トラックめいめいさんはどこへ向かう人手不足解決のヒントは?

物流業界が直面する深刻な人手不足。
解消のヒントになりそうな独自の取り組みを始めた人たちがいます。
女性トラックドライバーの“インフルエンサー”。
もう1人は運送会社とラーメン店を経営する“二足のわらじ”の社長です。
解消のヒントになりそうな独自の取り組みを始めた人たちがいます。
女性トラックドライバーの“インフルエンサー”。
もう1人は運送会社とラーメン店を経営する“二足のわらじ”の社長です。
トラックめいめいさんって?
SNSのアカウント名「トラックめいめい」さん、22歳。
トラックドライバー歴は4年、大型やけん引などの免許を取得し、現在は大型トラックや中型トラックを運転しています。
ツイッターのフォロワー数は31万人を超える“インフルエンサー”です。
一躍、有名になったのは。
トラックドライバー歴は4年、大型やけん引などの免許を取得し、現在は大型トラックや中型トラックを運転しています。
ツイッターのフォロワー数は31万人を超える“インフルエンサー”です。
一躍、有名になったのは。

仕事終わりの食事など、楽しむ姿をSNSに投稿するようになったことがきっかけでした。
去年4月にSNSを始める前まで全く興味がなく、スマホにアプリすら入れていませんでした。
当時は大型免許を取るため教習所に通い、その過程やドライバーとしての日常の様子を発信。
試行錯誤しながらツイートを続けていたある日、心境を率直につぶやいた内容が大きな反響を呼んだのです。
その後は、インフルエンサーとして多くの人に知られるようになりました。
去年4月にSNSを始める前まで全く興味がなく、スマホにアプリすら入れていませんでした。
当時は大型免許を取るため教習所に通い、その過程やドライバーとしての日常の様子を発信。
試行錯誤しながらツイートを続けていたある日、心境を率直につぶやいた内容が大きな反響を呼んだのです。
その後は、インフルエンサーとして多くの人に知られるようになりました。

(ツイッター投稿文より)
「今日頑張った自分にご褒美を与えるッッッ!!!!!」
「今日頑張った自分にご褒美を与えるッッッ!!!!!」
始まりは検索から
めいめいさんが物流業界に足を踏み入れたのは「1人で仕事がしたい」という理由でした。
当時、インターネットで《1人でできる仕事》と検索したと言います。
当時、インターネットで《1人でできる仕事》と検索したと言います。

1人でできるにこだわったのは、気を遣わずに1人で過ごすことが好きだったから。
学生時代は友人もいましたが、気疲れしてストレスを抱えていました。
検索結果で目に付いたのが『トラックドライバー』。
「(当時)免許はまだ持っていない。でもほかの女の子より力に自信があるから、できるかもしれない」と思ったのです。
学生時代は友人もいましたが、気疲れしてストレスを抱えていました。
検索結果で目に付いたのが『トラックドライバー』。
「(当時)免許はまだ持っていない。でもほかの女の子より力に自信があるから、できるかもしれない」と思ったのです。
飛び込んだ業界は“2024年問題”が・・・

持ち前の行動力で、検索からトラックドライバーの世界に飛び込みましたが、この業界は“2024年問題”という深刻な課題を抱えていました。
物流業界では「働き方改革」の一環として来年(24年4月)、トラック運転手の時間外労働に法律で年960時間の上限が課されることになりました。
ことし1月、野村総合研究所が出した試算では、このまま対策を取らなければ、現在に比べ再来年(2025年)には28%の荷物が、2030年には35%の荷物が運べなくなるというのです。
働く時間が制限されることで給料も減り、やりがいの低下に直結するのではないかと危機感を抱いています。
物流業界では「働き方改革」の一環として来年(24年4月)、トラック運転手の時間外労働に法律で年960時間の上限が課されることになりました。
ことし1月、野村総合研究所が出した試算では、このまま対策を取らなければ、現在に比べ再来年(2025年)には28%の荷物が、2030年には35%の荷物が運べなくなるというのです。
働く時間が制限されることで給料も減り、やりがいの低下に直結するのではないかと危機感を抱いています。

トラックめいめいさん
「勤務時間が短縮されたり、働き方改革が進んだりするのは労働環境がよくなるのでうれしい。その反面、給料が減るはずなのでちょっと悩ましいです。たくさん労働してガツガツ稼ぎたいですという人からするとやりがいもなくなってきちゃうんじゃないかな」
「勤務時間が短縮されたり、働き方改革が進んだりするのは労働環境がよくなるのでうれしい。その反面、給料が減るはずなのでちょっと悩ましいです。たくさん労働してガツガツ稼ぎたいですという人からするとやりがいもなくなってきちゃうんじゃないかな」
国内のトラックドライバーは、およそ87万人。
このうち女性は3万人ほどのわずか3.4%。
このうち女性は3万人ほどのわずか3.4%。

すべての産業の女性の割合の平均と比べて、40ポイント以上も低いのが現状です。
5年ほど前は、世の中に出ている情報も少なく、わからないことばかりだったというめいめいさんですが、今では力仕事を除けば、男女は関係ないと実感しています。
5年ほど前は、世の中に出ている情報も少なく、わからないことばかりだったというめいめいさんですが、今では力仕事を除けば、男女は関係ないと実感しています。

めいめいさん
「最初は自分が何を運ぶのかわからないまま面接に行きました。仕事の内容を多くの人に知ってもらいたい。力仕事の大変さはありますが、仕事をする上では男女関係ないです」
「最初は自分が何を運ぶのかわからないまま面接に行きました。仕事の内容を多くの人に知ってもらいたい。力仕事の大変さはありますが、仕事をする上では男女関係ないです」
SNSのインフルエンサーとして

日々、SNSで発信を続ける中、めいめいさんが決めていることが1つだけあります。
『マイナスな内容を書かない』。
『マイナスな内容を書かない』。
めいめいさん
「どんなにつらいことがあっても不特定多数の人に言う必要ないなって。それを楽しく書けばいいんだって。マイナスなことを書く人のツイートを見ると自分も嫌な気持ちになる」
「どんなにつらいことがあっても不特定多数の人に言う必要ないなって。それを楽しく書けばいいんだって。マイナスなことを書く人のツイートを見ると自分も嫌な気持ちになる」
“ツイートをする責任感”から、送られてきたコメントには、できるかぎり返信するよう心がけています。
さらに投稿する時間もこだわり、平日の朝は午前7時ごろ、土・日は少し遅く午前8時ごろと、どの時間にツイートをすると多く見てもらえるかを自分なりに研究するなど、日々、向き合い続けています。
さらに投稿する時間もこだわり、平日の朝は午前7時ごろ、土・日は少し遅く午前8時ごろと、どの時間にツイートをすると多く見てもらえるかを自分なりに研究するなど、日々、向き合い続けています。
これからの道

インフルエンサーとなって、影響力を持つようになっためいめいさん。
これからはドライバーの仕事をもっと多くの人、特に女性に知ってもらい「ドライバーになりたい」という人を後押しすることが目標です。
これからはドライバーの仕事をもっと多くの人、特に女性に知ってもらい「ドライバーになりたい」という人を後押しすることが目標です。
めいめいさんとやりとりし、アドバイスを参考にトラックドライバーになったという神奈川県に住む50代の男性に話を聞きました。
長い間、管理部門で働いてきたということですが、50歳を過ぎて「1人で業務を完結できる仕事がしたい」とこれまでとは全く異なる業界のトラックドライバーを志しました。
ツイッターに思いを書き込んだところ、めいめいさん本人から返信が来たのです。
長い間、管理部門で働いてきたということですが、50歳を過ぎて「1人で業務を完結できる仕事がしたい」とこれまでとは全く異なる業界のトラックドライバーを志しました。
ツイッターに思いを書き込んだところ、めいめいさん本人から返信が来たのです。

50代の男性
「トラック運転手のお仕事って、社内の人間関係とかキツかったりしますか?」
トラックめいめい
「人に気を使いすぎてしまって勝手に疲れるタイプなので、トラック運転手を選びました!」
「トラック運転手のお仕事って、社内の人間関係とかキツかったりしますか?」
トラックめいめい
「人に気を使いすぎてしまって勝手に疲れるタイプなので、トラック運転手を選びました!」

50代の男性
「質問に対して丁寧にトラックドライバーになることを応援していますといったような励ますような返信をしてくださって。自分の仕事にすごく誇りを持ちほかの人にもトラックドライバーを目指してほしいと、願っている方なんだなとすごく感じました」
「質問に対して丁寧にトラックドライバーになることを応援していますといったような励ますような返信をしてくださって。自分の仕事にすごく誇りを持ちほかの人にもトラックドライバーを目指してほしいと、願っている方なんだなとすごく感じました」
トラックドライバーを目指す人たちにとって、道しるべになっているめいめいさん。

今の仕事は、1人の時間を取ることがきて自分にぴったり合っているといいます。
5月中旬からは、念願の大型トラックで仕事ができるようになりました。
好奇心旺盛な22歳のインフルエンサーの仕事ぶりが、確実にドライバーへの関心を高めています。
5月中旬からは、念願の大型トラックで仕事ができるようになりました。
好奇心旺盛な22歳のインフルエンサーの仕事ぶりが、確実にドライバーへの関心を高めています。
“幸せの定義は100人いたら100違う”
こちらは山口市の運送会社。
ユニークな方法で従業員の離職を防ぎ、将来の人材確保につなげようと取り組みを始めました。
ユニークな方法で従業員の離職を防ぎ、将来の人材確保につなげようと取り組みを始めました。

鈴木信哉社長
「みんなが幸せになることを考えたら、幸せの定義は100人いたら100人が違うと思う。小さな幸せも大きな幸せも。要は幸せはみんな違う。それをみんなで分かち合いながら、今できることに全力を尽くして、今いる仲間といろんな新しい仕組みを作っていきたい」
「みんなが幸せになることを考えたら、幸せの定義は100人いたら100人が違うと思う。小さな幸せも大きな幸せも。要は幸せはみんな違う。それをみんなで分かち合いながら、今できることに全力を尽くして、今いる仲間といろんな新しい仕組みを作っていきたい」
おととし(21年)、運送会社を始めた鈴木信哉さん(42)。
経営する会社は、大手の下請けとして主に軽貨物の宅配をしています。
インターネットの通信販売で購入された商品などをおよそ100人の従業員が県内各地に届けています。
経営する会社は、大手の下請けとして主に軽貨物の宅配をしています。
インターネットの通信販売で購入された商品などをおよそ100人の従業員が県内各地に届けています。
秘策はラーメン店!?オープンの背景は
鈴木さんは先月(5月)、山口市中心部の温泉街にラーメン店をオープン。
開店から1か月足らずで、看板メニューの「豚骨しょうゆ」が人気を集め、深夜は満席になる日が多くなりました。
開店から1か月足らずで、看板メニューの「豚骨しょうゆ」が人気を集め、深夜は満席になる日が多くなりました。

店主は会社の従業員です。
鈴木さんは注文を受けたり、ラーメンを運んだりしてサポートしています。
運送会社がオープンした飲食店。
異なる業種を始めた背景には、物流業界の現状がありました。
鈴木さんは注文を受けたり、ラーメンを運んだりしてサポートしています。
運送会社がオープンした飲食店。
異なる業種を始めた背景には、物流業界の現状がありました。
鈴木さんは20代の頃、大手運送会社の社員として働き配送も経験。
その後、別の業界では社長を務めました。
当時も仕事にやりがいを感じていましたが、時間に追われながら重い荷物を運び続けることで、想像以上に体力が奪われたと言います。
その後、別の業界では社長を務めました。
当時も仕事にやりがいを感じていましたが、時間に追われながら重い荷物を運び続けることで、想像以上に体力が奪われたと言います。
鈴木さん
「夏になるとめちゃくちゃ暑いし毎日時間に追われるので、体力はすごく消耗され、やっぱり蓄積されて体にガタが来る。自分も経験してすごく大変でした」。
「夏になるとめちゃくちゃ暑いし毎日時間に追われるので、体力はすごく消耗され、やっぱり蓄積されて体にガタが来る。自分も経験してすごく大変でした」。
ネット通販などの影響で需要が増加!
さらにコロナをきっかけにネット通販の需要が高まり扱う荷物が増加。
繁忙期には、1人で150を超える荷物を配送することもあります。
重さは最大で40キロあり、時には、配り終えるまで10時間ほどかかる人もいるということです。
繁忙期には、1人で150を超える荷物を配送することもあります。
重さは最大で40キロあり、時には、配り終えるまで10時間ほどかかる人もいるということです。

体への負担も大きく退職を余儀なくされた人もいます。
会社を立ち上げてからの2年間で20人ほどが去りました。
会社を立ち上げてからの2年間で20人ほどが去りました。
“みんなが安心して働ける場所を”
疲弊して辞めていくドライバーを目の当たりにしてきた鈴木さん。
配送を続けることが難しくなっても「働く『選択肢』を増やすことができないか」と強く思うようになりました。
そこで、みずから社内に「受け皿」を作ることにしました。
そこで考えたのがラーメン店だったのです。
従業員の1人にかつてラーメン店を経営し、ノウハウを知っていた男性ドライバーがいたことが決め手でした。
配送を続けることが難しくなっても「働く『選択肢』を増やすことができないか」と強く思うようになりました。
そこで、みずから社内に「受け皿」を作ることにしました。
そこで考えたのがラーメン店だったのです。
従業員の1人にかつてラーメン店を経営し、ノウハウを知っていた男性ドライバーがいたことが決め手でした。

店主
「宅配はやりがいがあったが、体への負担を考えると長くは続けられないと私は思いました。その中で、社長が考えている社内でのセカンドキャリアを実現していく、自分がその第1歩になれたらなと」
「宅配はやりがいがあったが、体への負担を考えると長くは続けられないと私は思いました。その中で、社長が考えている社内でのセカンドキャリアを実現していく、自分がその第1歩になれたらなと」
今後、新たな事業も
たとえ今の仕事が厳しくなっても会社に所属をしてもらい、希望や体調によっては再び配送の現場にも復帰できる、従業員が将来を見据えて働くことができるサイクルの確立を目指しています。
“幸せは従業員の数だけある”。
そんな信念が鈴木さんの背中を押しています。
“幸せは従業員の数だけある”。
そんな信念が鈴木さんの背中を押しています。

鈴木さん
「出会った以上は仲間。そういう人たちが辞めると聞いた時にはすごく寂しい。辞めることは最後の選択肢にしてもらい、最後まで一緒に付き合っていきたい。今後も店舗を考えているが、それはカフェかもしれない。今できることに全力を尽くし、今いる仲間ともにいろいろな新しい仕組みを作っていきたい」
「出会った以上は仲間。そういう人たちが辞めると聞いた時にはすごく寂しい。辞めることは最後の選択肢にしてもらい、最後まで一緒に付き合っていきたい。今後も店舗を考えているが、それはカフェかもしれない。今できることに全力を尽くし、今いる仲間ともにいろいろな新しい仕組みを作っていきたい」
専門家もドライバー不足解消に期待
物流に詳しい流通経済大学・矢野裕児教授は、めいめいさんや鈴木さんのような取り組みがドライバー不足の解消に役立つのではないかと期待しています。
めいめいさんについて。
めいめいさんについて。

矢野裕児教授
「ドライバー不足が深刻化していて、女性ドライバーがもっと活躍する場が必要です。女性が働きづらい職場であることは間違いないが、女性が活躍できる場に変換していくことは重要です。もう1つはある程度、働く時間を柔軟に対応できれば、女性にとっても活躍できる場として有効になっていくと思います」
「ドライバー不足が深刻化していて、女性ドライバーがもっと活躍する場が必要です。女性が働きづらい職場であることは間違いないが、女性が活躍できる場に変換していくことは重要です。もう1つはある程度、働く時間を柔軟に対応できれば、女性にとっても活躍できる場として有効になっていくと思います」
鈴木さんの取り組みについては。
矢野教授
「個人で軽貨物のドライバーをやっていて、ほかの業種に変えるというのはいくらでもあるのですが、企業が次の働き場を提供するという例は、あまりないと思います。ラーメン店と言うのも、相当珍しい例だと思います。
物流事業者は運ぶことによって収入を得るというだけではなくて、もっといろんな付加価値のつけ方を考えて、個人の働き方を提供していくことがとても重要だと思います」
「個人で軽貨物のドライバーをやっていて、ほかの業種に変えるというのはいくらでもあるのですが、企業が次の働き場を提供するという例は、あまりないと思います。ラーメン店と言うのも、相当珍しい例だと思います。
物流事業者は運ぶことによって収入を得るというだけではなくて、もっといろんな付加価値のつけ方を考えて、個人の働き方を提供していくことがとても重要だと思います」

山口放送局
具志保志人記者
2020年入局
警察担当を経て県政、選挙事務局、スポーツ担当
鈴木社長のように「1人1人の幸せ」と向き合い続ける記者を目指す
具志保志人記者
2020年入局
警察担当を経て県政、選挙事務局、スポーツ担当
鈴木社長のように「1人1人の幸せ」と向き合い続ける記者を目指す

ネットワーク報道部
鈴木彩里記者
2009年入局
スポーツニュース部を経て現所属
めいめいさんはずっと気になっていた存在。取材を通して刺激をもらった
鈴木彩里記者
2009年入局
スポーツニュース部を経て現所属
めいめいさんはずっと気になっていた存在。取材を通して刺激をもらった