沖縄駐留の米空軍 中国を念頭に置いた新戦略「ACE」の訓練公開

沖縄に駐留するアメリカ空軍は中国を念頭に置いた新戦略に基づいて嘉手納基地で行われた最新の訓練の様子をNHKの単独取材に対して公開しました。司令官は嘉手納基地が攻撃された場合などに備えて部隊を分散させることの必要性を強調し、分散先については日米両政府の間で今後、交渉が行われるという見通しを示しました。

沖縄に駐留するアメリカ空軍第18航空団は29日まで嘉手納基地で行われた最新の訓練の様子をNHKに公開しました。

訓練は兵士にふだんの担当とは違う複数の能力を身につけさせるためのもので、装備品の管理やサイバー部門を担当する隊員らがテントとアンテナをたてて作戦拠点の設置に取り組んでいました。

さらに、拠点を設置中に反対する勢力が侵入を試みるのを防ぐ訓練もあわせて行われました。

これらの訓練は中国のミサイル能力の向上を念頭に導入された「ACE」と呼ばれる新戦略に基づいています。

有事の際に攻撃されやすい大きな基地から他の場所に部隊を分散させる考え方で、訓練は資源や人員が限られる環境でも作戦を続けられるようにすることを目指しているということです。

今回の訓練には航空自衛隊も参加していて、嘉手納基地でのこうした訓練に参加するのは初めてだということです。

第18航空団のエグリン司令官は「何かが起きて離陸した場所に戻れない場合に備えて、有事の際に活動できる場所を求めている。分散先について具体的にコメントすることはできないが、日本に関していえば、日米両政府の交渉次第だと思う」と述べ、今後、交渉が行われるという見通しを示しました。

新戦略「ACE」とは?

アメリカ空軍が2年前に発表した新戦略「ACE」は日本語で「迅速な戦力展開」を意味することばの頭文字をとっています。

中国のミサイル能力の向上を念頭に、大きな基地は攻撃されやすいという考え方にたち、有事の際に部隊を分散させることを柱にしています。

今回、取材したプログラムはこの戦略に基づいて2年前から行われていて、部隊が分散した先の資源や人員が限られる環境でも作戦を続けられるよう、一人一人の隊員たちに複数の能力を習得させることがねらいだということです。

訓練には、ふだん装備品の管理やサイバー部門を担当する隊員らが参加し、新たに学ぶ任務について教室で講義を受けたあと、テントとアンテナをたてて作戦拠点を設置したり、拠点の設置に反対する武装した集団を追い出したりする訓練を行っていました。

アメリカ空軍第18航空団のエグリン司令官は日本のテレビ局のインタビューに初めて応じ「嘉手納基地には中国の長距離ミサイルの脅威という特有の課題がある。私たちは離陸した場所に戻れなくなる場合に備えて、有事の際に活動できる場所を求めている。さらに、部隊を分散させれば敵がこちらを攻撃しようとするときに、敵は1つの大きな施設ではなく複数の施設を見なければならなくなる」とACEのねらいについて説明しました。

そして、部隊を分散させることで基地が効率的に運用できなくなるなど課題もあるとしたうえで「ほかに方法はあるのかもしれないが、ここに大量の空軍兵が控えているわけでもなければ、問題に対応するための予算が有り余っているわけでもない。私たちはいまいる要員で取り組まなければならない」と述べました。

航空自衛隊参加のねらいと「ACE」で想定される分散先

今回、アメリカ軍嘉手納基地で行われたプログラムには、航空自衛隊も初めて参加し、整備や補給などを担当している隊員およそ15人が4日間にわたってアメリカ兵とともに訓練に取り組みました。

航空自衛隊によりますと、隊員の能力向上が参加のねらいだということです。

航空自衛隊南西航空方面隊司令部の今橋大地3等空佐は「さまざまな業務を知ることによって、隊員の個人の知識技能の向上が図れる」と話していました。

自衛隊の参加について安全保障政策に詳しい拓殖大学の佐藤丙午教授は「自衛隊もACEを実行するだけの能力を米軍とともに身につけていれば、ACEの拠点もかなりいろんなところに分散することが可能になる」と述べ、自衛隊の参加は隊員の能力向上にとどまらず、施設の利用も念頭に置いていると指摘しました。

そのうえで、この戦略で想定される分散先については「物資の事前集積を行えるポイントでサポートできる能力がある地域となると日本の大都市近郊ということも想定される。九州の一帯の航空基地、また、沖縄、第一列島線上の航空拠点が対象として考えられ、日本の自衛隊の施設や、民間空港が該当すると想像される」と述べました。

そして、仮にこの戦略に基づき今後、日本側との調整が進められる場合「分散先が場合によっては攻撃対象になることも意味するので、その場合に国民に対する説明というのは極めて慎重にする必要がある。住民との対話が極めて重要だ」としています。

第18航空団のエグリン司令官は「分散先について具体的にコメントすることはできないが、あらゆる友好・同盟国のために分散場所を探している。同盟国などは、ここ太平洋における解決策と抑止力の基盤の一部になることを望んでいる。日本に関していえば、日米両政府の交渉次第だと思う」と述べ、今後、日米両政府の間で交渉が行われるという見通しを示しました。