“卵落としコンテスト”が行われているのは、大阪電気通信大学です。
ことし、コンテストに参加したのは、基礎理工学科に入学した、あわせて68人の学生たちです。
将来ものづくりに携わる可能性もある学生たち。その”最初の一歩”として、3~4人ひと組でチームを組んで、卵を割らないようにする方法を考えます。
大学生が毎年挑戦! “アイデアで卵を守る”コンテスト
「10メートルの高さから、卵を落としても割れないようにするには?」
そのアイデアを競うコンテストが、大阪の大学で、毎年行われています。
ものづくりの「難しさ」と「楽しさ」を知ってもらおうと、入学したばかりの学生を対象に行われるコンテスト。
ことしの学生たちは、どんな発想で卵を守ろうとしたのでしょうか?
(大阪放送局 アナウンサー 後藤佑季)
ものづくりの”最初の一歩”
使う材料は、A2サイズ(縦42センチ、横59.4センチ)の画用紙1枚と、セロハンテープのみ。
チームのメンバーでアイデアを出し合いながら、1枚の画用紙をさまざまな形に変えて、つくっていきます。
“バドミントンのシャトル”で守れ!
男子学生4人のこのチームがイメージしたのは…
“バドミントンのシャトル”。
上に取り付けた傘で、落ちるスピードを抑えて卵を守ります。
下の三角形の3分の2ほどを、くしゃくしゃにした紙で埋め、その上に卵を入れ、ショックを吸収することにしました。くしゃくしゃにした紙も、もちろんA2サイズ1枚の中から作り出しました。
落とす際は、三角形のとがったほうを下に向け、傘で落ちるスピードを和らげます。さらにくしゃくしゃの緩衝材が卵を守る、という想定です。
“箱”で守れ!
別の男子学生4人のチームがつくったのは、卵を守る“箱”。
紙を折ってストロー状にし、箱の上下に敷き詰めて緩衝材にしています。さらに、ストロー状の紙で卵をくるみ、箱の中で動かないようにしました。
使えるのは、A2サイズの紙1枚。パラシュートのようなものをつけて落下速度を落とすか、緩衝材で守るか、どちらかしかできないと考えたこのチームは、緩衝材で卵を守ることを選択したのです。
いよいよ、本番!
3階から、10メートル下の的をめがけて落とします。卵が割れないか、さらに的の中心にいかに近いかを競います。
まずは、“バドミントンのシャトル”のチーム。
傘で風の抵抗を受けてふわりと落ちましたが、途中で回転。
とがった部分から落ちるはずが、落ちたのは、卵に近い傘のほう…。
的からわずかに外れてしまいました。
卵は…?
残念、割れてしまいました。
卵を衝撃から守ろうとしましたが、重い卵のほうから落ちてしまったのが原因ではないかと、学生たちは話していました。
続いて、“箱”のチーム。
落下のスピードを和らげる傘がないため、すとんとまっすぐに落ち、ギリギリ的をとらえました。
落ちた時、衝撃を受けた様子でしたが、結果は…?
審判「無事です!」
これには、思わずチームのメンバーもガッツポーズ。
緩衝材が、卵を守り抜きました!
私も作って参加
私、後藤も作ってみました。
作ってみるとわかるのが…A2サイズは意外と小さい!ということ。
この紙だけで、卵を守らなければいけないなんて…
出来上がったのが、こちら。
傘をつけることで落下速度を落とし、箱の中に緩衝材を入れて、卵を守れるようにしてみました。
紙に切れ目を入れて、網のようにし、緩衝材にしました。
イメージは、宅配で届く段ボールの中に入っている、網目になった紙の緩衝材です。
いざ、挑戦です…!
傘の部分が風の抵抗を受けて、ふわりと落ちたように見えましたが、結果は…?
割れてしまっていました…。
卵を守った学生たちは
”箱”で卵を守ることに成功した学生は…。
学生
「音で無事だなというのがわかったので、いけたというのは確信が持てました。ガッツポーズがつい出ちゃいました、成功してよかったです!」
「大切なのは割れないかどうかではない」
参加した23チーム中、成功したのは8チーム。
パラシュート型が多かったですが、中にはとげのついた球体を作ったチームなどもいました。
担当の名倉誠 准教授は「大切なのは卵が割れないかどうかではない」と言います。
名倉准教授
「勉強の出発点だと思うんです。自分がまず、ワクワクして、おもしろいと思わないと。それが学びのための第一段階だと思うんです。物理とか科学とかを勉強する場面で、そういう気持ちをもって教科書を読むとか、先生の話を聞くとかにつながっていくと思います」
コンテストのあと、学生たちは「なんであのチームは落下速度が遅いんやろう」「あそこをああすれば割れへんのかな」と、話し合っていました。
そして私も取材の帰り道、「どうしたら、落下速度が落ちるのか」「どうしたら、緩衝材が役目を果たすのか」「そもそも卵が割れるって、どういうこと…?」と、いろいろなことを考えました。
このように考えることこそが、学びの第一歩なのではないかと思いました。