広島平和公園と米パールハーバー国立記念公園が姉妹公園協定

広島市の平和公園とアメリカのパールハーバー国立記念公園が「姉妹公園協定」を結びました。被爆者団体でつくるグループなどは、協定を結ぶ是非や意義をめぐり、議論を深めるべきだと申し入れています。

東京 港区のアメリカ大使館で行われた調印式には、広島市の松井市長とアメリカのエマニュエル駐日大使が参加し、協定書を取り交わしました。

協定に基づいて、若い世代に平和の尊さを伝える企画や、公園の来場者を増やすノウハウの共有などで連携する方針だということです。

一方、広島の被爆者団体でつくるグループなどは、「被爆者を含む市民の議論を経ずに唐突に提起されたもので、協定を結ぶ是非や意義が不明瞭だ」として、締結をいったん保留して議論を深めるべきだと申し入れています。

松井市長は会見で「協定が追い風となって、平和に資する国際社会を実現する大きな一歩になることを確信している。懸念の声は承知しているが、市長として十分に時間をかけて判断した」と述べました。

また、NHKのインタビューに応じたエマニュエル駐日大使は、「今回の協定の大きな目的は『和解』で、それぞれの地で起きたことを市民にも学んでもらうためだ。アメリカにも日本にも怒りや苦悩を抱えている人がいることは知っているが、過去にとらわれるのではなく、未来を見る必要があると思う」と述べました。

市民団体 “白紙に戻し被爆者など市民との議論の場を”

秋葉前広島市長らが共同代表を務める市民団体は、締結を白紙に戻して被爆者など市民との議論の場を設けるよう市に要請しました。

要請を行ったのは、秋葉忠利前広島市長らが共同代表を務める市民団体で、29日は4人が広島市役所を訪れて要請書を提出しました。

この中では、「パールハーバー国立記念公園はアメリカ軍を常に鼓舞するための施設で、広島・長崎への原爆攻撃を正当化するための原点だ」として、「2つの公園が目指すところは共通している」というアメリカ側の見解について、広島市としてどこが共通点なのかを具体的に明らかにするよう求めています。

そのうえで、今回の締結はあまりに急で、白紙に戻して被爆者など、市民との議論の場を設けるべきだとしています。

これに対し市の担当者は、「内部で共有して検討させてほしい」と応じていました。

市民団体に加わる「戦争をさせないヒロシマ1000人委員会」の高橋克浩共同代表は、「疑義や賛否などいろいろあると思うが、そうした声を聞くことなく協定を締結することに怒りを持った。これからでも市民の思いが生かされる取り組みにしてもらいたい」と話していました。

専門家 “協定の意義 市民含めて議論尽くすべき”

広島大学の川野徳幸平和センター長は、「協定について聞いた時、違和感を感じた。戦争の始まりがパールハーバーで、終えんに関係するものが原爆であるということであれば、原爆投下が戦争終結を早めたという歴史認識にお墨付きを与える印象を持たれるかもしれず危うさを感じる。原爆投下が戦争終結を早めたという歴史認識を理解し得るのか、あるいは許容できるのかということが違和感の根底にある」と指摘しています。

そのうえで、「問題は、なぜパールハーバーと協定を結ぶのかだ。その意義をしっかりと理解したうえでないと次のステップを議論できない。私たちは大きな宿題を抱えてしまった状態だと思う。この協定の締結で広島が目指すものが何か、何をしたいのかということを明確にするべきだし、それを今後議論しないといけない」として、協定の意義について市民を含めて議論を尽くすべきだと話していました。