごと海に突き落として殺害したとして殺人の疑いで逮捕しました。

警察のこれまでの調べによりますと、照子さんはおよそ40年前に脳梗塞で足が不自由になり、障害者手帳の交付を受けて車いすや、つえを使って生活を送っていたということです。

被告は事件当時は妻と2人暮らしで自宅で介護を続けていたということで、近所の住民は日帰りの介護サービスを行う施設まで連れて行くなど献身的に介護する姿を見かけていました。