埼玉 熊谷 6人殺害事件 県に賠償求めた裁判 2審も訴え退ける

8年前、埼玉県熊谷市でペルー人の男が3軒の住宅に侵入し6人が殺害された事件で、妻と2人の娘を亡くした男性が「事件を防げなかったのは警察が地域住民への情報提供を怠ったためだ」と主張して、埼玉県に賠償を求めていた裁判で2審の東京高等裁判所は1審に続いて訴えを退けました。

2015年9月、熊谷市で3軒の住宅に男が侵入し、男女6人が殺害された事件では、ペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン受刑者(37)が強盗殺人などの罪に問われ、無期懲役が確定しています。

この事件で妻と2人の娘を亡くした男性は「事件を防げなかったのは警察が地域住民への必要な情報提供を怠ったためだ」と主張して、埼玉県に6400万円余りの賠償を求めていました。

27日の2審の判決で、東京高等裁判所の森英明裁判長は「事後的にみると、最初の殺人事件が発生したあとに、ジョナタン受刑者が周辺で同じような凶悪犯罪を起こす危険性が切迫していたといえるが、警察が当時、把握していた情報からそのことを具体的に認識していたとはいえない」と指摘しました。

その上で「重大事件が発生した初期の段階で、捜査の状況に応じて地域住民にどの程度の情報を提供するかは警察の裁量に委ねられていて、逸脱していたとはいえない」として、1審に続いて訴えを退けました。

遺族「主張が認められず悔しい」

判決のあとの記者会見で、遺族で原告の加藤裕希さんは「苦しくて、法廷に入れるかわからないような状態でした。主張が認められず悔しい思いで、亡くなった家族にも報告できません。負けたショックが大きくて判決文を読めていないので、今後のことは頭を整理してから考えたいと思います」と話していました。

埼玉県警「判決については内容を精査中」

2審の判決について、埼玉県警察本部の佐藤拓也 首席監察官は「亡くなられた被害者の方々のご冥福を心からお祈りし、家族の皆様にお悔やみを申し上げます。判決については内容を精査中なのでコメントは差し控えます」としています。