消費者物価指数上昇 今後はどうなる?高止まりが続く懸念も

総務省が23日発表した5月の消費者物価指数では生鮮食品とエネルギーを除いた指数が、去年の同じ月より4.3%上昇しました。

上昇率が前の月を上回るのは12か月連続で、4.3%の上昇率は第2次オイルショックの影響が続いていた1981年6月以来、41年11か月ぶりの水準です。

回転ずしチェーンやクリーニング会社など、わたしたちの生活に身近な企業などの対応とあわせてお伝えします。

消費者物価指数は食料などの「財」と「サービス」の価格の平均的な変動を調査したものです。

生鮮食品とエネルギーを除いた指数の上昇が続いていて、専門家などは食材などの値上がりだけでなく、賃金との連動性が高い「サービス」の上昇の動きが見え始めていると指摘します。

5月の「サービス」は去年の同じ月より1.7%上昇しました。

4月から横ばいとなりましたが、消費税率引き上げの影響を除くと、1995年3月以来の水準です。

このうち、外食全般を含む「一般外食」は7.1%、スーツなどの「クリーニング」は6.6%上昇しています。

専門家などからは賃上げに伴う人件費の増加を価格に転嫁する動きが一段と広がれば、「サービス」の上昇が見込まれ、物価の上昇率が高止まりした状況が続く可能性があるという指摘が出ています。

暮らしへの影響が広がる中、企業側も価格転嫁によって客離れが起きないようさまざまな工夫を凝らしています。

“納得感のある価格転嫁に“

首都圏で90店舗余りの寿司店を展開する千葉市の会社では、5月、一部の商品を1割から3割ほど値上げしました。

食材やエネルギー価格、輸送費の上昇に加え従業員の賃上げのための原資を確保するためで去年9月に続く値上げとなります。

5月の値上げでは、まぐろの「上赤身」や「オーロラサーモン」が税込み396円から440円に、「いか」が154円から198円、「海老」が209円から242円に価格が改定されました。

会社では物価や人件費の上昇が続く中、価格への転嫁はやむをえないとしながらも値上げによって来客数が減少する可能性があると懸念していました。

しかし、5月の値上げの後の全店舗の客数は去年の同じ時期と比べてほぼ同じで落ち込みはありませんでした。

また客1人あたりの単価は上がったため売り上げは去年の同じ時期を上回ったということです。

会社では商品やサービスの質が確保されるなど消費者側に納得感のある価格転嫁にしたいと考えています。

コストの削減を進めながらも従業員の賃上げやサービス向上に必要だと判断した価格転嫁は今後も前向きに実施していきたいとしています。

60代の男性は「2か月に1回は来ていますが、値上げは気付かなかったです。食料品など全般的に値上げが相次いでいるのでやむをえないと思います」と話していました。

「銚子丸」の武知勝利商品部長は「商品の価格が上がるとお客様の目につくし、高いとも思われてしまう。そういう中では、価格に見合う商品をしっかり出せるかという部分が大切になってくる。今後もまずは自社で努力しながら、価格転嫁を考えていきたい」と話していました。

客離れへの懸念 値上げに踏み切れない企業も

客離れへの懸念から十分な値上げに踏み切れないという企業もあります。

都内に本社を置くクリーニング会社では全国に780の店舗などを展開し、グループ全体で従業員は4000人余りに上ります。

千葉県松戸市の工場には、都内や千葉県内の90の店舗から1日、およそ2万着の衣服などが運ばれ、クリーニングを行っています。

工場では洗濯機やアイロン、プレス機を動かすための電気代や都市ガス代が上がっているほか、ハンガーや溶剤などの仕入れ価格も10%以上上昇しています。

このためさまざまなコスト削減に加えて客に呼びかけてハンガーを回収するなどの取り組みも行っていますが、コストの上昇分を吸収しきれないことから、ことし3月に料金の一部を値上げしました。

地域ごとに価格設定が異なるということで松戸市の店舗では、ズボンとセーターをいずれも520円から550円に引き上げるなど、3%から10%値上げしました。

ただ、他社との競合が激しいことから客の数や売り上げが減少する「客離れ」を懸念し、最も利用が多いワイシャツの値段は220円に据え置くなどコストが上昇した分の30%程度の値上げにとどめたということです。

セーターを受け取りに来た60代の男性は、「クリーニングは家で洗えないものを洗ってくれるので、必要なものです。価格はできれば上がって欲しくないですが、適正な価格があると思うのでしかたがないと思います。ただ、大幅に価格が上がるのなら、クリーニングに出すかどうかを考えてしまうと思います」と話していました。

会社によりますと、値上げ幅を抑えたことで、「客離れ」を防ぐことができていますが、収益の大幅な改善にはつながっていないということで今後、状況に応じて再度の値上げを検討したいとしています。

また、人手不足が続いていますが、多くを占めるパート従業員の賃上げは実施できていないということです。

ポニークリーニングの小林隆之生産部長は「ある程度の利益は確保したいので、もっと価格を上げたいですが、客に嫌われてしまっては元も子もないので、思い切った値上げは難しいところです。値上げした分は社員の福利厚生に使いたいと思っていましたが、そうしたところは少し抑えめとなっています。人材の確保は厳しい状況が続いています」と話していました。

“価格転嫁を避けたい“ 企業努力を続ける飲食店

そして価格転嫁はできるだけ避けたいと、企業努力を続けている飲食店も。

高松市の屋島西町にある焼き肉店では、1000円だった焼き肉ランチの価格を5月、100円値上げしましたがそれ以外のメニューの価格は据え置いています。

値上げすることで客足が遠のくことへの不安などがあるためだといいます。

その一方で、仕入れコストは去年の同じ時期と比べて20%ほど増加。

このため、できるだけ経営を圧迫しないようさまざまな工夫を行っています。

その1つが仕入れの工夫です。

これまでは1週間分をまとめて仕入れていましたが、使わずに廃棄することもあるなどむだがあったため、2~3日ごとに仕入れることにしました。

また仕入れの際にはスーパーを6店ほどまわり、特売品など最も安い商品を買うようにしているということです。

調理する際の工夫もあります。

併設するカフェで提供している揚げ物を調理する際には、一度に使用する油の量を減らすため、小さな鍋で調理するようあらためました。

さらに、光熱費を抑えるため調理場の冷房をつけず、暑い中で調理しています。

焼き肉店「凪」の店主の柏原守雄さんは「これ以上コストがあがってはしんどいというのが正直なところだ。利益を削ってでもお客さんにはいいものを出してあげたいという思いはあるが、こうした我慢を果たしていつまで続けることができるのか懸念している」と話していました。

お中元商戦 身近な商品の販売強化

物価高の影響はデパートのお中元商戦にも現れています。

値上げが相次ぐ調味料や食用油を選ぶ人が増えているとして、販売を強化する動きが出ています。

デパートのお中元商戦は今月に入って本格的にスタートし、埼玉県川越市の「丸広百貨店」では、今月15日に専用の売り場、ギフトセンターを開設しました。

新型コロナの影響で去年まではネット通販に力を入れていましたが、「5類」への移行に伴ってことしはレイアウトを変更し、人気商品を1か所にまとめて紹介することで、対面での販売増加を見込んでいます。

売れ筋の商品は例年と同じように地元産の日本酒やクラフトビール、コーヒーですがことしはしょうゆなどの調味料や食用油を選ぶ客も少なくないということです。

百貨店では原材料費の高騰などで値上げが相次ぐ中、暮らしに身近な商品の人気が高まっているとして、販売を強化しているということです。

買い物客は「お中元のギフトとしてしょうゆを見に来ました。少し高いけど喜んでくれると思う」と話していました。

丸広百貨店のギフト担当の川平真輝さんは「新型コロナの行動制限の緩和で手配りのギフトが増えることも予想している。原材料価格の高騰もあり食用油など生活に必要な商品の需要は伸びるとみているので、在庫もしっかり確保している。期間を通して売り上げを去年以上に伸ばしたい」と話していました。