生成AIの学校での取り扱い 暫定的なガイドライン公表 文科省

生成AIの学校での取り扱いについて、文部科学省は暫定的なガイドラインを公表しました。読書感想文などのコンクールで生成AIの文章をそのまま提出することは適切ではないとする一方、グループ学習や英会話などでの活用が考えられるとしています。

生成AIの学校現場での取り扱いについて、専門家の意見を踏まえて検討してきた文部科学省は、4日、暫定的なガイドラインを公表しました。

それによりますと、生成AIは、個人情報の流出や著作権侵害などリスクも懸念される一方、使いこなす力を育てていく姿勢も重要だとして、活用が有効な場面を一部の学校で検証しつつ、限定的な利用から始めることが適切だとしています。

具体的には適切ではない例として、
▽生成AIのメリットやデメリットなどを学習せずに子どもたちに使わせることや、
▽読書感想文などのコンクールやレポートを提出する際、生成AIがつくったものを自分の成果として提出すること、
▽定期考査や小テストなどで子どもたちに使わせることなどを挙げています。

一方、適切な例として、
▽グループ学習で考えをまとめる途中段階として足りない視点を見つけるために活用することや、
▽英会話の相手として使うこと、
▽情報モラル教育の一環として教師が生成AIの誤った回答などを使用し、その性質や限界について気づかせることなどを示しています。

また、今後必要なこととして、
▽情報の真偽を確かめるファクトチェックなどの教育活動を一層充実させることや、
▽教員のAIリテラシーを向上させることなどを挙げています。

文部科学省は、今後も科学的な見解などに応じてガイドラインを見直していくとしています。

生成AI 授業で取り入れている教諭 “実践増えること期待”

生成AIを授業で取り入れている小学校の教諭は、ガイドラインをきっかけに実践に取り組む教員が増えることを期待しています。

東京の東京学芸大学附属小金井小学校の鈴木秀樹教諭は、ことし3月から生成AIを授業で取り入れています。

5月に行われた4年生の国語の授業では、教科書にある説明文を読んで、筆者が伝えたい部分がどこに書かれているのか話し合いました。

文末にまとめられていたり、題名にヒントがあったりすることを理解したあと、鈴木教諭がAIに聞くと、AIは即座に子どもたちの議論の結果と同じ回答を導きだし、子どもたちからは歓声が上がりました。

鈴木教諭は別の授業でAIが回答を間違えるケースも取り入れていて、こうした体験を通して子どもたちに特性や適切な使い方を理解してほしいと考えています。

鈴木教諭は「活用が有効な場面を検証しながら限定的な利用から始める」としたガイドラインについて、「授業で生成AIを使っていいのか不安もあったが、むしろ実践することが大事だと分かってほっとした。ガイドラインをきっかけに、多くの先生が『ちょっと使ってみるか』と考えるようになることを期待しています」と話していました。

一方、取り扱い方についてまだ分からない点もあるとしていて「発達段階に応じて何年生にどのような経験をさせるかなど、まだ手探りなので、ガイドラインに書かれていない部分を現場でどうやって埋めていくか、難しいところでもあり、挑戦のしがいがある。多くの学校でうまくいった例や失敗などの情報を出しあって、事例集を作るなど、いい流れができることを期待しています」と話していました。

専門家「上手に使える人たくさん育てて」

生成AIの学校でのガイドラインができたことについて、教育現場のICT活用などに詳しい、東北大学大学院の堀田龍也教授に聞きました。

Q.ガイドラインができた意義は?

A.生成AIにさまざまな可能性を感じる人が多い一方、どこまで子どもに使わせていいのかという不安も結構あると思う。
今の段階では慎重にスタートし、大切なことを丁寧に教えながら利活用を始めていくことを示したことに意義があると思う。

Q.活用に不安を感じる教員や保護者は、まず何から始めればいい?

A.インターネットの検索エンジンが出始めたころも「子どもたちが考えなくなる」という意見があったが、今は重要なスキルになった。
生成AIも同じ道をたどるだろう。
学校の教員や保護者の方は周りの人たちと一緒にまずは使ってみて、こう使うと便利だとか、こういうふうに間違えるのかなど仕組みを理解することで、不安も減ると思う。
子どもたちにも仕組みをしっかり教えることで回答をうのみにしてはいけないことや個人情報を入れると漏れてしまうリスクがあることなどがわかってくると思う。
AIを道具として便利に使っていくという心持ちを育てることにつながる。

Q.今後、文部科学省に求められることは?

A.人口減少社会に入る中で、便利なものを活用することは社会の発展のためにも重要で、むしろ上手に使える人をたくさん育てていくことが大事だ。
生成AIはどんどん発展するので、文部科学省は現場の好事例を集めたり、ガイドラインを見直したりするなど素早く対応し、学校現場での利用が加速するように施策を進めてほしい。

永岡文科相「懸念の声あり 早期策定し公表」

永岡文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「生成AIについては、さまざまな活用のメリットを指摘する声がある一方、懸念も指摘されている中で、子どもや教師も含めて社会に急速に普及しているというのが現実だ。こうした中で、夏休みの課題に不適切に活用されることを懸念する声があったことや学校現場における活用の適否の考え方をできるだけ早く示したいと考えたことから、暫定的なガイドラインを早期に策定し、公表することとした」と述べました。