福島第一原発処理水放出計画 国際的安全基準と合致 IAEA報告書

東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を、薄めて海に放出する計画の安全性を検証してきたIAEA=国際原子力機関は、放出に対する日本の取り組みは国際的な安全基準に合致しているとする包括的な報告書を公表しました。国際的な基準に基づき安全性が評価されたことで、日本政府が夏ごろとしている放出開始に向けて準備は最終段階に入ります。

IAEAは、日本政府が福島第一原発にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する方針を決めたあと、安全性を検証するため、去年からアメリカや中国、韓国など11か国の専門家が参加する調査団を日本に派遣し、その結果をまとめた報告書を4日公表しました。

報告書では、放出の計画全体について「放出に対する日本の取り組みは国際的な安全基準に合致している」と結論づけました。

また「東京電力が現在計画しているとおりの管理された段階的な放出であれば、人や環境への放射線による影響は無視できる程度のものだ」と評価しました。

そのうえで「IAEAは処理水が放出されている段階でも、中立的で独立した、客観的な安全性の評価を続けていく。このことは、日本政府と東京電力が数十年単位で行う作業が、国際的な安全基準を満たすことを確かなものとする」としています。

一方で「処理水の放出は日本政府が決定することであり、この報告書はその方針を推奨するものでも承認するものでもない」と強調しています。

日本政府は夏ごろから海への放出を始める方針で、放出設備の工事は完了し、全体の性能を確認する原子力規制委員会による検査も現地での確認を終えています。

今回、IAEAの包括的な報告書で国際的な基準に基づいて安全性が評価されたことで、日本政府が検討する夏ごろまでの放出開始に向けて準備は最終段階に入ります。

IAEA事務局長「数十年間にわたって評価を続けていく」

IAEAのグロッシ事務局長は記者会見で、福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐり「IAEAが現場で活動を続けることで合意した。IAEAは今後、数十年間にわたってモニタリングや評価などを続けていく」と明らかにしました。

IAEA事務局長「処理水にする技術 すでに産業界に存在」

またグロッシ事務局長は、汚染水から放射性物質の大半を取り除いて処理水にする技術について「放射性物質を取り除き、水で薄める工程は新しいものではなく、産業界に存在するものだ」として、信頼できるものだと強調しました。

そのうえで、処理水を薄めて海に放出する計画については「一定量の放射性物質を含む水を放出することは中国や韓国、アメリカ、フランスなど多くの国々で行われている」と述べました。