【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(16日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる16日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ陸軍「ロシア軍 最高戦力部隊の一部をバフムトへ」

ウクライナ軍は前進を阻止しようとするロシア側による激しい攻撃に直面していることも認めていて、ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は16日、SNSで「ロシア軍は最も戦闘能力の高い部隊の一部を東部のバフムト方面へ移動させ続けている」と警戒を示し、攻防が激しくなっているとみられます。

ロシア軍司令官が死亡か 英国防省

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は15日の分析でウクライナ軍は、
▽東部ドネツク州のバフムト周辺、
▽ドネツク州西部、
▽南部ザポリージャ州の西部の少なくとも3方面で反撃作戦を継続し、前進があったとしています。

このうち、ザポリージャ州では今月12日、戦闘によってロシア軍の司令官の1人、ゴリャチェフ氏が死亡したと伝えられ、イギリス国防省は16日「殺害されたのはほぼ確実だ。ロシア軍の将軍の殺害は、ことし初めてとなる」と指摘しました。

反転攻勢 英専門家「戦闘はより厳しく」

ウクライナ軍の反転攻勢についてイギリス王立防衛安全保障研究所は14日、ジャック・ワトリング上級研究員の分析を公開し、ウクライナの部隊がロシアが築いた防衛線の奥まで進めば、ロシア側の砲撃や空からの攻撃を受けやすくなるとして「戦闘はより厳しくなるだろう」という見通しを示しました。

ワトリング氏は、これまでウクライナ側は、なるべく広い範囲で前進する動きを見せることにより、どこからの突破をねらっているかロシア側に悟られないようにしてきたと分析しています。
ただ、いずれ主力部隊を投入して前線の突破を図る決断を迫られると指摘した上で「成功するかどうかの2つに1つで、段階的なものではない」として今後、決定的な局面を迎えることになるとしています。

その上で「損失は膨らみ、成功には時間がかかるだろう」と分析し、ウクライナ兵の訓練や武器を供与する態勢を維持し、ロシアにいずれは敗北すると思わせることが重要だと訴えています。

米国防長官 “ウクライナの戦いはマラソン” 継続支援呼びかけ

欧米などの各国が、反転攻勢を進めるウクライナへの軍事支援を協議する会合が開かれ、アメリカのオースティン国防長官は、長期的な戦闘になるという見方を示し、継続的な支援を呼びかけました。

この会合は、ベルギーにあるNATO=北大西洋条約機構の本部で15日、アメリカが主催して開いたもので、およそ50か国の代表が参加して反転攻勢を進めるウクライナへの軍事支援について協議しました。

はじめにアメリカのオースティン国防長官が「ウクライナの戦いはマラソンのようなものであり、短距離競走ではない。私たちは長期にわたってウクライナとともに立ち上がる」と述べ、長期的な戦闘になるという見方を示し、継続的な支援を呼びかけました。
会合では、ロシアによるミサイルや無人機の攻撃が続いていることを踏まえ、各国がウクライナの防空能力の強化に向けた支援を相次いで表明したほか、ウクライナが求めるF16戦闘機について、ウクライナ兵への訓練の計画を協議したということです。

また、アメリカ軍の制服組トップ、ミリー統合参謀本部議長は会合のあとの記者会見で、ウクライナの反転攻勢について「ウクライナは攻撃を開始し確実に前進している。非常に激しい戦いであり、相当な時間と犠牲を払うことになるだろう」と述べました。

そして「ロシア側は明らかに統率がとれておらず部隊の士気も高くない」と述べ、今後の戦況を注視する考えを示しました。

ウクライナ軍 前進強調も “ロシア軍の激しい攻撃に直面”

ウクライナ国防省のマリャル次官は15日、首都キーウで行った記者会見でウクライナ軍は東部方面では3キロ以上前進し、南部方面でも徐々に前進していると強調しました。

一方「敵は激しく抵抗し、無人機の攻撃や砲撃などに直面している」とも述べ、ウクライナ軍の前進を阻止しようとするロシア側による激しい攻撃に直面していると明らかにしました。

また、会見に同席した、ウクライナ軍の参謀本部の幹部は、今月に入ってからロシア軍は、140発以上のさまざまな種類のミサイルや250機以上の無人機を使って攻撃していると指摘した上で、ウクライナは、欧米側から供与された兵器も使い抗戦していく姿勢を強調しました。
一方、ロシア国防省は15日、ウクライナの無人機の生産拠点を攻撃したと発表したほか、東部ドネツク州や南部ザポリージャ州で砲撃などを行い、ウクライナ軍を撃退したと主張していて、双方の攻防が一層激しくなっているものとみられます。

ゼレンスキー大統領 スイス議会でビデオ演説

永世中立国のスイスでウクライナへの武器の再輸出をめぐって法律を修正する動きが出るなか、ゼレンスキー大統領がスイスの連邦議会でビデオ演説を行い、武器の再輸出を認めてほしいと訴えました。

永世中立国のスイスは、他国に輸出した自国製の武器が、紛争当事国に再輸出されることを法律で禁じてきました。

ただ、ロシアによる軍事侵攻が長期化する中、ドイツやデンマークが、自国が保有するスイス製の弾薬などをウクライナに送りたいと要求していることを受けてスイスの連邦議会は、武器の再輸出に関する法律の修正案を検討しています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、スイスの議会でビデオ演説を行い「戦争の原因はロシアによる侵略であり、命を守るために戦っている」と述べ、自衛の立場を強調しました。

そのうえで「私たちは平和を取り戻すために武器を求めていることを理解してほしい」と述べ、ウクライナへの武器の再輸出を認めてほしいと訴えました。
地元のメディアによりますと、スイスの議会で外国の首脳がビデオ演説を行うのは異例で、演説が終わると、多くの議員が立ち上がり、大きな拍手をおくっていました。

再輸出を可能にする法律の修正案は、今月上院で可決され、下院での審議がことし秋に予定されていますが、世論調査でも賛否がきっ抗しているほか、連立を組む4つの党のなかでも立場は割れていて、長年、中立を掲げてきたスイスでの議論の行方が注目されています。

ロシア選管 ”統一地方選を併合4州でも実施”

ロシアの中央選挙管理委員会は15日、ことし9月にロシアの各地で予定している統一地方選挙について、ロシアが去年9月、一方的な併合に踏み切ったウクライナ東部や南部4州でも実施すると発表しました。

この4州をめぐっては、ロシア側は全域を掌握しておらず、激しい戦闘が続いている一方、プーチン大統領が一方的な併合を宣言したあと、通貨がロシアのルーブルに切り替えられたほか、地元住民にはロシア国民であることを証明するパスポートも発給されています。

ロシアとしては、ウクライナ軍が反転攻勢を進める中、4州でも選挙を実施することで、ロシアによる支配の既成事実化を一層進めるねらいがあるとみられます。

IAEA ザポリージャ原発を視察

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は15日、ロシア軍が占拠を続けるザポリージャ原子力発電所を視察し、南部のカホウカ水力発電所のダムの決壊による影響を確認しました。

今月6日のダムの決壊後、ザポリージャ原発に冷却水を供給していた貯水池の水位が低下し、影響が懸念されていました。

現地を訪れたグロッシ事務局長は報道陣に対して「状況は深刻だ」としながらも、「事態を安定化させる対策が講じられている」と述べました。そして原発に隣接し、冷却水を蓄えている別の池の様子を確認したとして「十分な水がある」と述べ、当面、冷却水は確保できるとの見方を示しました。

グロッシ事務局長は、これまでこの池などに数か月分の冷却水が確保されていると説明していて、池の水門などが砲撃などで破壊されないことが重要だと指摘しています。

IAEAは、ダムの決壊を受け、ザポリージャ原発に常駐させる職員を増やし、安全を確保するための活動を強化する方針です。

ノルウェー デンマークと協力し約9000発の砲弾の供与を発表

ウクライナが反転攻勢を進めるなか、ノルウェーは15日、デンマークと協力し、およそ9000発の砲弾をウクライナに供与すると発表しました。

それによりますと、2か国は、薬きょうや信管などそれぞれが保有する部品を持ち寄ることで、砲弾として供与するということです。

ノルウェーのグラム国防相は声明で「ウクライナは砲弾を緊急に必要としている」としたほか、デンマークのポールセン国防相代行は「ノルウェーと協力したことで完成した砲弾を短期間で送ることができる」とし、前線に投入されている自走式りゅう弾砲などに使用されるとしています。

これについてウクライナのゼレンスキー大統領は15日、ツイッターに「砲弾の追加供与は戦場において大いに必要とされている。われわれはともに共通の勝利に近づいている」と両国への謝意を示しました。

また、イギリス国防省は15日、デンマーク、オランダ、アメリカ国防総省とともに、ウクライナがロシアによるミサイルや無人機による攻撃に対応できるようにするため、防空ミサイルシステムをあらたに供与すると発表しました。

発表では「ウクライナの重要インフラを守り、今後数か月の反転攻勢を成功させるために必要なものだ」として、数百の防空ミサイルと、関連するシステムを供与する予定で、搬送は数週間以内に完了するとしています。

ワグネル代表 ロシア国防省が求める契約締結を拒否

ウクライナへの軍事侵攻で多くの戦闘員を投入するロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏は14日、SNSでロシア国防省が求めている契約の締結を拒否する考えを重ねて示しました。

これに先立ってロシアのプーチン大統領は13日、「社会保障が得られるよう国家と契約を結ぶことが必要だ」と述べ、ワグネルを念頭に、戦闘に志願する者はすべて今月中に国防省と契約を結ぶ必要があるとする立場を明確にしました。

プリゴジン氏は、ショイグ国防相を批判するなどロシア国防省との確執が指摘されていて、14日には「この戦争に参加した時、契約を結ぶ義務があるとは誰も言わなかった。死亡した2万人の戦闘員も契約が必要なのか」と反発しました。その上で「社会保障については大統領が妥協案を見つけてくれるだろう」と述べています。

これについてイギリス国防省は15日、プリゴジン氏は、国防省の立場を支持したプーチン大統領の発言を受けてもなお契約の締結を拒否したとした上で、「7月1日は双方の確執の重要な分岐点となりそうだ」という見方を示しています。