【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(29日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる29日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

英経済紙「スロビキン氏は拘束されている」

イギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズは29日、複数の関係者の話として「スロビキン氏は数日間、連絡が取れない状況であり、拘束されている」と報じました。

政権に批判的なロシアの著名なジャーナリストはSNSで「スロビキン氏はこの3日間、家族と連絡がとれていない」と投稿しています。

スロビキン氏の拘束が伝えられたことについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は29日、記者団に対し「国防省に問い合わせてほしい」としてコメントを避けました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は一連の報道を受けて28日「クレムリンは忠誠心がないと見なした人物は粛清する意図だということを示唆している」と分析し、ロシア軍の最高幹部の1人でプリゴジン氏とも近かったとされるスロビキン氏の消息に関心が高まっています。

スロビキン氏とは

セルゲイ・スロビキン氏(56)は、去年10月、ロシアによるウクライナ侵攻の軍事作戦の総司令官に任命され、指揮にあたるなどロシア軍の最高幹部の1人です。ことし1月、ゲラシモフ参謀総長が総司令官に任命されたことにともない、スロビキン氏は副司令官として作戦を支えてきました。

スロビキン氏は1983年、当時のソビエト軍に入隊後、軍人としてのキャリアを積みあげ、2017年にはシリア内戦に介入したロシア軍の指揮を執りました。厳格で冷徹な指揮官として知られるほか、プーチン大統領からの信頼も厚いとされています。

一方、スロビキン氏は、民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏と関係が近いとされてきました。プリゴジン氏はスロビキン氏について去年10月SNSで「彼のことをよく知っている。ロシア軍で最も有能な指揮官だ」と評価するなど信頼しているという考えを示していました。

またプリゴジン氏が弾薬が不足していると国防省を強く非難していた5月には「ワグネルと国防省とのやりとりにおいて、すべての決定を下すのはスロビキン氏になった」と述べスロビキン氏はプリゴジン氏との橋渡し役を担っていた可能性があります。

こうした中、プリゴジン氏が武装反乱を呼びかけた直後の6月24日、スロビキン氏はSNSで「ロシア大統領の意志と命令に従え。元の場所に戻れ」と述べ、ワグネルの戦闘員に反乱に加わらないよう呼びかけ、事態の収拾を図ろうとしました。

その後、スロビキン氏の動静は明らかになっておらず、スロビキン氏が武装反乱について事前に計画を把握していたとも伝えられるなかでその消息に関心が高まっています。

ワグネル反乱でロシア軍用機も撃墜か “作戦に悪影響”見方も

ロシアの一部メディアは、武装反乱を行った民間軍事会社ワグネルの部隊がロシア軍のヘリコプターだけでなく司令部の機能がある軍用機「イリューシン22M」も撃墜し、パイロットなど士官が死亡したと伝えています。

この軍用機についてイギリス国防省は29日「ウクライナでの戦争でロシア軍を組織する重要な役割を果たしてきた」として貴重な戦力を失ったと指摘しています。

その上で「ロシア軍の空と陸の作戦に悪影響を及ぼすだろう。多くの乗組員が失われたことで短期的には、空軍の兵士の士気がいっそう低下し、長期的には、指揮系統や調整能力が損なわれる可能性がある」と分析しています。

専門家「軍や政権内部に対立構図が潜んでいたか」

防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は、ロシア軍のスロビキン副司令官が拘束されたという見方があることについて「拘束されたのであれば、プリゴジン氏の武装反乱に何らかの形で関与していて、ロシア軍や治安当局の関係者もプリゴジン氏に協力していた可能性が出てきたことになる」と指摘しました。

またスロビキン氏が反乱を知った上で黙認していたのか何らかの手助けをしていたのかが焦点だとしたうえで「もともとこの反乱はプリゴジン氏とロシア国防省や軍との対立に見られていたが、実は軍の内部でも、ワグネル派と呼ばれる人たちがいて、軍の中や政権内部に対立の構図が根深く潜んでいた可能性がある」と指摘しました。

そして「プーチン大統領の絶対的な統率力や政治力にかげりがあるのではないかということを印象づける出来事だ。軍や政権内の亀裂が今後どれほど拡大していくのかなどを注視する必要がある」と指摘しました。

またスロビキン氏が拘束された場合、戦況に与える影響については「スロビキン氏はウクライナへの軍事作戦を率いているナンバー2の人物なので、ロシア側の指揮統制に否定的な影響が及び、ロシア軍内部の混乱や士気の低下が生じる可能性もあるのではないか」と話していました。

プリゴジン氏 一時的にロシアに帰国した可能性も

ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏について、ロシアの独立系メディアなどは、航空機の追跡サイトの情報をもとにプリゴジン氏が所有するプライベートジェット機がベラルーシから、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクを行き来していると伝えました。

サンクトペテルブルクは、ワグネルのオフィスビルもある拠点で、「戦争研究所」は「プリゴジン氏が一時的にロシアに帰国した可能性がある」と指摘するなど引き続きプリゴジン氏の動向も焦点です。

ロシア英字紙「スロビキン氏はすでに拘束されている」

ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏が起こした武装反乱について、ロシア軍の最高幹部の1人が事前に計画を把握し、プリゴジン氏側に付いたなどと伝えられ、この幹部の消息に関心が高まっています。

28日、ロシアの英字紙「モスクワ・タイムズ」は、ロシア国防省の情報筋の話として「スロビキン氏はプリゴジン氏側に付いたため、すでに拘束されている」とする見方を伝えました。

政権に批判的なロシアの著名なジャーナリストもSNSで「スロビキン氏はこの3日間、家族と連絡がとれていない」と投稿しました。

米 前駐ロシア大使 “プーチン大統領 求心力失っている”

アメリカの前の駐ロシア大使を務めたサリバン氏がNHKのインタビューに応じ、プリゴジン氏が代表を務めるロシアの民間軍事会社ワグネルの部隊がロシアの軍や治安機関の抵抗を受けることなく、南部ロストフ州にある軍の司令部の施設を掌握したと見られることについて「プリゴジン氏がロシアの軍や治安機関から支持を得ていなければ、起こりえないことだ」と述べ、ロシア軍や治安機関の一部が武装反乱を支持していた可能性を指摘しました。

さらに、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍の副司令官で、プリゴジン氏と関係が近いとされるスロビキン氏など軍幹部が反乱の計画を事前に把握していたかどうかについてサリバン氏は「軍の幹部らが事前に知らなければ、抵抗を受けずに軍の施設を掌握したことを説明しづらい」と述べました。

また、サリバン氏は、プリゴジン氏が当局に拘束されることなく、ベラルーシに出国したとみられることについて「プーチン氏はロシアを背後から刺し、『裏切りだ』とまで評しながら取り引きをせざるを得なかった。なぜなら、反乱を鎮圧し、プリゴジン氏を拘束できるだけの強さを持ち合わせていなかったからだ」と述べ、プーチン大統領が求心力を失っているとの見方を示しました。

その上でプーチン大統領が失脚する可能性については「少なくとも現時点では予言しない」としながらも「1週間前に比べれば、その可能性は明らかに高まっている。なぜならば、プリゴジン氏による反乱が、プーチン大統領の弱さをさらけ出したからだ」と述べました。

ドイツ ショルツ首相 “プーチン大統領は弱っていると思う”

ドイツのショルツ首相は、28日に放送された公共放送ARDのインタビューでロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏による武装反乱でプーチン大統領の政権基盤が弱体化しているとみているかを問われ「彼は弱っていると思う。なぜなら今回の出来事は、独裁的な権力構造に亀裂があり、彼がいつも主張するほど強固な状態にはないことを示している」と述べました。

ワグネルの武装反乱“ロシア軍副司令官が事前に把握”米報道

27日付けのアメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは、複数のアメリカ政府高官の話として、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍のスロビキン副司令官が、民間軍事会社ワグネルによる武装反乱について、事前に計画を把握していたと伝えました。

そのうえで、ロシア軍の複数の幹部が、ロシア国防省の指導部を力によって交代させようという、ワグネル代表のプリゴジン氏の試みを支持していた可能性を示す形跡があるとしています。

また、ウォール・ストリート・ジャーナルは28日、欧米の複数の政府高官の話として、プリゴジン氏がロシア軍の複数の幹部に武装反乱の意志を伝え、その中にスロビキン氏が含まれていた可能性があると報じました。

これについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は28日、記者団に対し「こうした問題は、多くの臆測やうわさが飛び交うが、これもその一例だろう」と述べ、否定しました。

“プリゴジン氏はベラルーシに”ゼレンスキー大統領らの反応は

ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏について、隣国ベラルーシの国営通信は27日、ベラルーシ国内にいることをルカシェンコ大統領が明らかにしたと伝えました。

また、ロシアの独立系メディアは、ベラルーシ国内に複数のキャンプが建設されていると伝えるなど、ワグネルの部隊の今後の動きが焦点となっています。

こうした中、ベラルーシの隣国ウクライナのゼレンスキー大統領は、28日、首都キーウを訪れたポーランドのドゥダ大統領、リトアニアのナウセーダ大統領とそろって会談しました。

会談後の記者会見でゼレンスキー大統領は、ワグネルの部隊がいまも東部のルハンシク州にいるとしたうえで「われわれに敗れて2万人以上が殺害された。ベラルーシで、どれほどの脅威となるのか私には分からない」と述べました。

そしてゼレンスキー大統領は、ベラルーシにワグネルの戦闘員がいても国境周辺の状況は変わらず、軍がコントロールできているとして、防衛に自信を示しました。

これに対し、同じくベラルーシと国境を接するポーランドのドゥダ大統領は「ベラルーシにおけるワグネルの存在が潜在的な脅威となる可能性は排除できない」と述べ、警戒を強めています。

プーチン大統領 博物館など視察 混乱収束をアピールか

ロシアのプーチン大統領は28日、南部ダゲスタン共和国のカスピ海沿岸の町を訪れ、博物館などを視察しました。

ロシアの国営テレビは、プーチン大統領が、ワグネルの武装反乱をめぐる対応に追われた前日までとは異なり、視察先で時折笑顔を見せながら説明を受ける様子を放送し、国内の混乱はすでに収束したとアピールするねらいがあるとみられます。

バイデン大統領 “プーチン大統領は世界ののけ者になっている”

アメリカのバイデン大統領は28日、ホワイトハウスで記者団から、ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏が武装反乱を起こしたことでプーチン大統領の政権基盤が弱体化しているとみているか問われたのに対し「もちろんだ」と応じました。

続いて「どの程度なのか」という質問には「はっきりとは分からない」としたうえで「彼は国内でも戦争に負け、世界ののけ者になっている」と述べました。

ウクライナの警察官 来月訪日し 身元特定に必要な技術を研修へ

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナで犠牲となった市民の身元の特定が課題となる中、ウクライナの警察官たちが来月日本を訪れ、東日本大震災で亡くなった人たちの身元確認を進めるなど、数々の経験がある日本の警察から専門的な技術を学ぶことになりました。

研修は、ウクライナ政府側から、UNDP=国連開発計画などを通じて、日本側に要請があったということで、一行は東京都内で検視や鑑識の技術を学ぶということです。

また、福島県警察本部なども訪れ、東日本大震災で多くの人が亡くなった際、DNA鑑定などでどのように身元の特定につなげてきたか、当時の経験について聞き取ることにしています。

関係者によりますと、ウクライナ側は、日本で学んだ技術や経験は、犠牲者の身元の特定だけでなく、ロシア軍による戦争犯罪を立証するための証拠の収集にも役立てたい考えだということです。