岡田彰布監督を直撃!18年ぶりの”アレ”へ 阪神好調の要因は

18年ぶりの“アレ”(優勝)を目指し、交流戦を終えた時点でセ・リーグ首位を走る阪神。NHKプロ野球解説者で、監督としても近鉄、日本ハムでチームを優勝に導いた梨田昌孝さんが、15年ぶりに復帰した岡田彰布監督に、ここまでの戦いぶりと今後の展望を聞きました。

セ・リーグ首位阪神・勝ち越しは「14」と好調

(NHKプロ野球解説 梨田昌孝さん)
「開幕から、ここまでの戦い方を振り返っていかがですか」

(阪神・岡田彰布監督)
「トータル的に見ると、貯金14もある。まぁこれは18から減ってるから、なんか今ね、調子もあんまりよくないというのもあるんだけど。でも、トータル的にね、思った以上にね、5月がよかったんで、これはもう想定外ですね。だからまあ、交流戦でちょっと借金3つになったんですけど。これはまあ、ちょっと、ねぇ、まあチームはやっぱり開幕から行くと交流戦の時が1番悪い状態だったんで。まあこれは、よく3つでしのいだなっていうのもあるし。だからまあ、リフレッシュしてまたセ・リーグ戻るんでね。もう1回、再スタートしたいですね」

(梨田さん)
「監督のやりたい野球というのは、今のところできているという感じですか?」

阪神・岡田彰布監督

(岡田監督)
「まあずっと守りというかね、あんまり打つ方は期待してないんで(笑)。だからそういう意味ではまず、去年11月から就任してから守り、守りっていうかね。ピッチャーはいいんでね。まあ野手の方でまずそっちから入ろうかなっていうのがあったんで。そういう意味では、みんな思ってるぐらいには、そこそこやってくれてるんじゃないかなと思いますね」

中野拓夢のコンバート・二遊間の強化

岡田監督が掲げる“守りの野球”。

特に就任当初からセカンド・ショートの二遊間の強化を図ってきました。

中野拓夢 選手

2年間ショートを守り、WBC日本代表の中野拓夢選手はセカンドへコンバート。

木浪聖也 選手

ショートは現在、木浪聖也選手で固定されています。

(梨田さん)
「中野くんをショートからセカンドにコンバートさせた。これ、1番先におっしゃったんですね」

(岡田監督)
「1番最初ですね。まあ、これはやっぱり中野は(今シーズン)3年目ですかね。(これまでは)スタンドから見ることが多かったんで。見ててなんか守備位置、浅いなと思ったし、スタンドだとよく見えるじゃないですか。やっぱり肩に自信ないのかなっていうのもあったし。横の動きとか、そんなんはものすごくいいんでね。これはもうちょっとね、セカンドで、ちょっとスローイングの負担をなくしとけば、もっとバッティングいける、いいもの持ってるんで。もっとバッティングにも専念できるんじゃないかなとは思いました」

(梨田さん)
「実は私も見ていて中野くんは守備範囲は広いけど、やっぱり肩が弱いと。どうしてもちょっとずつポジション前に来たり。で、ダブルプレーがとれない。そういったところでコンバートしたことによって、結構ダブルプレーもとれているし。中野選手は、完全に(外野に)抜けている打球をアウトにしている」

(岡田監督)
「ああ結構それは多いですね。中野が追いついてね」

(梨田さん)
「今の監督の評価。中野・木浪の二遊間、何点ぐらいでしょう」

(岡田監督)
「いやいやもう、そうですねぇ、まあ80点はやっていいと思いますね」

突出する“フォアボールの数”

一方の攻撃陣。チーム打率はリーグ4位ですが、梨田さんが注目したのはフォアボールの数です。

セ・リーグ チーム/個人 フォアボール数

チームで選んだ数はリーグ、ダントツのトップ。

個人でも上位6人の中に阪神の選手がずらりと並び、フォアボールを選ぶことが得点につながっています。

(梨田さん)
「フォアボールの数がことし235個ってすごい。ダントツに多いんですよね。そこにまた盗塁ができる選手が塁に出る」

(岡田監督)
「いや、これはあんまり意識してなかったんだけど、ずっと思ってたんはね、※早打ちね。近本・中野の1・2番が早打ちいうのはどうなんかなと思ってね」
(※早打ち=早いカウントから打つ)

(梨田さん)
「球数も当然投げさせなくちゃいけないから相手のピッチャーは疲れますよね。このあたりのなんか※査定もちょっとおっしゃってましたけど」
(※査定=選手の年俸につながる基準)

(岡田監督)
「そうそう査定ね。開幕の前の日のミーティングでね、おーん。球団にこういうふうにやってもらったらいうのを言うたんですよね」

(梨田さん)
「それが功を奏したような感じで」

(岡田監督)
「そんなひと言で、あんな増えないと思うけどな(笑)」

(梨田さん)
「査定を上げるように申し出た理由はなんですか?」

(岡田監督)
「いややっぱりその、重要性ですよね。フォアボールの。だからまあ、なんか今まで1点やったらしいですけどね。それをなんか、えー、1.2かな。もう本当そんなんですよ。例えば7回以降はヒットと同様の価値があるとか、先頭バッターとか、そういう項目はつけたんですけどね」

(梨田さん)
「中野選手は今31個。去年18個しかなかった」

(岡田監督)
「なんか5月ぐらいに、もう去年の数字抜いたっ聞いて『えー!?』と思って。僕も全然そういうのはあんまり、去年の数字はあんまり気にしないでやってたんで」

(梨田さん)
「だけどここまで早打ちしていた選手がじっくりフォアボールを選んで、それから盗塁ができるじゃないですか。それを考えるとやっぱり監督のひと言っていうのが、なんか選手をこう奮い立たせている感じ」

小幡竜平 選手

(岡田監督)
「いや僕は『フォアボール浸透してるな』と思ったのは開幕の2戦目か。あの時、8番の小幡がフォアボール選んでガッツポーズしよったんですよ(笑)。『あー、こいつすごいな』と思ったですね、あの時に。チームとしてね。なかなかフォアボールでねぇ、ガッツポーズしないですよ」

(梨田さん)
「いや、そうですね。サヨナラ押し出しなら別だけど」

(岡田監督)
「そうそうそう押し出しなら別やけど。つないだという意味のあのガッツポーズ見たときに、これはちょっとフォアボールがだいぶ、やっぱり意識して浸透していくかなと思ったですね」

(梨田さん)
「本当になんかすごく強力なフォアボールだという感じがしますね」

“フォアボールからめ”佐々木朗希を攻略

「フォアボールをからめて勝つ」

その象徴的な試合として梨田さんの印象に残っているのが6月4日のロッテ戦です。

佐々木朗希 投手

先発は日本を代表するピッチャーの佐々木朗希投手。

6回、阪神は先頭の中野選手がフォアボールで出塁してチャンスを作り、大山悠輔選手のタイムリーヒットで先制して勝ちました。

大山悠輔 選手

佐々木投手から打ったヒットは、この1本だけながら、フォアボールは4つ選んで崩し、この回で佐々木投手をマウンドから降ろしました。

(梨田さん)
「ちょうど試合前に話をお聞きして。話をしてたら監督が『いやー梨田さん6回まで0でいったらおもしろいですよ』と。そのとおりの展開に」

(岡田監督)
「甲子園でやってたんで(佐々木投手に)打順とかも回ってくるんでね。まあ6回ぐらいが分岐点かなと思ったですね」

(梨田さん)
「そういうことがピタッピタッと当たって『うわ~これは』と思って見てたんですよ」

(岡田監督)
「いやあれからだから、ベンチでOBの川藤幸三さんとかとみんなで言ってたけど『ヒット2本とフォアボール4つで勝てますよ、1点入りますよ』言うたんよ。ヒット2本打てんかった、あれ1本やった(笑)。大山の1本やったけど、やっぱフォアボール絡んで足使って」

(梨田さん)
「ワイルドピッチも絡んだりしてね」

(岡田監督)
「そうですね」

懸念は大黒柱の復活!

梨田さんが懸念材料にあげたのは先発投手。

青柳晃洋 投手

大竹耕太郎投手や村上頌樹投手らが台頭し、ローテーションを引っ張っていますが、去年まで2年連続で最多勝をあげた大黒柱の青柳晃洋投手は不振のため2軍で調整中です。

今後の戦いには青柳投手の復活は必要不可欠となります。

(梨田さん)
「青柳投手。当然、これ夏場になってくると…」

(岡田監督)
「そりゃ、もう当然、いりますよね」

(梨田さん)
「いつ頃になるかちょっとわかりませんけども、どうしても、やっぱりピッチャーの数っていうのはね」

(岡田監督)
「『今度先発、桐敷(拓馬投手)行くぞ、今度先発、富田(蓮投手)行くぞ』は言えるんですよ。青柳は、僕は、どっちか言うと、本人から『もう大丈夫です』と言うてきてほしいですね。行くぞとこっちが判断するピッチャーじゃないと思うんですよ」

(梨田さん)
「いや、そうですね、実績から言ってもね」

(岡田監督)
「そうなんですよ。先発ローテーションがはまってても本人から『もう大丈夫です』言うてきたら、そら、先発ローテの誰かを外して青柳いきますよ。まあ当然いいときの感覚は青柳本人が一番わかってると思うんで」

18年ぶりの”アレ”に向けては

リーグ戦が再開し、残すは79試合。

18年ぶりの”アレ”(優勝)に向けては。

NHKプロ野球解説 梨田昌孝さん

(梨田さん)
「80試合ちょっと切ってるわけですけど、どの辺りが1番ムチを入れる時なのか」

(岡田監督)
「あー、まあムチはね、やっぱり(夏の)高校野球が終わってからですかね。夏のロードは、そんなやっぱり良くないですよね、成績は。だからその辺はまた、なん とかしのいで。帰ってきてからですよね。はい、甲子園でね」

(梨田さん)
「ぜひ、優勝してもらってですね、僕は、タイガースを優勝候補にしていますし、パ・リーグはオリックスにしてるんでね 。夢の関西対決をね、ぜひ見たい」

(岡田監督)
「やりたいっすね。関西を盛り上げられるように…(笑)」

(梨田さん)
「えぇ、ぜひ、頑張ってください。きょうはありがとうございました」

(岡田監督)
「はい。ありがとうございました」