性感染症が急増 5月に報告された感染者数 ここ10年で最多に

性感染症の「梅毒」の感染者が急増する中、「クラミジア」と「尖圭コンジローマ」という2つの性感染症も、5月に報告された感染者数が、ここ10年で最も多くなったことが国立感染症研究所のまとめでわかりました。
専門家は「性感染症は梅毒に限らず増加していて、誰でも感染しうると考えてほしい」と話しています。

国立感染症研究所は、クラミジアやりん病など、特に感染者数が多い4つの性感染症について、全国およそ1000か所の医療機関から毎月の感染者数の報告を受け、1医療機関当たりの数を調べる「定点把握」を行っています。

それによりますと、先月の1医療機関当たりの感染者数は、クラミジアが2.76人、性器ヘルペスが0.81人、尖圭コンジローマが0.62人、りん病が0.85人となりました。

このうち、クラミジアと尖圭コンジローマの報告は、ここ10年で最も多くなりました。

また、りん病と性器ヘルペスの感染者数も高い水準で推移しています。

札幌医科大学の安田満病院教授は、ここ数年急増している「梅毒」以外の性感染症も増加傾向にあるとしたうえで、「性感染症はより身近な問題になっていて、誰でも感染しうると考えてほしい。女性の場合は、感染を放置すると不妊につながるおそれもある。コンドームを使うなど、感染しないよう気をつけてほしい」と話しています。

主な性感染症の特徴や治療法

クラミジアは、「クラミジア・トラコマチス」という細菌が原因で、性感染症の中では最も感染者数が多いとみられています。

目やのど、性器や尿道などのほか、女性の場合は卵管や子宮頸管に炎症などの症状が出ることがあり、放置すると不妊症の原因にもなりますが、無症状で感染に気付かない人も多いということです。

抗菌薬の服用で治療できます。

りん病は「淋菌」が原因の性感染症で、感染力が非常に強いとされています。

発症すると男性は性器から「うみ」が出ることがありますが、女性は症状に気付かない場合が多く、進行すると子宮内膜炎や卵管炎などを起こし、不妊症の原因になるということです。

治療には抗菌薬が有効ですが、薬の効きにくい淋菌も増えていて、現在治療に使える抗菌薬は2種類にとどまるということです。

性器ヘルペスは、「単純ヘルペスウイルス」の1型と2型が原因で、性器に潰瘍や水ほうができると歩くのが難しいほどの激しい痛みを感じることもありますが、無症状のことも多いということです。

抗ウイルス薬や抗炎症薬などで治療を行いますが、一度感染すると、ウイルスが身体の中に潜伏し、何度も再発する可能性があります。

尖圭コンジローマは、子宮頸がんの原因ともなるHPV=ヒトパピローマウイルスに感染することで起きる性感染症です。

性器の周辺に小さなとがったいぼができますが、いぼができず、症状に気付かない場合も多いということです。

手術でいぼを切除したり塗り薬を使ったりして治療するほか、HPVワクチンで予防することもできます。

このほか、国立感染症研究所は、HIV=ヒト免疫不全ウイルスや梅毒の感染状況も調べています。

HIVは感染後、治療をせずに数年から10数年たつとエイズ=後天性免疫不全症候群の発症につながります。

体の免疫機能が低下し、さまざまな合併症を引き起こしますが、ウイルスが増えるのを抑え、病気の進行を抑える治療薬も普及しています。

また、梅毒は1999年に今の方法で統計を取り始めてから最多となるペースで増加しています。

感染しても無症状だったり、症状が出ても、すぐに消えたりすることがあり、治療せずに放置すると全身で炎症が起こって深刻な状態になることもあります。

妊婦が感染すると、死産や流産につながるリスクがあるほか、母子感染で子どもが「先天梅毒」になり、皮膚や骨の異常、難聴や視覚障害といった症状が出るおそれもあります。

抗菌薬を一定期間服用したり、抗菌薬を注射したりする治療法が確立しています。