陸上自衛隊 “性被害” 裁判 元隊員5人中4人争う姿勢

陸上自衛隊の元自衛官の女性が複数の隊員から性被害を受け精神的な苦痛を受けたなどとして、国や元隊員5人に賠償を求めている裁判が、横浜地方裁判所で始まりました。

5人のうち4人の元隊員は「性暴力にあたる行為はなかった」などとして争う姿勢を示しました。

国は性被害の事実を認めましたが、賠償の責任については現段階では留保するとしました。

国と元隊員5人に計750万の賠償を求める

元陸上自衛官の五ノ井里奈さん(23)は、去年まで福島県郡山市にある部隊に所属していました。

その際、複数の隊員から性被害を受けた上、自衛隊内の相談窓口などに申告していたにもかかわらず十分な調査や対応がなく、精神的な苦痛を受けたとして、国と元隊員5人にあわせて750万円の賠償を求めています。

元隊員5人は防衛省の調査の結果、性暴力が確認されたとして、去年12月、5人全員が懲戒免職になっています。

横浜地方裁判所で裁判始まる

裁判は14日から横浜地方裁判所で始まり、五ノ井さん本人が裁判に参加しました。
横浜地裁

元隊員5人のうち4人 「性暴力にあたる行為はなかった」

裁判の中で、元隊員のうち1人は性暴力について認め、争わない姿勢を示しましたが、ほかの4人は「性暴力にあたる行為はなかった」などと主張して争う姿勢を示しました。

国側 「極めて深刻な事態だと受け止めている」

また、国側は「極めて深刻な事態だと受け止めている」として、性暴力の事実については認めましたが、国の賠償責任の範囲や有無については、五ノ井さん側の具体的な主張を受けて明らかにしたいとして留保するとしました。

五ノ井さん 「悲しい気持ち、悔しい気持ちに」

裁判のあと五ノ井さんは、弁護士とともに横浜市内で会見を開きました。
この中で、4人の元隊員が書面を通じ、性暴力にあたる行為はなかったなどと争う姿勢を示していることについて「書面を読んだ時は言葉に言い表すことができない悲しい気持ち、悔しい気持ちになりました。自分の妻や子どもにも同じような書面を送るのかと思いました。元隊員から謝罪を受けましたが、その謝罪は形だけだったのかと思います」と話しました。
陸上自衛隊 元自衛官 五ノ井里奈さん (23)
その上で「争う姿勢を示した4人については罪を認めて反省してほしいです。今も現役の自衛官でハラスメントなどで苦しんでいる人もいるので、組織内でハラスメントのない環境にしてほしい」と述べました。

防衛省の調査で隊員5人を免職の懲戒処分に

この問題で防衛省は、隊員5人を免職の懲戒処分にしています。

陸上自衛隊の福島県郡山市の部隊では去年6月まで所属していた五ノ井さんが複数の隊員から性被害を受けたと訴え、防衛省が調査を進めてきました。

その結果、当時の上司にあたる20代から40代の陸曹5人が五ノ井さんに性暴力を行ったことが確認できたとして、防衛省は去年12月15日、免職の懲戒処分にしたと発表しました。
このうち4人はおととし6月と8月、訓練後の飲食の場で胸を触ったり、押し倒して体を触ったりしたほか、別の1人がこうした行為の一部を指示して行わせていたということです。

一部の陸曹は、五ノ井さんに口外しないよう口止めしたほか、自衛隊内の調査に対して、事実を否定したり虚偽の説明を行ったりしたということです。
また、五ノ井さんから被害の訴えを受けたのに事実関係を調査しないなど、職務怠慢があったとして、中隊長だった1等陸尉を停職6か月の懲戒処分にしました。

さらに、▽五ノ井さんに対し、服を脱ぐよう促す性的な発言をしたとして、3等陸尉を訓戒の処分にしたほか、指揮監督義務違反があったとして▽大隊長だった2等陸佐を注意、▽連隊長だった1等陸佐を口頭注意の処分にそれぞれしていました。