北海道5人死亡事故 現場で何が 分かってきたことは

18日、北海道八雲町の国道で都市間高速バスとトラックが衝突しバスの乗客ら5人が死亡、12人が重軽傷を負った事故で、警察は19日午後、現場の道路の様子を写真に収めるなど改めて検証作業を行いました。
事故はトラックが対向車線にはみ出したことで起きたとみられます。
1日たって分かってきたことや、亡くなった乗客などを悼む声をまとめました。

19日の警察の検証作業

18日、八雲町野田生の国道5号線で、札幌から函館に向かっていた都市間高速バスと家畜の豚を運んでいたトラックが正面衝突した事故では、バスの乗客3人と双方の運転手のあわせて5人が死亡したほか、12人が重軽傷を負いました。

現場の道路は緩やかなカーブですが見通しはよく、事故はトラックが対向車線にはみ出したことで起きたとみられています。

警察は19日、改めて事故現場に捜査員を出し、付近の交通規制を行いながら、路面に残るタイヤの跡にチョークで印を付けたり、道路の様子を写真に収めたりして検証作業に当たりました。

今後は、2台の車の破損状況なども詳しく確認するということです。

亡くなった乗客3人は 運転席すぐ後ろの窓側の座席に

都市間高速バスを運行していた「北都交通」によりますと、事故にあった「高速はこだて号」の車内は横に3席ずつ座席が配置されていて、亡くなった乗客の男女3人は運転席の後ろの窓側の席に縦に並んで座っていました。

前方から、函館市旭町の地方公務員、若崎友哉さん(33)、札幌市清田区の高橋裕美さん(55)、鹿部町のパート従業員、高清水忍さん(57)の順番で座っていたということです。

若崎さん “将来有望な人材” “若い職員引っ張る存在”

函館市によりますと、亡くなった乗客の1人で市役所に勤務していた若崎友哉さん(33)は平成24年に入庁し、市教育委員会の管理課などを経て、ことしから人事課の主査を務めていました。

函館市の大泉潤市長は「連絡を受けたときは大変、驚きました。若崎さんについては優れた職員だと聞いていたので、若くて将来有望な人材が失われたことは非常に残念です。心からご冥福をお祈りします」と話していました。

今回の事故については「大変、痛ましく悲惨な事故で、こうした事故が決して起きないように予防に努めてほしい」と話していました。

また、若崎さんの上司にあたる人事課の葛西亘課長は、事故のあと若崎さんの妻から連絡を受けたということで、「正直、ここまで近い人がという思いで、驚きました」と心境を語りました。

その上で「若崎さんは身につけた知識を生かし、仕事の分析も非常によくできました。部下や後輩にもすごく慕われて職場の中心になるような人で、私もとても助けられていました。プライベートでも仕事でも若い職員を引っ張っていく存在でした」と話していました。

運転手 興膳さん 15年以上勤務のベテラン “信頼厚い人”

また、都市間高速バスを運行していた「北都交通」によりますと、事故で亡くなった運転手の興膳孝幸さん(64)は15年以上勤務するベテランで、ことし4月には3年間・無事故の社内表彰を受けていました。

興膳さんは後輩社員への面倒見もよかったということで、会社の事業部長は「気さくに話せて信頼の厚い人でした。最近はお孫さんの話をよくしていたとほかの乗務員から聞いていて、ことばになりません。惜しい人材を亡くしました」と話していました。

興膳さんの自宅がある札幌市清田区で町内会長をしている阿部義則さんは、「事故の話を聞いたときは驚きました。近所の人からは『雪かきを手伝ってもらって優しい人だった』とその人柄を聞いていました」と話していました。

また、興膳さんと30年来の知り合いだという理容店を営む70代の女性は、「若い頃は月に一度、髪を切りに来てくれて、道で会った時はきちんとあいさつもしてくれるとても優しい方でした。事故を知ったときは、まだお若いですし仲のよいご夫婦だったので、かわいそうだなと思いました。大変な事故が起きてしまったと思います」と話していました。

トラック所有の会社「運転手の過重労働などなかったと認識」

トラックを所有する青森県の養豚会社「日本クリーンファーム」の吉原洋明社長が、八雲町内にある事業所で記者団の取材に応じました。

この中で吉原社長は「尊い5人が亡くなりご家族を含めてお悔やみ申し上げます。現在、治療を受けている多くの人の一日も早い回復をお祈りするとともに、警察の捜査に会社として全面的に協力します」と述べました。

その上で、今回の事故について「報道されているドライブレコーダーの映像を見るかぎり、当社の車がセンターラインを越えてバスにぶつかったと認識している」としました。

また、死亡した65歳のトラック運転手について、長年、運搬業務に携わっていたベテランだとした上で「運転手本人は物損も含めて大きな事故歴はない。直近の3か月の勤務では過重労働などにはなっていなかったと認識している。事故現場付近の道路は業務でよく通行していた」と説明しました。

八雲町の国道5号線 過去にも正面衝突事故 相次ぐ

5人が死亡する事故が起きた八雲町の国道5号線は、札幌市と函館市を結ぶ北海道の主要な国道の1つですが、この国道沿いでは長距離を走る車どうしの正面衝突事故が過去にも相次いで起きています。

2004年8月の事故

2004年8月には今回の事故と同じ八雲町野田生で、乗用車が対向車線にはみ出して大型ダンプカーと正面衝突し、乗用車に乗っていた夫婦と孫2人のあわせて4人が死亡しました。

2016年9月の事故現場

また、2016年9月には八雲町浜松で乗用車と大型トラックが正面衝突し、乗用車に乗っていた女性2人が死亡する事故が起きています。

2012年2月の事故

このほか、2012年2月にも八雲町東野で乗用車とトラック2台のあわせて3台が絡む事故があり、乗用車を運転していた男性が死亡しました。

相次ぐ事故を受けて八雲町は、国道5号線を走るドライバーに町のホームページで注意を呼びかけています。

それによりますと、「国道5号線八雲町通過の心得」として、国道5号線はまっすぐな道が続くため眠気を感じやすい上、スピードを出しても大丈夫だと思い込む人も多いと指摘しています。

そして、事故を防ぐためにはスピードの出し過ぎに注意して安全運転を心がけるほか、途中で休憩をとるなどゆとりのある運転をするよう呼びかけています。

今回の事故を受けて八雲町の成田耕治副町長は「道路の管理者である国と対策を検討し、このような事故が二度と起こらないようにしていきたい」としています。

亡くなった高橋裕美さんは英会話講師「明るく優しい人だった」

事故で亡くなった高橋裕美さんは、札幌市内の英会話教室で英語の講師をしていました。19日にこの英会話教室を経営する夫婦と、高橋さんから英語を教わっていた女性が報道陣の取材に応じました。

英会話教室を夫婦で経営する60代の夫は「誰に対しても分け隔てなく平等に接する人で、非常に明るく優しい人だった。突然亡くなって、すごいショックだ」と悲痛な胸の内を明かしました。

また60代の妻は、高橋さんとの思い出について「音楽が好きな人で、クリスマスなどの行事があると楽しそうにピアノを弾いて歌っていた」と振り返っていました。

一方、高橋さんから英語を教わっていたという70代の女性は「本当に面倒見のよい先生だった。さまざまな教材のプリントを作ってくれて、分からないところがあると何度でも丁寧に教えてくれた」と話していました。