5月消費者物価指数 前年同月比3.2%上昇 食料は47年ぶり高水準

家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる5月の消費者物価指数は天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が、去年の同じ月より3.2%上昇しました。このうち「生鮮食品を除く食料」は、47年7か月ぶりの高い水準となっています。

総務省によりますと、先月・5月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として去年5月の101.6から104.8に上昇し、上昇率は3.2%となりました。

上昇率は4月から0.2ポイント下がり、3か月ぶりに鈍化しました。

このうち、「生鮮食品を除く食料」は9.2%上昇し、1975年10月以来、47年7か月ぶりの高い水準となっています。

具体的には
▽「卵」が35.6%
▽「炭酸飲料」と外食の「ハンバーガー」が17.1%
▽「チョコレート」が14.4%上昇しました。

ほかにも幅広い品目で上昇していて
▽「洗濯用洗剤」が19.9%
▽「ルームエアコン」が15.7%
▽「トイレットペーパー」が15.3%
▽「宿泊料」が9.2%上がりました。

一方、政府による負担軽減策や、足元の燃料価格が下がったことで
▽「電気代」はマイナス17.1%と、比較が可能な1971年1月以降で最大のマイナス幅となったほか、
▽「都市ガス代」は1.4%の上昇となったものの上昇幅は4月の5.0%と比べ、大きく縮小しています。

また、生鮮食品とエネルギーを除いた指数は去年の同じ月より4.3%上昇していて、第2次オイルショックの影響が続いていた1981年6月以来、41年11か月ぶりの水準となっています。

総務省は「外食や宿泊といったサービス関連など、物価上昇のすそ野がさらに広がっているほか、6月分からは電気料金の値上がりも反映される。また、人件費の上昇を要因とした値上げの動きも出ていて、賃上げの流れが今後、サービス価格にどう影響するのか注視したい」と話しています。

専門家「値上げの動き当面続く」

5月の消費者物価指数の発表を受けて第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは、値上げの動きは当面続くという見通しを示しています。

新家さんは「企業がコストを価格に転嫁しようという意欲が非常に強いことが示されている。去年からコストが非常に大きくなり、とてもじゃないが企業だけでは吸収しきれないということで、値上げが進んだ。価格転嫁しきれていない部分は今後さらに転嫁しなければならないので、当面、値上げの動きは続くとみられる。生活者の負担としては厳しい状況が今後も続くとみておく必要がある」としています。

そのうえで「ことしの春闘による賃上げが予想以上のものになったとはいえ、物価の上昇に比べると低く、実質的にはまだマイナスの状況なので、消費を活発化させるまでにはいかないと思う。来年以降も、持続して物価が上がっているから賃金をさらに上げていこうというムードが高まるかどうかがポイントだと思う」と持続的な賃上げにつなげられるかが重要だと指摘しています。

【専門家 一問一答】今後の物価の見通しは?

5月の消費者物価指数が公表されました。今後の物価の見通しなどはどうなるのか。第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストに聞きました。

Q.今回、注目した点は?

A.電気代などのエネルギー価格や生鮮食品を除いた指数の上昇率が高いことだ。4%を超えてきて、さらに伸びが高まっている。原材料などのコストがかなり上がっているなか、企業がコストを価格に転嫁しようという意欲が非常に強いことが示されていると思う。

また、人手不足がかなり進んでいて、業界によってはかなり賃金が上がっている。そういった賃金の上昇を、サービス価格に転嫁しようという動きがさらに進めば、これまで落ち着いていたサービスの価格が上がっていく可能性がある。

Q.企業の価格転嫁に対する姿勢は変化してきてるか?

A.企業の価格転嫁に対する意欲は、かつてないほど強まっている状況だと思う。以前は、コストが多少上がっても、値上げはしなかった。企業の努力でコストの増加分を吸収し、価格を何とか据え置くということをやっていた。

1社値上げをすると、需要が他社に移ってしまうので、何とか踏みとどまって、シェアを維持することが日本企業の常だったが、去年あたりからコストの増加が非常に大きくなり、とてもじゃないが吸収しきれないということで、値上げが進んだ。

Q.価格転嫁で、商品を値上げするという傾向は続きそうか?

A.去年のコストの上昇があまりにも大きかったので、企業としても、まだ価格転嫁しきれてないという声を多く聞く。価格転嫁しきれていない部分をこれから転嫁しなければいけないことになってくるので、当面、値上げの動きは続くとみられる。

加えて、足元では再び円安が進んでいる。円安が進むと、輸入品のコストが上がって、またそれを価格に転嫁する必要が出てきて、今後さらなる値上げにつながる可能性があると思う。

Q.今後の物価の見通しは?

A.値上げの要因については、今後もかなりめじろ押しになっている。6月からは地域にもよるが、電気料金が大幅に引き上げられる。

さらに、食品の値段は今後も上がるとみられるほか、テレビやパソコンといった耐久消費財も値上げが続きそうなため、物価上昇がすぐにおさまるという状況ではない。生活者の負担としてはかなり厳しい状況が今後も続くとみておく必要がある。