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コスモ 異例の手法で買収防衛策の議案可決 村上氏側と対立
コスモをめぐっては、村上氏が関わる投資会社「シティインデックスイレブンス」など、村上氏側があわせておよそ20%の株式を保有する大株主となっていて、みずからが推薦する弁護士を社外取締役に選任するよう求める株主提案を行っていました。
これに対してコスモは、村上氏側が所定の手続きを経ずに株式を買い増した場合、ほかの株主に新株予約権を割り当てる買収防衛策を決め、22日の株主総会に諮りました。
総会で、コスモの山田茂社長は「村上氏側が大規模な買い付け行為などを行った場合には、会社の企業価値や株主の利益を著しく損なうと判断した」などと述べ、防衛策に理解を求めました。
買収防衛策の採決に当たってコスモは、自社の取締役や村上氏側など利害関係者を除外する「マジョリティー・オブ・マイノリティー」と呼ばれる異例の手法で行うことにしました。
これについて、質疑の中で株主からは「今回の買収防衛策の採決の方法は、一部の株主を恣意的に排除するもので問題ではないか」といった指摘が出ていました。
総会では最後に議案の採決が行われ、会社側が提案した買収防衛策の議案は、賛成多数で可決されました。
一方、村上氏側の提案は議決権を持つすべての株主による採決によって否決されました。
株主からはさまざまな声が
株主総会の開催を前に出席する株主からは、旧・村上ファンドの村上世彰氏が関わる投資会社からの提案やコスモの対応についてさまざまな声が聞かれました。
群馬県前橋市の60代の女性は「今回は村上氏側が一方的にコスモの株式を買い占めたというイメージがあったので、話を聞きに来ました。村上氏側はコスモの再生可能エネルギー事業を手がける子会社を上場させれば株主にメリットがあると主張しますが、事実かなと疑問に思ってしまうので、コスモを支持したいと思います」と話していました。
一方、東京 練馬区の30代の男性は「コスモの経営者が、自分たちが気にくわないからといって村上氏側を議案の採決から排除するのは、株式会社の原則に反していて許されない行為だと思います。コスモの再生可能エネルギーの事業を手がける子会社は、評価が高く上場したほうがいいと思うので村上氏側の提案に賛成です」と話していました。
総会後の株主からは
株主総会が終わった後、出席した株主からはさまざまな声が聞かれました。
三重県鈴鹿市から来た40代の男性は「村上氏側の提案は理想論としては納得したが、そもそも実業に携わっていないので、経営を任せるという判断にはならず、コスモを支持しました。コスモには次世代のエネルギーを安定かつ安価に届けることを株主や消費者として期待したい」と話していました。
一方、埼玉県から来た50代の男性は「買収防衛策の是非などについてコスモ側の意見を聞くと、保守的で保身のようにも感じられたので、村上氏側を支持しました。コスモはこれまで株主と正面から向き合って来なかったと思うので、村上氏側の提案は効果があったのではないか」と話していました。
経営方針など 村上氏側と対立続く
「コスモエネルギーホールディングス」とその大株主となっている旧・村上ファンドの村上世彰氏が関わる投資会社など村上氏側との間では、経営方針などをめぐって対立が続いています。
事業戦略の違い
村上氏が関わる投資会社、「シティインデックスイレブンス」はコスモの株式を8.8%を保有する大株主で、この投資会社に村上氏の親族や関係する会社の持ち分を加えると村上氏側のコスモの株式の保有比率は20%余りとなっています。
この投資会社など村上氏側は、製油所の統廃合や再生エネルギーの事業を手がける子会社を分離して上場させることなどを求めています。
これに対してコスモは、製油所の統廃合については、すでに将来の需要減少を見据えた精製能力の削減など生産設備の効率化に取り組み現在の収益力は高いとしています。
また再生エネルギー事業を手がける子会社の分離・上場は、企業価値や株主の利益を損なうことになるとして、コスモのグループとして成長させることが、企業価値の向上につながると反論しています。
買収防衛策発動の是非をめぐる会社側提案
コスモは、去年11月、村上氏側から30%の株式を取得したいという意向が示されたとして、ことし1月の取締役会で、村上氏側が所定の手続きを経ずに20%以上の株式を買い付けるような場合には、株主に新株予約権を割り当てたうえで村上氏側については新株予約権の行使による株式の取得ができないようにする買収防衛策を導入することを決めました。
コスモは、村上氏側が株式を大量に取得すれば企業価値や株主の利益を著しく損なうと主張していて、こうした場合には買収防衛策を発動して村上氏側の株式の保有比率を引き下げるねらいがあります。
今回の株主総会でコスモは、村上氏側が所定の手続きを経ずに株式を買い増した場合に買収防衛策を発動するとする議案を提出しました。
この買収防衛策発動の是非をめぐる採決では、村上氏側やコスモの取締役など利害関係者を除外する「マジョリティー・オブ・マイノリティー」と呼ばれる異例の形で行われました。
これについて会社は、一般とは異なる利害状況にある株主を除いた形で決議する必要があるためだとしています。
これに対し村上氏側は、広義の持ち合い株主の議決権が排除されていないため公正な決議とはならず、経営陣の保身に使われることは明らかだなどと批判していました。
社外取締役選任の株主提案
村上氏側は再生エネルギー事業を手がける子会社の上場について取締役会で真摯に議論する姿勢が見られないとして、推薦する弁護士を社外取締役として選任するよう今回の株主総会に提案を出しました。
これに対してコスモは、村上氏側が社外取締役に推薦する弁護士は、ほかの取締役と具体的で建設的な議論が期待できないなどとしたうえで、村上氏らの個人的な利益をはかる可能性も否定できないなどとして株主提案に反対していました。