“東アジアで最も長い”鉄剣を初公開 奈良 富雄丸山古墳で発見

奈良市にある4世紀後半の古墳で発見された、東アジアで最も長いとされる鉄剣が、初めて報道陣に公開されました。表面のさびや泥を取り除いたことで、「さや」と「つか」の一部も確認することができます。

4世紀後半に造られたとされる奈良市の富雄丸山古墳で、去年12月、「蛇行剣(だこうけん)」と呼ばれる波打ったような形をした長さ2メートル30センチ余りの鉄製の剣が見つかりました。

国内では同じタイプの剣の中で最も古く、東アジアの同じ時代の剣の中で最も長いとされています。

橿原市の県立橿原考古学研究所が保存に向けたクリーニングを進めていて、片方の面の作業が終わったことから、27日、初めて報道陣に公開されました。

剣は、表面のさびや泥が取り除かれ、いずれも木製の、剣をおさめる「さや」や、持ち手の「つか」の、一部を確認することができます。

また、さやとつかの表面には、黒い漆の層の上に「水銀朱(すいぎんしゅ)」という赤色の顔料がついていたことも、新たにわかりました。

発掘を担当した奈良市埋蔵文化財調査センターの村瀬陸学芸員は、「赤い色は魔よけの意味もあるが、蛇行剣そのものに呪術的な意味合いがあり、この朱がどういったものなのか、今後明らかにしたい」と話しています。

鉄剣は今後、もう片方の面のクリーニングが行われ、使われた木材の種類や水銀朱の産地などについても調査が進められます。

考古学の専門家 “「さや」や「つか」もキングサイズ”

古墳時代に詳しい奈良県立橿原考古学研究所の岡林孝作学芸アドバイザーは、「漆塗りの木製の『さや』や『つか』は、ほかにも例があり一般的だと思う。そこから検出された水銀朱は付着しているのが確認できただけで、装飾として塗ったのか副葬品として埋めるときにふりかけたのか、その意味はまだわからない」と述べました。

その上で、「剣そのものも巨大だが、それを覆う『さや』や『つか』も当然キングサイズだと思う。今回作業が終わった面より反対側の面のほうが状態がよく残っていると考えられることから、その面の状況を見て、巨大な『さや』や『つか』の実態がわかってくれば面白い」と、今後への期待をのぞかせていました。

刀鍛冶「大きさと長さに驚いた」

今回公開された鉄剣について、50年以上にわたって日本刀を作り続け、古代の刀剣の復元にも取り組んできた、奈良県東吉野村の刀鍛冶、河内國平さん(81)は、「実物を見て大きさと長さに驚いた。当時はまだ刀の時代ではなく、武器としての剣は突くものだったはずで、曲がっていると武器としては戦いにくいと思う」と述べました。

その上で、「いま伝わっている刀の技術は幕末くらいからのもので、それ以前の江戸時代、もっと先の古墳時代の技術はまるでわかっていない。どれくらい刃に焼きが入っているのかなどは後世の刀にまで影響していると思うので、知りたいし研究したい」と話していました。

鉄剣見つかった富雄丸山古墳とは

今回の鉄剣が見つかった富雄丸山古墳は、大型の円墳、丸い形をした古墳で、古墳時代前期の4世紀後半に造られたとされています。

奈良市の中心部から西におよそ6キロ離れた矢田丘陵という丘陵部にあり、昭和47年(1972年)に県によって行われた初めての調査では、頂上の部分から埋葬施設や副葬品などが見つかっています。

また、平成29年に奈良市がレーザーを使って詳細な測量を行った結果、直径およそ110メートルの国内最大の円墳とわかりました。

こうした調査の結果、古墳は3段構造で表面は石に覆われ、盛り土を囲むように埴輪が置かれていたと考えられています。

埋葬施設は古墳の頂上付近のほか、古墳の北東に方形に突き出た「造り出し」と呼ばれる部分にも確認されています。

鉄剣はこの「造り出し」の調査でことし1月に確認されたもので、木製のひつぎを覆う粘土の中に盾の形をした青銅の鏡とともにおさめられていました。

これまでも重要出土品の発見相次ぐ

富雄丸山古墳からは、これまでも重要な出土品の発見が相次いでいます。

古墳は、明治時代に古墳の頂上付近が盗掘の被害を受けて荒らされましたが、その際出土したおのやナイフ、ノミをかたどった石の製品などが、重要文化財に指定され、京都国立博物館に保管されています。

また、古墳から出土したと伝わる「三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)」という青銅の鏡も、天理市の天理大学付属天理参考館にあります。

昭和47年に奈良県が行った発掘調査では、鉄の剣や刀のほか、銅製の矢じりや管状の玉などが出土しました。

そして、平成29年から奈良市が行っている今回の発掘調査では、鉄剣や盾形の鏡のほか有力者の墓から見つかる「斜縁神獣鏡(しゃえんしんじゅうきょう)」という中国で作られた鏡の破片や、水が湧き出る場所に作られた建物「湧水施設」を表現した珍しい埴輪なども見つかっています。