「世界ALSデー」 “海外承認の新薬 早期承認を” 患者団体訴え

全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病のALS=筋萎縮性側索硬化症の患者団体が世界ALSデーの21日、記者会見を開き、海外で新たに承認された薬の日本国内での早期承認や医療体制の拡充などを訴えました。

夏至の21日は、昼の長さの変わり目で、難病の治療の転換点となるよう願いを込めて「世界ALSデー」となっていて患者などでつくる日本ALS協会が厚生労働省で記者会見を開きました。

この中で協会はこの1年間にアメリカなどで新たに承認された
▽症状の進行を抑える薬「レリブリオ」と
▽遺伝性のALSの根本的な治療を目指す薬「トフェルセン」について、
国内で迅速な審査を進め、早期の承認を進めるよう訴えました。

ALSは国内でも症状の進行を抑える2種類の薬が使われていますが、根本的な治療法は確立されておらず、協会は厚生労働省に要望書を提出して、海外の薬が国内で使えるようになるまでの時間を短縮することや、患者を支える医療体制を拡充することなどを求めています。

会見にオンラインで参加した協会の恩田聖敬会長は「本日は世界中のALSの同胞が思いを改めて1つにする日です。私たちは政府と対話を継続しながら、患者にとってより良い制度改革に貢献したい。世の中には想像もつかないことで困っている人たちがいることを知ってもらいたい」などと代読で述べました。

患者の男性 思い伝える絵本製作

国内のALS患者はおよそ1万人にのぼり治療法の確立が急がれる中、34歳の患者の男性がみずからの体験や思いを込めた絵本を完成させました。

香川県に住む合田朝輝さん(34)です。

目の動きでパソコンを操作して文章を打ち込み、コミュニケーションをとっています。

6年前、看護師として働いていた合田さんはALSとの診断を受けました。

3人の子どもを抱える中で病気の進行により立てなくなったり、寝返りができなくなったりなどできないことが徐々に増えていくことに大きな恐怖を感じたと言います。

合田さんは「本格的にできることがなくなってきて、気を紛らわせるのも限界になってきて、逃げられなくなった。どんどん精神的に落ち込んでいきました」と振り返りました。

ブログに「私は人間でしょうか?」とやりきれない思いをつづった2年前の投稿。

これが友人の飯間将博さん(38)の目に留まりました。

飯間さんは「パソコンの前にずっといるのでいろんな勉強ができるし、頭を使う仕事はたくさんあるので仕事の一部を手伝ってほしい」と声をかけました。

合田さんは誘いをきっかけに飯間さんの会社の事務を請け負うようになったほか、マーケティングを学び、ビジネスコンテストにも挑戦、最近では、WEB制作の事業を仲間と立ち上げて活動しています。

こうした経験から「多くを失ったとしても得たものもある」と気づいた合田さんは、子どもたちに思いを伝えるため絵本の制作に取り組み始めました。

物語は、森にすむライオンが病気により体が動かなくなるところから始まります。

森が火事になり、かつてのように仲間を救うことができないと落ち込むライオンに、相棒のネズミがアイデアがあればできることがあると励まし、力を合わせて問題を解決していくストーリーです。

思いを絵本に込めた合田さんは「生きるんだ、諦めないんだと言い続けていると、僕を一人の人間として、対等な仕事仲間として、接してくれる人たちが増えてきました。それがどんなにうれしかったことか。本を読んだ子どもたちには、僕を見て自分たちも夢を持って諦めないで挑戦してほしい」と話していました。

絵本は21日から合田さんのホームページで紹介されています。