北朝鮮 “拉致問題掲げるのは首脳会談希望の日本の立場否定”

北朝鮮外務省傘下の研究所は、日本政府などの主催で拉致問題を話し合う国連のシンポジウムが開催されることを非難する論評を発表しました。論評では拉致問題の解決を前面に掲げるのは「首脳会談を希望する日本の立場を否定することに等しい」と強調していて、日本側に揺さぶりをかけるねらいがあるとみられます。

日本政府は、今月29日、アメリカや韓国などとともに拉致問題について話し合う国連のシンポジウムをオンラインで開くことにしています。

これについて、北朝鮮外務省傘下の日本研究所は、27日付けの研究員の論評を発表し、拉致問題について「われわれの誠意ある努力によって、すでに最終的かつ完全無欠に解決された」と従来の立場を改めて示しました。

そのうえで「日本が実現不可能な問題を前面に掲げるのは『前提条件のない日朝首脳会談』を希望すると言及している、日本当局者の立場をみずから否定することに等しい」と強調しました。

北朝鮮は先月、拉致問題は「解決済みだ」と主張したうえで「新たな決断をして、関係改善を模索しようとするなら、会えない理由はない」とする外務次官の談話を発表しましたが今回は、外務省の傘下にある研究所の研究員の名前で発表した形にしています。

岸田総理大臣は、すべての拉致被害者の1日も早い帰国に向け、日朝首脳会談を早期に実現させるため、みずからが直轄するハイレベル協議を始めたいという考えを示しています。

北朝鮮としては従来の立場を強調することで、日本側に揺さぶりをかけるねらいがあるとみられます。

松野官房長官 “主張 全く受け入れられず“”

松野官房長官は28日午前の記者会見で「拉致問題がすでに解決されたとの主張は全く受け入れられない」と述べました。

そのうえで「日朝ピョンヤン宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化の実現を目指す。時間的制約のある拉致問題は、ひと時もゆるがせにできない人権問題であり、すべての拉致被害者の1日も早い帰国を実現するべく、全力で果断に取り組んでいく」と述べました。