拉致被害者家族「解決 タイムリミットある」国連シンポで訴え

北朝鮮に拉致された被害者の家族が国連のシンポジウムにオンラインで参加し、家族が高齢となる中「拉致問題の解決にはタイムリミットがある」として、親世代が存命のうちの被害者の帰国実現を求めました。

このシンポジウムは29日夜、日本政府が、アメリカや韓国、それにEU=ヨーロッパ連合などとともにオンラインで開きました。

この中で、中学1年生の時に拉致された横田めぐみさんの弟で、被害者の家族会代表の横田拓也さんは「拉致されたわが子を待つ親世代の高齢化は容赦なく進み、他界されるケースが後を絶ちません。親世代が存命のうちに再会が果たせないかぎり、解決とは言えず、問題の解決にはタイムリミットがあります」と呼びかけました。

そして「岸田総理大臣は、日朝首脳会談を開催し被害者と家族の再会が果たせるよう交渉を進めていただきたい。私たちは肉親を取り戻したいだけで、キム・ジョンウン(金正恩)総書記は会談に応じてほしい」と求めました。

1歳の時に母親の田口八重子さんを拉致された飯塚耕一郎さんは6月で45年が経過したことに触れ「ここ数年、日本で帰国を待つ家族が亡くなっており、これ以上、被害者と家族の再会を死が分かつことがあれば、北朝鮮に怒りしか覚えなくなります。今が理性が保てるギリギリのラインです」と訴えました。

拉致問題を巡っては、岸田総理大臣が日朝首脳会談を早期に実現させるため、みずからが直轄するハイレベル協議を始めたいという考えを示していて、時間に限りがある拉致問題の早期解決をどう図るのか、政府の実行力が問われる局面に入っています。

松野官房長官“国際社会の協力を呼びかけ”

松野官房長官は、すべての拉致被害者の1日も早い帰国に向け、日朝首脳会談を実現させるため、岸田総理大臣直轄のハイレベル協議の開始を模索していると説明しました。

そのうえで「拉致問題は時間的制約のある人権問題だ。日本政府が認定している拉致被害者のご両親の世代で存命なのは2名だけで、ひとときもゆるがせにできない」と述べ、解決に向け国際社会の協力を呼びかけました。

このシンポジウムをめぐっては、北朝鮮外務省傘下の研究所が開催を非難し、拉致問題は「完全無欠に解決された」などとする論評を公表していますが、政府内では「外交上の原則的な立場を改めて示したものに過ぎず、対立をあおる意図はないのではないか」という見方が出ています。

政府は日朝首脳会談の実現を目指すことに変わりはないとしていて、粘り強く働きかけを続けていく方針です。