プーチン大統領「最初の戦術核兵器 ベラルーシ領内に搬入」

ロシアのプーチン大統領は、ロシアの戦術核兵器の隣国ベラルーシへの配備について、搬入がすでに始まっていると初めて明らかにしました。年内には配備が完了するという見通しを示し、核による威嚇を強めた形です。

ロシアのプーチン大統領は16日、みずからの出身地でもある第2の都市、サンクトペテルブルクで開かれた国際会議の中で、ロシアの戦術核兵器の隣国ベラルーシへの配備について「最初の戦術核兵器がベラルーシ領内に搬入された」と述べ、戦術核兵器の搬入がすでに始まっていると初めて明らかにしました。

そして、年内には配備が完了するという見通しを示した上で「これは抑止力であり、戦略的にわれわれを打ち負かそうと考える国々がこの事実を忘れないようにするためだ」と述べ、ウクライナが反転攻勢を進める中、軍事支援を続ける欧米に対して核による威嚇を強めた形です。

これに先だってプーチン大統領は6月9日に行った、同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領との会談で、7月7日か8日に保管施設を完成させたあと、直ちに戦術核兵器の配備を開始するとしていました。

一方でプーチン大統領は、核兵器の使用について「国家の存続に対する脅威があれば理論的には可能だが、われわれにはその必要性がない」と述べ、現時点で核兵器を使う考えはないとする立場を改めて強調しました。

ウクライナ軍の反転攻勢にも強気の姿勢

ウクライナ軍は、東部ドネツク州や南部ザポリージャ州で反転攻勢を進め、着実に前進しているとする一方で、ロシア側による激しい攻撃に直面していることも認めていて、双方の攻防が激しくなっているとみられます。

プーチン大統領は16日、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで開かれた「国際経済フォーラム」の全体会合で、反転攻勢をめぐる司会者の質問に対し「ウクライナ軍はその目的を達成できていない」と述べ、ロシアが撃退していると重ねて主張しました。

そして、ウクライナは長期戦で自国の軍備を使い果たすとした上で「彼らの兵器はすべて外から持ち込まれたもので、それでは長く戦えない。ウクライナ軍に勝ち目はない」と主張して、強気の姿勢を示しました。

国防費増額の方針示す

一方、プーチン大統領は演説で「防衛と安全保障を強化し、兵器を購入するためには追加の資金が必要であり、ロシアの主権を守るためにはこれを行う義務がある」と述べ、ウクライナへの侵攻を続ける中、国防費を増額する方針を示しました。

また、ロシアのことしのGDP=国内総生産は最大で2%まで成長する見通しだと主張したうえで「これによって、ロシア経済は世界の主要国の中での地位を維持できる」と述べ、欧米の経済制裁が強化される中でも、ロシアは経済面でも存在感を示していくと強調しました。

また、中国やインドなどとの関係強化をアピールした上で、17日にアフリカ諸国の首脳との会談を控える中「アフリカにも大きなチャンスがある」と述べ、新興国や途上国との連携を強めていく考えを強調しました。

米国務長官「ロシア 核兵器使用の兆候ない」

プーチン大統領が隣国ベラルーシへのロシアの戦術核兵器の搬入がすでに始まっていると明らかにしたことについて、アメリカのブリンケン国務長官は16日の記者会見で「引き続き状況を注意深く監視していく」と述べました。

その上で「ロシアが核兵器を使用する準備を進めているという兆候は見られない」と述べ、アメリカの核の態勢を変更する理由は見当たらないとする見解を示しました。

また、ホワイトハウスの報道担当者は記者団に対し「プーチン大統領による、核に関するこのような発言は非常に無責任だ」と述べて非難するとともに、アメリカとしてNATO=北大西洋条約機構加盟国の防衛への関与は揺るぎないと改めて強調しました。

専門家「新興国・途上国との関係強化を加速」

ロシアのプーチン政権がウクライナ侵攻を続ける中で、開催している大規模な国際経済会議について、国立の研究機関の専門家はNHKのインタビューに対し、ロシアは中国や「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国との関係強化の動きを加速させていると指摘しました。

侵攻を続けるロシアに対し、欧米など各国は経済制裁を強め、ロシア市場から国際的な企業の撤退が相次いでいます。

こうした状況についてロシア科学アカデミーの中国・現代アジア研究所、キリル・ババエフ所長は「ロシアビジネスを東方に方向転換させ、新たなパートナーとしてアジア、アフリカ、ラテンアメリカを模索している。去年からこの動きが加速している」と指摘しました。

そのうえでロシアが期待する中国について「中ロ関係は発展の最高潮にある。中国のロシアへの姿勢は、リスクに対する懸念から可能性への期待に移行している。中国の政権側からロシアとビジネスしてもよいというシグナルがみられる」と述べ、欧米の制裁が強まる中でも中国側からも経済協力の動きが進んでいるという認識を示しました。

また「グローバル・サウス」との関係について「かつてソビエトはアフリカ市場に非常に積極的だったが、ロシアは現在、この流れに復帰しようとしている」と指摘しています。

さらに、欧米による制裁でロシアがドル決済から締め出される動きを踏まえて「国際間の決済でBRICS=新興5か国はドルをやめた決済に移行しようと積極的に協議している。近いうちに何らかの決定が生まれる可能性もある」と述べ、アメリカに対抗してロシアや中国などが加わるBRICSの通貨で決済するシステム作りが進むという見方を示しました。