【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(17日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる17日(日本時間)の動きを詳しくお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

専門家 “今後の焦点は交通の要衝 トクマクをめぐる攻防”

ウクライナの反転攻勢について、ロシアの軍事に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠 専任講師は「ウクライナ軍はザポリージャの方向から南に攻めていき、アゾフ海まで突破することを目指して進撃している」と述べ、ウクライナはロシア軍を東西に分断し、クリミア半島への補給路を断つことを当面の目標にしているという見方を示しました。

ただ「南に攻めていくことはロシア軍も予測して部隊を集結させている。現状ではウクライナが攻めあぐねている。しかし、ウクライナもロシアもいまは前哨戦で主力は後ろに控えさせているとみられるので、現状だけではどちらが有利か不利かはまだ言えない」と指摘しました。

そして小泉氏は「ウクライナ軍の進撃速度があまり速くない。10日以上たってもロシア軍の第一線陣地にたどりつくことさえできていない。これが予想の範囲内なのか、ダムの決壊の影響などいろんな計算ミスがあってうまく行っていないのかはわからない」と述べました。

今後の焦点として小泉氏は、南部ザポリージャ州の交通の要衝、トクマクをめぐる攻防を挙げ「ロシア軍としてはトクマクをとられると、その先にある主要都市メリトポリ、さらにアゾフ海まで進撃されるという危機感がある。トクマクを要として厳重に防御している。ロシア軍からしてみれば、絶対に手放したくないまちだとわかる」と述べ、衛星画像から、ウクライナ軍の戦車が通れないように幅の広い溝を掘るなど、ロシア側がまちを囲むように陣地をつくり、防御を固めていることがわかると指摘しました。

プーチン大統領 F16戦闘機巡りNATOけん制

ロシアのプーチン大統領は16日、サンクトペテルブルクで開かれた国際会議の中で、ウクライナの反転攻勢を撃退し、ドイツ製の戦車を相次ぎ破壊していると主張しました。

そして、ウクライナが欧米に求めているF16戦闘機も同様に破壊するとした上で「仮にウクライナ国外の基地に配備され戦闘に使われた場合、これをどこでどのように破壊するか検討せざるを得ない。NATOを紛争にさらに引きずり込む深刻な危険性をはらんでいる」と述べ、NATOをけん制しました。

イギリス国防省 “ロシア軍は攻撃用ヘリコプター部隊強化”

戦況を分析しているイギリス国防省は17日、ウクライナ南部でロシア軍は攻撃用ヘリコプターの部隊を強化し、前線から100キロほど離れた、アゾフ海に面したベルジャンシクの空港に20機以上のヘリコプターが追加配備されたという見方を示しました。

その上で「南部ではロシア軍が一時的に優位に立っているとみられる」と分析しています。

ウクライナ国防次官「南部では戦術的な成功収め徐々に前進」

ウクライナ軍は東部ドネツク州や南部ザポリージャ州で反転攻勢を進めています。

マリャル国防次官は16日、SNSで「南部では戦術的な成功を収め徐々に前進している」とアピールした一方、ロシア軍の航空戦力が優勢な中、攻防が激しくなっていると明らかにしました。

ウクライナ 反転攻勢で戦車など損失 米は新たに歩兵戦闘車供与へ

ウクライナの戦地に投入された兵器の状況などを分析しているサイト「Oryx」によりますと、ドイツ製の戦車、レオパルト2は75両がウクライナにすでに供与されたか供与される予定で、フランスのAMX10軽戦車は40両が供与されたということです。

また、ブラッドレー歩兵戦闘車はアメリカから109両が供与されたとしています。

「Oryx」が今月15日までにまとめたところによりますと、このうちウクライナが反転攻勢を本格化させた今月以降、レオパルト2は4両、ブラッドレー歩兵戦闘車は16両、フランスのAMX10軽戦車は2両、それぞれ破壊されたか、損傷し放棄されたのを確認したということです。

アメリカ国防総省は今月13日、ウクライナへの新たな軍事支援としてブラッドレー歩兵戦闘車を新たに15両供与すると発表していて歩兵戦闘車の損失は補われる見通しです。

NATO ウクライナとの協議体を格上げ

NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は、16日の記者会見で、ウクライナとの間で関係の強化や安全保障上の課題などについて話し合うために設けている協議体を、現在の「委員会」から「理事会」に格上げする方針を明らかにしました。

「理事会」でのウクライナの立場は、NATO加盟国と同等になるということで、7月にリトアニアで予定されているNATOの首脳会議に合わせて最初の会合を開くことを目指しているとしています。

背景には、ロシアによる軍事侵攻を受けているウクライナが、NATOに対し、軍事面だけでなく政治面の支援も求めていることがあります。

ゼレンスキー大統領は先に、7月のNATOの首脳会議で、ウクライナの加盟に向けて正式に手続きを始めることを決めるよう求めていましたが、加盟国からは慎重な意見も出ていて、ストルテンベルグ事務総長は記者会見で、今回の議題にはならないという見通しを示しました。

南ア大統領ら ゼレンスキー氏と和平実現に向け意見交換

南アフリカのラマポーザ大統領やセネガルのサル大統領などアフリカの7か国の首脳らでつくる代表団は16日、ウクライナの首都キーウを訪問してゼレンスキー大統領と会談しました。

会談では、国家の主権や領土に対する侵害は認められないとする、国連憲章で定められた原則を確認した上で、和平の実現に向けた条件などについて意見が交わされました。

会談後の共同記者会見で、ラマポーザ大統領は「和平への道筋を描くにはあらゆる観点から議論しなければならない。ウクライナとロシア双方の言い分を聞く必要がある」と述べ、中立の立場で仲介の努力を重ねていく姿勢を示しました。

一方、ゼレンスキー大統領は、アフリカ諸国の代表団の訪問中にも、キーウなどへのミサイル攻撃が行われたことに言及し「ロシアは平和を回復しようと努力する国々を侮辱した」と非難し、ロシア軍がウクライナから完全に撤退しないかぎり、和平交渉はありえないという考えを改めて強調しました。

アフリカの7か国の代表団は、17日にはロシア第2の都市、サンクトペテルブルクを訪れ、プーチン大統領とも会談することにしています。

米国務長官「ロシア 核兵器使用の兆候ない」

ロシアのプーチン大統領が隣国ベラルーシへのロシアの戦術核兵器の搬入がすでに始まっていると明らかにしたことについて、アメリカのブリンケン国務長官は16日の記者会見で「引き続き状況を注意深く監視していく」と述べました。

その上で「ロシアが核兵器を使用する準備を進めているという兆候は見られない」と述べ、アメリカの核の態勢を変更する理由は見当たらないとする見解を示しました。

また、ホワイトハウスの報道担当者は記者団に対し「プーチン大統領による、核に関するこのような発言は非常に無責任だ」と述べて非難するとともに、アメリカとしてNATO=北大西洋条約機構加盟国の防衛への関与は揺るぎないと改めて強調しました。

プーチン大統領 新興国や途上国との連携強化を強調

ロシアのプーチン大統領は16日、第2の都市サンクトペテルブルクで開かれた「国際経済フォーラム」の全体会合で、反転攻勢をめぐる司会者の質問に対し「ウクライナ軍はその目的を達成できていない」と述べ、ロシアが撃退していると重ねて主張しました。

そして、ウクライナは長期戦で自国の軍備を使い果たすとした上で「彼らの兵器はすべて外から持ち込まれたもので、それでは長く戦えない。ウクライナ軍に勝ち目はない」と主張して、強気の姿勢を示しました。

また、中国やインドなどとの関係強化をアピールした上で、17日にアフリカ諸国の首脳との会談を控える中「アフリカにも大きなチャンスがある」と述べ、新興国や途上国との連携を強めていく考えを強調しました。

プーチン大統領「最初の戦術核兵器 ベラルーシに搬入」

ロシアのプーチン大統領は16日、みずからの出身地でもある第2の都市、サンクトペテルブルクで開かれた国際会議の中で、ロシアの戦術核兵器の隣国ベラルーシへの配備について「最初の戦術核兵器がベラルーシ領内に搬入された」と述べ、戦術核兵器の搬入がすでに始まっていると初めて明らかにしました。

そして、年内には配備が完了するという見通しを示した上で「これは抑止力であり、戦略的にわれわれを打ち負かそうと考える国々がこの事実を忘れないようにするためだ」と述べ、ウクライナが反転攻勢を進める中、軍事支援を続ける欧米に対して核による威嚇を強めた形です。

これに先だってプーチン大統領は6月9日に行った、同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領との会談で、7月7日か8日に保管施設を完成させたあと、直ちに戦術核兵器の配備を開始するとしていました。

一方でプーチン大統領は、核兵器の使用について「国家の存続に対する脅威があれば理論的には可能だが、われわれにはその必要性がない」と述べ、現時点で核兵器を使う考えはないとする立場を改めて強調しました。

プーチン大統領 国防費増額する方針示す

ロシアのプーチン大統領は16日、第2の都市、サンクトペテルブルクで開かれている「国際経済フォーラム」で演説し「防衛と安全保障を強化し、兵器を購入するためには追加の資金が必要であり、ロシアの主権を守るためにはこれを行う義務がある」と述べ、ウクライナへの侵攻を続ける中、国防費を増額する方針を示しました。

また、ロシアのことしのGDP=国内総生産は最大で2%まで成長する見通しだと主張したうえで「これによって、ロシア経済は世界の主要国の中での地位を維持できる」と述べ、欧米の経済制裁が強化される中でも、ロシアは経済面でも存在感を示していくと強調しました。