ロシア“国防相 前線司令部へ”映像公開 動揺おさえるねらいか

ロシアで武装反乱を起こした民間軍事会社ワグネルの代表は、部隊を撤収させたあとの消息がわかっていません。
一方、ロシア国防省は26日、ショイグ国防相が前線の司令部を訪問したとする映像を公開し、軍部隊の動揺をおさえるねらいもうかがえます。

ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏は、国防省との確執を深める中で武装反乱を起こし、首都モスクワに向けて部隊を進めましたが、その後、一転して引き返させ、占拠していた南部の軍司令部からも部隊を撤収させました。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は、プリゴジン氏が隣国のベラルーシに行くという見通しを示しましたが、プリゴジン氏は、日本時間の25日未明以降、SNSへの投稿を更新していません。

ロシアのネットメディアは25日午後、日本時間の25日夜、プリゴジン氏の広報担当が「彼は皆によろしくと伝えており、通常の通信ができるようになれば、皆の問いに答える」と回答したと伝えていますが、その後の消息はわかっていません。

プリゴジン氏について、ペスコフ報道官は24日、捜査は取りやめられるという見通しを示していますが、一部のロシアメディアは26日、検察当局の関係筋の話として、今のところ、捜査を打ち切るという決定は出されておらず、継続していると伝えています。

一方、ロシア国防省は26日朝、日本時間の26日午後、「ショイグ国防相が特別軍事作戦の前線の司令部を訪れた」と発表し、ショイグ国防相が部隊の司令官から戦況などについて報告を受けたとする映像を公開しました。

ショイグ国防相を直接非難し、解任まで要求していたとされるプリゴジン氏が武装反乱を起こす間、ショイグ国防相の動静は伝えられていませんでしたが、ロシア大統領府は武装反乱がウクライナでの軍事作戦にいかなる影響も与えないと主張していて、ショイグ国防相が前線で指揮を執る映像を公開することで、ロシア軍部隊の動揺をおさえるねらいもうかがえます。

こうした中、反転攻勢を続けるウクライナのマリャル国防次官は26日、SNSに「ここ1週間で、ウクライナ軍は東部で戦術的な成功を収めた」と投稿しました。

戦況を分析しているイギリス国防省は26日、「ウクライナは、より広範な反転攻勢の一環として、東部ドネツク州のバフムト周辺での攻撃に弾みをつけた」と指摘し、ウクライナ軍はプーチン政権の混乱を反転攻勢への追い風にしたいものとみられます。

ロシア ミシュスチン首相「安定した状況を維持した」

ロシアのミシュスチン首相は26日、プリゴジン氏による武装反乱が起きてから初めてとなる政府幹部を集めた会合を開き、プーチン大統領のもとでの結束を呼びかけました。

この中でミシュスチン首相は「最近、この国は新たな試練に直面した。ロシア国内の情勢を不安定化させるための試みがあった。大統領の指導のもとで的確に行動をとり、安定した状況を維持した」と述べ、事態は安定したと強調しました。

また、ロシアの主権や国民の安全を守る重要性を訴え「プーチン大統領の周りに結束し、すべての勢力が1つにならなければならない」と述べ、結束を呼びかけました。

プーチン大統領「イランから支持を得た」

ロシア大統領府は26日、プーチン大統領が友好関係にあるイランのライシ大統領と電話で会談したと発表しました。

このなかで「イランの大統領は6月24日の出来事に対し、ロシア指導部への全面的な支持を表明した」として、プリゴジン氏の武装反乱に対するプーチン政権の対応についてイランから支持を得たと強調しました。

そのうえで貿易やエネルギーなどの経済分野での両国関係の強化について確認したということです。

また、ロシア大統領府はプーチン大統領がカタールのタミム首長とも電話で会談したと発表し、タミム首長からも武装反乱に対するプーチン政権への支持が表明されたとしています。

今回の事態を受けてプーチン政権は、中国など友好国に対して、支持を取り付ける外交活動を活発に行っています。

批判の声がある一方で支持する意見も

プリゴジン氏が武装反乱を起こしたことについて、モスクワでは、不安や批判の声がある一方で、支持する意見も聞かれました。

このうち、28歳の会社員の女性は「この先どうなるかと、とても不安になった。いまは混乱がほとんどなくなり、大丈夫だと思う。軍事作戦に影響を与えるかどうかはわからない」と話していました。

また、年金生活者の女性も武装反乱が起きた当時、心配で眠れなかったとしたうえで「困難な時期になぜ戦闘の前線を放棄したのか。ソビエトでも現政権下でもなかった」と述べ、プリゴジン氏を批判しました。

一方で複数の知人がワグネルに加わっているという41歳の男性は「プリゴジン氏が言っていることは、おおむね事実だ。国に逆らったのではなく行動できることを示した」と述べ、プリゴジン氏を支持しました。