通常国会が閉会 政府提出の法案 97%が成立

通常国会が21日閉会し、政府提出の法案は、防衛費増額に向けた財源確保法や外国人収容のあり方を見直す改正入管法など97%が成立しました。

ことし1月に召集された第211通常国会は21日、会期末を迎え、衆参両院の本会議で閉会の手続きなどが行われ、150日間の会期を終えて、閉会しました。

この国会では、防衛費増額に向けた財源を確保するための法律や、外国人収容のあり方を見直す改正出入国管理法、それに、原発の運転期間を実質的に延長できる法律など、政府が提出した60の法案のうち97%に当たる58が成立しました。

また、議員立法では、LGBTの人たちへの理解増進に向けた法律が、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の4党による与党案の修正を経て成立しました。

この国会では、防衛費増額にあたっての政府の増税方針や、少子化対策の強化、それに物価高騰対策などをめぐって与野党の論戦が交わされたほか、終盤国会では、相次ぐマイナンバーカードをめぐるトラブルを受けて、野党側が追及を強めました。

また、憲法論議では、大規模災害や戦争などの際の対応を憲法に定める「緊急事態条項」をめぐって集中的に議論が行われ、衆議院では、憲法改正に向けて具体的な条文づくりに入るよう求める声も出されました。

ただ参議院の議論では、衆議院側よりも慎重な意見を表明する党もあり、衆参の温度差が明らかになりました。

岸田総理大臣と野党党首による「党首討論」は1度も行われませんでした。

一方、国会の最終盤には、立憲民主党が内閣不信任決議案を提出するのに合わせて岸田総理大臣が衆議院の解散に踏み切るのではないかという臆測が与野党で広がりました。

しかし、岸田総理大臣は決議案の提出に先立って解散しないと表明しました。

衆議院議員の4年の任期はことし10月で折り返し点となっていて、与野党は、秋の臨時国会での解散も見据えながら、選挙の準備を進めることにしています。

自民 茂木幹事長「重要政策 前に進めることできた」

自民党の茂木幹事長は記者団に対し「防衛費増額に向けた財源確保法など、なかなか難しい法案も成立させ、わが国の安全保障や国民生活に直結する重要な政策を前に進めることができた」と述べました。

そのうえで茂木氏は、今後の取り組みとして、少子化対策など先送りできない課題の解決、党改革の推進、それに次の衆議院選挙に向けた体制の整備の3点を重視する考えを示しました。

一方、記者団から自民党の役員人事や内閣改造の望ましい時期について問われたのに対しては「岸田総理大臣がいずれかのタイミングで適切に判断する」と述べるにとどめました。

自民 高木国対委員長「重要法律を成立 成果の上がった国会」

自民党の高木国会対策委員長は、記者団に対し「会期中に統一地方選挙やG7サミットなどもあり、日程的に厳しい国会だったが、防衛費増額に向けた財源確保法をはじめ、重要な法律を成立させることができ、成果の上がった国会だったと思っている」と述べました。

立民 泉代表「総理には『聞く力』が全くない」

立憲民主党の泉代表は、記者団に対し「岸田総理大臣には『聞く力』が全くなく、いくら議論しても考え方を変えなかった。防衛政策や財源の議論は中途半端で、少子化対策も当事者目線ではない。政府の変わらない姿勢が明確になった国会だった」と述べました。

また、日本維新の会との国会での連携を解消したことについて「衆議院の解散・総選挙の足音が聞こえてくる中で、維新の会が自民党との距離感を優先させた結果ではないか。立憲民主党は、一貫して自民党に対じし、国民のために論戦を挑む立ち位置でやっている」と述べました。

立民 安住国対委員長「野党第一党に厳しい試練の時代」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、党の会合で、立憲民主党が提出した内閣不信任決議案に日本維新の会などが同調しなかったことについて「議会の常識で言えば、野党を名乗っている以上、反対はありえない。野党第一党にとっては本当に厳しい試練の時代が続いている」と述べました。

そのうえで「立憲民主党が質疑で頑張っても支持率に跳ね返ってこず、こうした状況を跳ね返さなければ日本の議会政治は死ぬのではないか」と述べました。

一方、衆議院の解散をめぐる岸田総理大臣の一連の発言について「岸田総理大臣が振り回した解散権については、高い代償が伴うと思う。軽々しく振り上げるべきではなく、強く抗議したい」と述べました。

維新 馬場代表「『たたかう野党』前面に打ち出せた」

日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「政府の法案に修正をかけたり、われわれの考え方を詰め込んだ法案を提出したりという形で『たたかう野党』のスタイルを前面に打ち出せた国会だった。次の衆議院選挙で議席を増やしてもらえれば、こうした国会での考え方がさらに具現化していく」と述べました。

一方、立憲民主党との国会での連携について「協調路線を続けてきたが、路線の違いがかなり明確になり、最終的には破棄された。今後、細かな政策で協調できる可能性はゼロとは言えないが、憲法や安全保障、エネルギーといった部分で大きく違うのであれば、国会でともに活動していくのは厳しい」と述べました。

公明 山口代表「今後も私自身が先頭に立って頑張る」

公明党の山口代表は、党の両院議員総会で「今国会で最重要課題と位置づけられた少子化対策は、党の提案を取り込んだ政府の取りまとめがなされ、こども家庭庁も発足した。LGBTの人たちへの理解増進に向けた法律は、合意形成を終始リードし、野党の一部も合意して成立させた。今後の戦いも、議員のネットワークをフル活用し、私自身が先頭に立って頑張っていきたい」と述べました。

また、石井幹事長は「衆議院議員は、ことし10月に任期の半ばを迎えるので、常在戦場の覚悟で、各地での取り組みをしっかりと進め、勝利していきたい」と述べました。

共産 志位委員長「悪法の実施 許さないたたかいに引き続き全力」

共産党の志位委員長は、党の会合で「岸田政権が進める『敵基地攻撃能力』の保有と大軍拡に対し、正面から切り込む論戦を行ってきたのはわが党だけだ。数の暴力によって一連の悪法が強行されたが、これに反対する国民的運動が大きく広がっている。悪法の実施を許さないたたかいに引き続き全力を挙げる」と述べました。

国民 玉木代表「『賃上げ国会』一定の成果」

国民民主党の玉木代表は、党の会合で「『賃上げ国会』にしようと訴えてきたが、連合のとりまとめで30年ぶりの高い伸び率になるなど、一定の成果があった。エネルギー対策をはじめ必要な対策については国会の閉会中もしっかり訴えていきたい」と述べました。

また「衆議院の解散・総選挙は今の国会ではなかったが、秋の臨時国会にも解散があるという前提で準備を進めていく。夏の間も怠りなく活動に取り組み、候補者を積極的に擁立していきたい」と述べました。

れいわ 山本代表「最悪の国会だった」

れいわ新選組の山本代表は、記者会見で「最悪の国会だった。30年の不況にコロナや物価高があわさった状況で、国民に大した手当てもしないのに、負担増がほぼ決定してしまっている。危険な法律がたくさん成立したことに焦りを感じた国会だった」と述べました。