「H3」打ち上げ失敗 想定されるケースは9つ JAXA

ことし3月、打ち上げに失敗した日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機について、JAXA=宇宙航空研究開発機構は、試験や解析などをもとに失敗に至ったと想定されるケースを9つに絞り込み、このうち2つは「H3」だけに搭載された機器が深く関係しているケースだと明らかにしました。

ことし3月、日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機は2段目のエンジンが着火せず打ち上げに失敗し、これまでの調査でエンジン内部の機器がショートなどを起こした可能性が高いことがわかっています。

JAXAは22日、最新の調査結果を報告し、試験や解析などをもとに機器のショートなどに至ったと想定されるケースを9つに絞り込んだと明らかにしました。

2段エンジンの設計は運用中の「H2A」ロケットとほぼ同じですが、「H3」だけに搭載された機器が深く関係しているケースが9つのうち2つあるということです。

残りの7つは「H2A」と共通する部品が関係しているケースですが、これらについては、5月以降、部品の検査を強化するといった対策が進められています。

JAXAは詳しい原因究明を進めるとともにどのケースに対しても有効な対策を講じ、できるかぎり早く「H3」や「H2A」の次の打ち上げを行いたい考えです。

新型ロケット「H3」とは

新型ロケット「H3」はJAXA=宇宙航空研究開発機構と三菱重工業が9年前から開発してきました。

日本の大型ロケットとしては「H2」以来となる、およそ30年ぶりの新規開発で、現在の日本の主力ロケット「H2A」の後継機として総開発費2000億円余りの国家プロジェクトとして進められています。

「H3」では
▽宇宙に運べる重量を「H2A」のおよそ1.3倍に増強
▽打ち上げコストを現在の半分程度に抑える計画で開発が進められてきました。

「H3」の全長は最長で63メートル、直径は5.2メートルあり、燃焼を終えると順次切り離す2段式ロケットです。

「H3」は、「H2A」に比べて、エンジンの第1段では部品の数を、補助ロケットでは本体との結合点を減らすなど、独自の技術を採用して設計をシンプルにしているのが特徴です。

打ち上げ「中止」と「失敗」の記録

打ち上げは当初、2020年度の予定でしたが、新型のメインエンジンの開発が難航するなど、延期が続いていました。

ことし2月17日に鹿児島県の種子島宇宙センターで初めての打ち上げが行われましたが、発射直前にロケットの1段目にある装置が異常を検知したため打ち上げが中止されました。

JAXAなどが原因の究明を進めて対策を講じ、3月7日、改めて打ち上げが行われましたが、今度は発射後、2段目のエンジンに着火せず、打ち上げに失敗しました。

NHKは打ち上げの前後に密着、管制室で何が起きていたのかを克明に記録しました。

サイカルジャーナル「そのとき、管制室では」で記事をご覧いただけるほか、NHK・BSプレミアムの「コズミック フロント」で6月29日夜10時から詳しくお伝えします。