前方後円墳 入りたいですか?

前方後円墳 入りたいですか?
お墓と聞くと皆さんはどのようなイメージをいだきますか?

福岡県にある、このお墓。
そう、前方後円墳の形をしています。

予想以上の問い合わせがあり注目されていますが、背景にはお墓をめぐるさまざまな事情があるようです。

(ネットワーク報道部 記者 谷口碧・おはよう日本 ディレクター 酒井佑陶)

前方後円墳の形で…

福岡県新宮町で2年前に完成したこのお墓。
全長53メートル、円形部分の直径が16.3メートル、高さ3.5メートルと巨大です。
実際に3100人が納骨できるお墓で「古墳型永久墓」と説明しています。
去年4月から段階的に販売を始め1200人分を開放しましたが、すでに900人分以上が売れ、想定の3倍以上のペースに。
問い合わせは多く、ネットでも話題になっています。
「墓参りも楽しくなりそう」
「埴輪とかたくさんあってにぎやかだし、古墳好きにはたまりません」
「すごく面白い企画だけど1000年後の考古学者が混乱しそうですね」
歴史好きの同僚の記者も反応しました。
大学時代に本格的に古墳にはまり、毎月のように古墳を見に行ったそうです。
ウエディングケーキを奈良の箸墓古墳を模した特注品にするほどの古墳マニアです。
秋元記者
「ザ・前方後円墳だ!と思ってコーフンしました。フォルムも大きさも古墳ファンの心をくすぐります」

古墳型を選んだ理由は…

しかし、注目しているのは古墳ファンだけではありませんでした。
契約した人の声に耳を傾けると…
(70代女性)
「兄の遺骨を納骨堂に納めているが、自身が他界した後は管理費を払う人がいなくなる。継続的な支払いがなく、後々のことを心配する必要がなく安心」

(60代夫婦)
「娘は嫁いでいるので管理面や金銭面で負担がかからないようにしたい。墓石がなく、その管理や掃除が負担にならないのがよい」
このお墓は複数人を納骨する「合葬墓」で、最初に永久管理費を1度支払えば、その後の維持管理は霊園が担うとしています。

墓の管理や手入れなどで、子供や孫の世代に負担をかけたくない人からも人気だといいます。
新宮霊園 松田大佑広報室長
「新しいお墓の形を模索する中でお墓の原点を見直し、古墳にたどりつきました。自然に還りたいという声もあれば、先々の墓守に関する問題や金銭面の不安を抱える方もいて、お客様の要望が多様化していると感じています」

合葬型の人気は都内でも

このような「合葬墓」の人気は、年々高まっています。
都内に8つある都立霊園のデータを見ると「合葬墓」の申し込み件数は、5年前に一般の墓を逆転。
昨年度は2800の募集に対して、1万2000件余りの応募があり倍率は4.3倍となりました。

全国的にも要望は多様化

背景の一因が、年々深刻になる墓の跡継ぎ問題。
終活関連のサービス会社が、2022年にお墓を買った人を対象に行った調査では「跡継ぎがいない」、「跡継ぎ不要のお墓を購入した」という人は合わせて58.4%。前の年より4.6ポイント増えています。
鎌倉新書 お墓仏壇事業部 太島悠輔部長
「合葬墓や樹木葬など新しいタイプの墓が増え、管理方法も多様化しています。少子高齢化で跡継ぎがいなかったり、都市化で親と子どもが離れて暮らしていたり、家族の形の変化がお墓の在り方に影響していると感じます」

墓参りもサブスクの時代に?

東京の企業は、2年前から、遺骨を自宅近くの寺院に納められる取り組みを始めました。
全国200か所以上の寺院と提携し、集合型のお墓に月額制で遺骨を預かってもらいます。
新たにお墓を建てる必要が無く、途中で遺骨を移したい場合には、他の寺に移してお墓参りできるといいます。
「墓石に多くの費用をかけることができない」
「転勤などで将来引っ越すかもしれない」
などという声を受けて始めたといいます。
のうこつぼ 永田康高 代表取締役
「墓参りはしたいが、高いから、遠いからという理由で諦める人もいる。そうした悩みを少しでも解決したい」

メタバースで墓参りまで

一方、コロナ禍で広がったオンライン化の動きは墓参りにも。

さいたま市の葬儀場などの運営会社は、コロナ禍で大人数が集まりにくかった時に、実際の葬式や法事をオンライン配信する取り組みを始めました。

この夏からはメタバース(仮想現実)空間でも法要などを行えるようにし、お墓参りの機能も開発しています。
遺骨は今まで通りお寺などに納めたうえで、アバターが墓前に花を添えたり、チャットで親族どうしが話し合ったりする場を提供したいとしています。
アルファクラブ武蔵野・担当者
「オンライン配信での葬儀には遠方にいる方だけでなく、移動が難しいという方にも参加してもらえる可能性があるとわかった。お墓参りの一つの手段として、メタバースも新しい供養の形になればと思います」

トラブルには注意を

実は、墓参りの歴史はそれほど長くはありません。

墓に詳しい専門家によると、火葬して遺骨をそれぞれの墓に納め、墓参りする習慣が主流になったのは昭和に入ってから。

私たちの2、3世代ほど前からで、それまでは土葬して、共同集落の墓地に入ることが多かったそうです。

今はライフスタイルの変化により、お墓を引っ越す「改葬」や「墓じまい」も増えていますがトラブルも起きており、注意が必要だといいます。
シニア生活文化研究所 小谷みどり 代表理事
「改葬の場合、お墓の吉凶にこだわる親族もいて、話し合いがもつれるケースもあります。事前に親族どうしでどう了解を得ていくかが重要です」

「墓じまいの場合、お寺から離檀料と称するお布施として法外な金額を要求されたケースもあります。本来、お寺に請求できる権利はなく、利用者には支払いの義務もありませんが、お世話になった感謝の気持ちとして支払いたい場合は、これまでの法要やお布施の金額を目安にお礼を渡せばよいと思います」
このほか、永代供養をうたった納骨堂が経営不振で閉鎖されるトラブルも起きています。

お墓にとって大事なことは

お墓は遺骨を納めるための場所だけでなく、残された人たちが亡き人と向き合う場所でもあります。

小谷さんによると、墓の跡継ぎが心配な人向けには、例えば、30年間使用でき、継承者がいれば更新し、いなければ遺骨を共同墓に移せる墓もあるそうです。

亡くなった家族や友人を弔いたいという気持ちはいつの時代も変わりません。

皆さんはどんなお墓で大切な人と向き合いたいですか。