福島第一原発 処理水放出設備 建設工事完了で公開 東京電力

福島第一原子力発電所にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、東京電力は26日、建設工事が完了した放出のための設備を報道陣に公開しました。

政府は、福島第一原発にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、基準を下回る濃度に薄めてことし夏ごろまでに海への放出を始める計画で、東京電力が去年8月から放出のための設備の建設工事を行っていました。

一連の工事が26日、完了し、東京電力は報道陣に設備を公開しました。

このうち、5号機と6号機の前に設置された直径およそ2メートル、長さおよそ7メートルの巨大な配管は、処理水を大量の海水と混ぜ合わせる装置で海水を送る配管の直径は処理水の配管の9倍の大きさがあります。

また、何らかのトラブルが発生した場合に処理水の放出を停止する「緊急遮断弁」という装置は、定められた量の処理水や海水が流れなかった場合や、水中の放射性物質の量に異常を検知した際に、自動的に水の流れを止める仕組みです。

東京電力は現在、設備のシミュレーターを使った操作員の訓練を行っていて、安全な運用に努めるとしています。

政府 処理水放出「廃炉にあたって避けて通れない課題」

処理水を薄めて海に流す計画について、政府は「福島第一原発の廃炉を進めるにあたって避けて通れない課題だ」として地元をはじめ、広く国内外に理解を求めています。

福島第一原発では、事故で溶け落ちた核燃料デブリを冷却している水や原子炉建屋へ流れ込む雨水や地下水などが高い濃度で放射性物質を含む汚染水となり、ここから放射性物質の大半を取り除いたあとに残るトリチウムなどを含む処理水が増え続けています。

敷地内の1000基余りのタンクで保管していますが、その量は、今月15日時点で容量の98%にあたるおよそ134万トンに達しています。

政府はおととし、東京電力が翌年の夏ごろにはタンクが満杯になる見通しを示していたことを踏まえ、基準を大きく下回る濃度に薄めて海に放出する方針を決定しました。その後、汚染水の発生量を抑える対策が進んだことや、降水量が見込みを下回ったことなどから、現在は、タンクが満杯になる時期は、来年2月から6月ごろと見直されています。

また、福島第一原発では、森林などを伐採すれば活用できるスペースがあり、東京電力は、処理水を保管するタンクをさらに増やすことは不可能ではないとしています。

ただ、こうしたスペースについては、今後、取り出しを予定している核燃料デブリや廃炉作業で出る放射性廃棄物を保管するエリアとして活用する方針を示しています。

このため政府は、限られた敷地で廃炉作業を進めていくためにも、タンクを増やし続けるわけにはいかず、処理水の処分を先送りすることはできないと説明しています。