中国 ロシア主導 上海協力機構首脳会議 イランの正式加盟承認

中国とロシアが主導する枠組み、上海協力機構の首脳会議がオンライン形式で開かれ、核開発をめぐってアメリカなどと激しく対立するイランの正式加盟が承認されました。

中国とロシアが主導する安全保障や経済協力の枠組み、上海協力機構の首脳会議は4日、オンライン形式で開かれ、中国の習近平国家主席のほか、ロシアのプーチン大統領も出席し、ロシア国内で武装反乱が起きてから初めての国際会議の参加となっています。

会議の冒頭で、議長国インドのモディ首相は「インドは議長国として、多方面にわたって上海協力機構の協力関係を強めようと絶え間ない努力を続けてきた」と述べ、この枠組みを発展させていく考えを示しました。

閉幕後に会見したインド外務省は、これまでオブザーバーとして参加してきたイランの正式加盟が承認されたほか、ベラルーシも加盟に向けた文書に調印したとしています。

イランは核開発をめぐってアメリカなどと激しく対立しています。

また、ベラルーシはロシアと同盟関係にあり、中国やロシアとしては欧米への対抗軸として、上海協力機構の枠組みを拡大させたい思惑があるとみられます。

一方、インドは、アメリカや日本、オーストラリアとの枠組み「クアッド」にも参加するなど欧米との関係も維持していて、さまざまな枠組みに参加することで、国際社会で存在感を高めたいねらいがあるとみられます。

中国 習主席「戦略的な意思疎通と協力を強化すべき」

中国の習近平国家主席は、上海協力機構の首脳会議にオンライン形式で出席し、演説しました。

中国外務省によりますと、この中で習主席は「われわれは戦略的な意思疎通と協力を強化すべきだ」と述べたうえで、加盟国に対し安全保障分野での連携を強化するよう呼びかけました。

また、アジアなどに関与を強めるアメリカを念頭に「外部勢力が、この地域で『新冷戦』をあおることに強く警戒し、いかなる国が内政干渉することにも断固反対する」と強調しました。

さらに「保護主義や一方的な制裁に反対する」とも述べ、経済面でも加盟国の連携を強化していく必要性を強調しました。

プーチン大統領「圧力・制裁・挑発に自信を持って対応」

ロシアのプーチン大統領は、上海協力機構の首脳会議にオンラインで出席し「われわれに対してハイブリッド戦争が仕掛けられ、不当で前例のない規模の制裁が科されている。ロシアは外部からの圧力と制裁、挑発に対して、自信を持って対応していく」と述べた上で、欧米側に対抗する枠組みとして各国と連携を強化したい考えを示しました。

そして、ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏が起こした武装反乱についても触れ「ロシア国民はこれまで以上に団結している。武装反乱の試みに、社会全体が共同戦線を張り、結束と高い責任を示した」と指摘し、みずからの政権のもとでロシアが結束していると強調しました。

また「ロシアの指導部の行動を支持してくれた上海協力機構の各国に感謝する」と述べ、各国から支持が得られているとアピールするねらいがあるとみられます。

イラン ライシ大統領「欧米 世界の公正な取り引き脅かしてきた」

オンライン形式の上海協力機構の首脳会議に出席したイランのライシ大統領は、イランの正式加盟が承認されたことを受けて、「心から感謝する。イランの存在が安全保障と持続可能な発展、そして、団結の強化につながることを願う」と謝意を示しました。

そして、欧米がウクライナ情勢などをめぐってイランやロシアに次々と新しい制裁を科していることを念頭に「欧米の覇権主義的な勢力が経済制裁によって世界の公正な取り引きを脅かしてきた」と述べ、欧米への対立軸として上海協力機構の存在感を高めていかなければならないという考えを強調しました。

インド ロシアとの関係維持がねらいか

初めて上海協力機構の議長国を務めるインドを特徴づけるのが、国益を最優先に必要な国と協力する「全方位外交」です。

枠組みを主導するロシアは、兵器の輸入で大きく依存している伝統的な友好国で、軍事侵攻後も原油の輸入量を増やすなど経済的な結び付きを強めていて、インドとしてはこの枠組みを通してロシアとの関係を維持したいねらいがあるとみられます。

一方で、この枠組みに加盟する隣国・中国やパキスタンとは長年にわたって緊張状態にあり、とりわけ中国とは3年前、双方の軍に死傷者が出る衝突が起きるなど、国境が画定していない地域をめぐって対立しています。

今回、インドが、首脳会議を対面ではなくオンライン形式で開催することを決めたことについて、インド外務省の報道官は「さまざまな事情を総合して、この形式で開催することが最善だと判断した」と述べ、具体的な理由を明らかにしていませんが、地元メディアは中国やパキスタンとの関係悪化も影響しているのではないかという見方を伝えています。

また、インドは、アメリカや日本、オーストラリアとの枠組み「クアッド」にも参加しているほか、先月、モディ首相はアメリカのバイデン大統領と首脳会談を行い、防衛分野などでの協力関係を強化することで一致しています。

中国やロシアが上海協力機構を欧米への対抗軸として拡大させたい思惑がある中、インドとしては中立的な立場を保持するものとみられています。

イラン 欧米に対抗か

イランが上海協力機構に加盟する背景には、核開発問題やウクライナ情勢などをめぐって対立を深める欧米に対抗するねらいがあるとみられます。

このうち、核開発問題では、アメリカのトランプ前政権が一方的に核合意を離脱し、経済制裁を復活させて以降、イランでは通貨が暴落するなど、経済の低迷が続いています。

さらに、ウクライナ情勢をめぐっても、欧米側はイランが軍事侵攻を続けるロシアに無人機などの兵器を供与していると非難し、次々と新たな制裁を科しています。

こうした中、イランとしては上海協力機構に加盟することで中国やロシアをはじめとした国々と経済や安全保障など、幅広い分野で協力を深め、欧米への対抗姿勢を強める構えです。

こうした外交政策の成果について、イランのアブドラヒアン外相は先月、国営テレビのインタビューに対し「イランを孤立させようとする世界的な政策は失敗した」と誇示しています。