バスケ女子 アジア杯 日本は中国に競り負け大会6連覇ならず

バスケットボール女子のアジアカップの決勝で、世界ランキング9位の日本は世界2位の中国に71対73で競り負け、史上初の大会6連覇はなりませんでした。

オーストラリアで開催されているバスケットボール女子のアジアカップは2日に決勝が行われ、日本と中国の今大会全勝どうしの顔合わせとなりました。

試合は第1クオーターから互いに譲らず、17対17の同点で終えると、第2クオーターは日本がディフェンスから徐々に流れをつかみ、高田真希選手がスリーポイントシュートを含む7得点を挙げるなど、このクオーターで連続16点を奪う攻撃で、日本が35対26とリードして試合を折り返しました。

第3クオーター、高さのある相手にリバウンドを支配されて逆転を許すと、その後は一進一退の攻防となり、日本が3点リードして第4クオーターに入りました。

第4クオーターでは互いに持ち味を出して得点を重ねると、残り5分半余りの場面で、日本の宮崎早織選手がスリーポイントを決めて60対54と6点リードを奪ったところで、中国がタイムアウトを取りました。

すると、そこから相手に3連続のスリーポイントを含む12連続得点を奪われて、逆転を許す苦しい展開になりました。

残りおよそ2分で6点を追う日本は、キャプテンの林咲希選手が6連続得点を挙げて66対66の同点に追いつきましたが、最後は中国の高さのある攻撃を防ぐことができず、71対73で競り負けて、史上初の大会6連覇はなりませんでした。

ただ、日本はこの大会で上位4チーム以内に入ったため、来年行われるパリオリンピックの世界最終予選の出場権を獲得しました。

パリオリンピック 世界最終予選とは

バスケットボール女子の日本代表が進出を決めたパリオリンピックの世界最終予選は来年2月に開催予定で、開催地はまだ決まっていません。

出場するのは、
▽アジアから4チーム
▽アフリカから2チーム
▽アメリカから4チーム
▽ヨーロッパから6チームの、
合わせて16チームで、4グループに分かれて対戦して、各グループの上位3チームに入るとパリオリンピックの出場権を獲得できます。

ただし、開催国のフランスや去年のワールドカップで優勝して、すでにオリンピックへの出場を決めているアメリカと同じグループの場合は、これらのチームを除いて上位2チームに入ることが条件となります。

アジアからは日本のほか、中国とオーストラリア、ニュージーランドが出場し、ヨーロッパからはフランスとベルギー、スペイン、ハンガリー、セルビア、それにドイツが出場を決めています。

アフリカとアメリカから出場するチームはまだ決まっていません。

来年のパリオリンピックには世界最終予選を勝ち抜いた10チームと、開催国のフランス、アメリカを合わせた12チームが出場します。

恩塚ヘッドコーチ “選手たちの努力と貢献に感謝”

バスケットボール女子日本代表の恩塚亨ヘッドコーチは「優勝を目指して今大会に臨んだものの、優勝という結果は得られなかったが、選手たちの努力とチームへの貢献には心から感謝しているし、誇りに思う」と選手をねぎらいました。

2日の試合でのディフェンスについては「本当に頑張っていたと思うが、もう数センチ間合いを詰めたり、少しでも相手のタイミングをずらしたりという積み重ねで、相手のリズムを崩せたり、守れたりする。このわずかな勝負にこだわってトレーニングしていきたい」と今後の課題を挙げていました。

また、キャプテンの林咲希選手は「どちらに転ぶか分からない試合だった。苦しい時間帯もみんなで乗り切れたことはよかった」と試合を振り返りました。

そして、「準備してきたものは全部出せたが、試合の状況に応じて、もっと適応できる力があったら勝てたと思う」と話していました。

光った守りと速攻 課題は高さ

東京オリンピックで躍進し、銀メダルを獲得したバスケットボール女子の日本代表。

その勢いを持って臨んだ去年のワールドカップでは、オリンピックのあとから指揮を執る恩塚亨ヘッドコーチのもと、1勝しか挙げることができず予選リーグ敗退。9位に終わりました。

そこで突きつけられた課題を克服しようと臨んだ、今回のアジアカップではその成果が随所に見られました。

機能した“ツーガード”

ワールドカップでは、日本の攻撃を組み立てるポイントガードにボールをコントロールさせないように徹底的に相手に対策され、チームはリズムをつかめませんでした。

今大会で日本がテーマとして掲げた“速いバスケットボール”ではポイントガードの2人がコートに同時に立つ「ツーガード」のシステムを取り入れたことで、チームのスピードが上がりました。

そのポイントガード陣の中で存在感をみせたのが、山本麻衣選手でした。

「自分の役割はしっかりシュートをねらうこととゴール近くに切り込み相手を引き寄せて、シューター陣にシュートを打たせること」と話していた山本選手は、そのことば通り、得点とアシストで大きくチームに貢献しました。

勝負を分けた課題の“高さ”

身長1メートル93センチの渡嘉敷来夢選手がメンバー入りしなかったことでこのチームの一番の課題として挙げられていたのが、高さでした。

しかし、チームの全員が果敢にリバウンドに飛び込むことで、グループリーグの3試合ではいずれもリバウンド数で相手を上回ってみせました。

中でも高さのあるオーストラリアには、第1クオーターこそ相手に多くリバウンドを取られて、得点でもリードを許しましたが、最終的にはリバウンド数で上回り、快勝しました。

ただ、中国との決勝では、2メートルを超える相手のセンターの攻撃を勝負どころで止めることができず、試合も競り負けるなど、課題も残しました。

リズムを作ったディフェンス

今大会を通じて日本の試合の流れを作ったのはディフェンスでした。

星杏璃選手や、宮崎早織選手などガード陣が積極的にプレッシャーをかけ、高さのある相手には、全員でカバーして相手のミスを誘い、速攻から得点につなげてリズムを作りました。

試合のあとの恩塚ヘッドコーチの談話でも「ディフェンスで主導権を握っていきたい」とか「今回私たちはディフェンスを勝負のポイントにしている」といった言及が多くありました。

司令塔の山本選手も「日本のバスケはディフェンスをやらないとスタートしない」と話すほど、大事にしていたディフェンスから、速い展開でパスを回し、ノーマークでシュートを打つ機会を作ることで、スリーポイントシュートを効果的に決めることができました。

それでも決勝ではそのディフェンスの強度が弱まったところで、相手をリズムに乗せてしまい、悔しい敗戦につながりました。この大会を教訓に、次は来年の世界最終予選で、どう進化したバスケットボールを見せてくれるのか、期待したいと思います。