日銀短観 大企業製造業の景気判断 7期ぶりに改善

日銀は短観=企業短期経済観測調査を発表し、大企業の製造業の景気判断を示す指数はプラス5ポイントと前回を4ポイント上回り、7期ぶりに改善しました。

日銀の短観は、国内の企業9000社余りに3か月ごとに景気の現状などを尋ねる調査で、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数で景気を判断します。

今回の調査はことし5月29日から先月(6月)30日にかけて行われ、大企業の製造業の指数はプラス5ポイントと、前回・3月の調査を4ポイント上回り、7期ぶりに改善しました。

半導体など部品の供給不足が徐々に解消されて自動車の生産が持ち直していることや価格転嫁によって一部の企業の収益が改善していることが主な要因です。

また、大企業の非製造業の指数はプラス23ポイントと、前回を3ポイント上回り、5期連続の改善でした。

外国人観光客の増加などで、宿泊や飲食サービス業が大きく回復したためで、指数は、コロナ禍前の2019年6月以来、4年ぶりの水準まで改善しました。

3か月後の見通しについては、大企業の製造業は自動車などの生産の回復が続くとして4ポイントの改善、大企業の非製造業は人手不足や原材料高を背景に3ポイントの悪化が見込まれています。

景気判断が改善した業種

大企業の製造業で景気判断が改善した業種です。

▽「石油・石炭製品」が40ポイント改善してマイナス6
▽「紙・パルプ」が18ポイント改善してマイナス7
▽「食料品」が17ポイント改善してプラス6となりました。

原材料価格の上昇が一服し製品への価格転嫁の動きが進んでいることが主な要因です。

▽また「自動車」は14ポイント改善してプラス5となりました。

部品不足が解消に向かったことで生産が回復し、景気判断の改善につながりました。

景気判断が悪化した業種

一方、大企業の製造業で景気判断が悪化した業種です。

▽「金属製品」が14ポイント悪化してマイナス14、
▽「生産用機械」が4ポイント悪化してプラス20となっています。

海外での需要の低迷が背景にあります。

非製造業の景気判断

続いて大企業の非製造業の景気判断です。

▽「宿泊・飲食サービス」が外国人観光客の増加などで36ポイント改善してプラス36となり、水準、改善幅ともに2004年の調査開始以来、最大となりました。

▽レジャー施設などの「対個人サービス」も4ポイント改善してプラス28となりました。

今後の先行きは

先行きについて、大企業の製造業では製品への価格転嫁の動きが続くという見方などから「窯業・土石製品」は、23ポイント、「金属製品」が11ポイント、「自動車」が4ポイントの改善をそれぞれ見込んでいます。

一方、大企業の非製造業では、原材料のコスト高や人手不足を背景に「小売」と「宿泊・飲食サービス」でそれぞれ3ポイントの悪化を見込んでいます。

「仕入れ価格」と「販売価格」の指数 いずれも低下

今回の短観では「仕入価格」と「販売価格」の指数がいずれも低下し、原材料価格の上昇の影響が一服していることがうかがえます。

このうち大企業製造業では、「仕入価格」が上昇と答えた企業の割合から下落と答えた企業の割合を差し引いた指数がプラス52と前回から8ポイント低下しました。

また、製品の販売価格の動向を示す「販売価格」の指数は、プラス34とこちらも前回から3ポイント低下しました。

「仕入価格」と「販売価格」の指数がいずれも低下していることになりますが、原材料価格の上昇の影響が一服していることがうかがえます。

この結果、仕入価格と販売価格の指数の差は18ポイントと前回から5ポイント縮小しました。

仕入れコストの上昇分を転嫁する動きが進んでいることがうかがえます。

一方大企業の非製造業では、「仕入価格」の指数がプラス44と4ポイント低下し、「販売価格」の指数もプラス28と1ポイント低下しました。

非製造業でも「仕入価格」と「販売価格」の指数の差は前回から3ポイント縮小し、企業の間で価格転嫁が進んでいることが見て取れます。

3か月後の先行きについては、大企業の製造業、非製造業ともに「仕入価格」と「販売価格」の指数がいずれも一段と低下する見通しが示されていて、企業の間で価格転嫁の動きが今後さらに進むのかどうかが焦点となります。

日本商工会議所 小林会頭「原材料価格の高騰 落ち着きつつある」

日銀の短観で大企業の製造業の景気判断を示す指数が7期ぶりに改善したことについて、日本商工会議所の小林会頭は3日の記者会見で原材料価格の高騰が落ち着きつつあることが背景にあるという認識を示しました。

この中で、小林会頭は日銀短観の結果について「回復基調にあり、大企業、中小企業、おしなべて製造業がプラスに転じてきた。その原因は石油やガスの価格がピークを打つなど、原材料費の高騰が一段落した部分があるのではないか」と述べました。

そのうえで今後の見通しについては「国内はいいが、問題は海外との関連だ。欧米でのインフレーションの状況や中国経済の動向は少し心配だ」と述べ、海外経済の影響を注視していく考えを示しました。