うつ病など 労災認定 過去最多710人 仕事の強いストレスなどで

仕事の強いストレスが原因でうつ病などの精神障害になり、昨年度、労災と認められたのは710人と、これまでで最も多くなりました。

厚生労働省によりますと、仕事の強いストレスや長時間労働が原因でうつ病などの精神障害になったとして昨年度、労災と認められたのは710人でした。

前の年度より81人増え、調査の始まった1983年度以降で最も多くなっています。

このうち、「過労自殺」に追い込まれたのは未遂も含めて67人で12人減りました。

労災が認められた710人のうち、「上司などからのパワハラ」が147人と最も多く、「悲惨な事故や災害の体験、目撃」が89人、「仕事内容や量の大きな変化」が78人でした。

年代別では、最も多かったのが40代の213人で前の年度より13人増え、次いで20代が183人で30人増えました。

業種別では、医療、福祉が164人、製造業が104人、卸売業、小売業が100人でした。

一方、長時間労働などが原因で脳出血や心筋梗塞などを引き起こし、労災と認定されたのは前の年度より22人増えて194人でした。
増加は、2016年度以来です。

このうち死亡した「過労死」は54人で、前の年度から3人減りました。

労災が認められた194人を年代別に見ると、50代が最も多く67人、40代が58人、60歳以上が49人でした。

厚生労働省は「制度の周知が進み、精神障害に関する労災認定が増え続けている。働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大により長時間労働が減少し、以前と比べれば過労死は低い水準にあるが、引き続き長時間労働やハラスメントの防止対策などに取り組んでいきたい」としています。

過労死弁護団「異常事態だ」

今回の結果について、過労死弁護団の幹事長を務める玉木一成弁護士は「異常事態だ。早く原因を突き止めて対応しないとこの傾向は変わらないし、今後、人手不足で職場の負担がさらに増えると心配している」と話しています。

玉木弁護士は、うつ病などの労災認定が過去最多となったことについて「認定件数が100件近く増えていて異常事態だ」と指摘しました。

特に医療や福祉の分野で多くなっていることについて「介護職でさまざまな事件が起きているように働く人たちに対するストレスの増加が顕著に統計にも現れている。医療分野では新型コロナがあって一般の医療も含めて過重な業務で苦しんでいる人が増えているのではないか。すべての分野で原因を早く突き止めて対応しなければもっと悪くなる恐れがある」と指摘しました。

6月に行った全国一斉の電話相談でも相談は増加傾向にあるということで、中でも、休みがとれなくて長時間労働になっていることや、業務関連の指導や指示が叱責を伴いながら長時間行われるといった相談が多いとしています。

玉木弁護士は「働き方改革で労働時間の上限規制が行われているが、仕事の内容や質は変わらず、規制が守られてないところもたくさんある。国は労働基準監督署に人をかけて労働基準法や労働時間の規制を実現をしなければ過労死や過労自殺はなくならない」と対策を求めました。

そのうえで「新型コロナが収束して飲食、旅行、販売など、さまざまな職場で負担が増えている一方で、働く人は増えないということで今後、過労死を発生させるような過重な労働が生まれるのではないかと非常に心配している。長時間労働やパワハラなどのストレスを抱えながらも働き続ける人は真面目な人が多く、症状が現れても周りに迷惑をかけないよう仕事から脱出することに発想がいかない人もいるので、自分だけで悩まず、まずは第三者に相談するようにして欲しい」と話していました。