小田急線切りつけ事件“『勝ち組』女性など殺したいと考えた”

おととし、東京 世田谷区を走行していた小田急線の車内で複数の乗客が切りつけられてけがをした事件で、乗客3人に対する殺人未遂などの罪に問われている被告の初公判が開かれ、被告は起訴された内容を認めました。
検察は事件の背景について「いわゆる『勝ち組』の女性など幸せそうな人たちを殺したいと考えた」と主張しました。

おととし8月、東京 世田谷区を走行していた小田急線の車内で、複数の乗客が刃物で切りつけられるなどして重軽傷を負った事件では、無職の對馬悠介被告(37)が当時20歳の女子大学生の胸や背中を刺して全治およそ3か月の大けがを負わせたなどとして、乗客3人に対する殺人未遂や、窃盗などの罪に問われています。

27日、東京地方裁判所で開かれた初公判で、被告は起訴された内容を全面的に認めました。

冒頭陳述で検察は「友人や女性から見下されたりしていると感じ、幸せそうなカップルやいわゆる『勝ち組』の女性など幸せそうな人たちを殺したいと考えるようになった」と主張しました。

そして、直接的なきっかけとして「事件当日、食品の万引きを従業員に見つかり、警察に通報されて謝罪させられたことに激しい怒りを感じた。従業員を殺そうと思ったが店が閉店していると思い、電車内で多くの人を殺すことで怒りをおさめようとした」と述べました。

一方、弁護士は「確実に殺そうという強固な殺意はなく『死んでも死ななくてもかまわない』という程度だった。被告は20歳のころに精神的な病気になり、気分の浮き沈みがあったが、事件後は薬を飲んで安定し、深く反省している」と主張しました。

事件の経緯と双方の主張

なぜ、走行中の電車内で無差別に乗客を襲ったのか。

初公判では事件に至るまでのくわしいいきさつが明らかになりました。

【犯行に至る経緯】
検察の冒頭陳述によりますと、被告は大学を中退したあと職を転々としていましたが、おととし無職になり、生活保護を受けていました。

かねてから男性の友人から見下されたり、女性から軽くあしらわれたりしていると感じ、幸せそうなカップルや男性にちやほやされる「勝ち組」の女性など幸せそうな人たちを殺したいと考えるようになったということです。

その結果、逃げ場が少なく乗客が無防備な電車内での無差別殺人を考えるようになったとしています。

【事件当日の経緯】
検察によりますと、被告は、小田急線で事件を起こした当日の朝からコンビニエンスストアなどで窃盗や窃盗未遂を繰り返していました。

新宿区内の食料品店でベーコンなどを万引きしようとした際に従業員に見つかり、警察に通報されます。

その後、帰宅しますが午後6時ごろ、万引きが見つかって警察で謝罪させられたことを思い出し、激しい怒りの感情を抱き、従業員を殺害しようと考えたということです。

しかし、閉店時間までには間に合わないと断念し、怒りの感情をおさめるため電車内で無差別に大勢の乗客を殺害することを決意したとしています。

自宅にあった包丁1本とはさみ2本、サラダ油、ライターなどを持ち出し、さらに途中で予備のライターやサラダ油を購入して、自宅の最寄り駅から小田急線に乗車。

そして、登戸駅で快速電車に乗り換えました。

「快速のほうが密室になる時間が長く、大勢の乗客を殺害できると考えた」と検察は主張しています。

午後8時半ごろ、7号車の座席に座っていた当時20歳の女子大学生が、もともと標的にしようと考えていたタイプに近いと考え、胸などを包丁で突き刺しました。

さらに、同じ車両にいた当時52歳の乗客を切りつけたあと、隣の車両との連結部分に移動し、当時32歳の乗客を切りつけました。

その後、振り回していた包丁が折れたため、車両内にサラダ油をまいてライターで火をつけようとしましたが、引火せず、断念したということです。

【弁護側「強い殺意なかった」】
被告側は事件を起こしたことは認めていて事実関係に争いはありません。

その上で弁護士は冒頭陳述で刑の重さを判断するうえで考慮してほしいポイントを挙げました。

まず、殺意の程度です。

被告は包丁を振り回し乗客にけがをさせたものの「死んでも死ななくてもかまわない」という感情で、強い殺意はなかったと主張し「電車内で大量殺人を起こしたいという妄想は抱いていたが、車内で『本当にこのまま行動していいのか迷いが生じた』」と説明しました。

また、被告は20歳のころに気分が高まったり落ち込んだりを繰り返す双極性障害を発症し、病気が思考や動機に影響を与えていたとも主張。

そして、被害者の調書や当時の防犯カメラの映像を見て事件の意味や大きさを把握し、深く反省していると訴えました。

裁判はこのあと6回予定され、精神鑑定をした医師や被告本人への質問などを経て、判決は来月14日に言い渡されます。