衆議院解散について岸田首相“情勢見極める” 与野党で神経戦

衆議院の解散について、岸田総理大臣は、国会の会期末にかけての情勢を見極める必要があるという認識を示しました。

与野党からは、解散の可能性に含みをもたせるとともに、野党側による内閣不信任決議案の提出をけん制したものだという見方も出ていて、最終盤の国会は神経戦の様相が色濃くなっています。

岸田総理大臣は13日夜の記者会見で、来週21日までの国会の会期中に衆議院を解散する考えがあるか問われたのに対し「会期末の間近になって、いろいろな動きがあることは見込まれ、情勢をよく見極めたい。現時点ではそれ以上のことを答えることは控えたい」と述べました。

これまで繰り返していた「今は解散は考えていない」という言い回しを変えた格好で、与野党からは解散の可能性に含みをもたせたという受け止めとともに、会期末を控え、野党側による内閣不信任決議案の提出をけん制したものだという見方も出ています。

与党内では「不信任決議案が提出されれば解散すべきだ」という意見の一方「内閣支持率にかげりが見られるなか、今は選挙をすべきではない」という声も根強く、岸田総理大臣は13日に自民党の麻生副総裁、茂木幹事長と会談し、こうした与党内の情勢や国会対応などをめぐって意見を交わしたものとみられます。

これに対し、立憲民主党の幹部は不信任決議案について「衆議院が解散されるかどうかは関係なく、政権への評価をどういう行動で示すかを考えている」と述べていて、執行部は、防衛費増額に向けた財源確保法案など、残る法案審議の状況も踏まえ、提出の是非を判断する方針です。

会期末まで1週間となった最終盤の国会は、解散をにらみながら各党による神経戦の様相が色濃くなっています。

松野官房長官 “首相の『答えること控えたい』 それに尽きる”

松野官房長官は、午前の記者会見で「岸田総理大臣は『諸般の情勢を総合して判断していく。現時点ではそれ以上のことについて答えることは控えたい』と述べており、それに尽きる。私の立場からコメントすることは控えたい」と述べました。

自民 高木国対委員長「岸田首相が適切に判断する」

自民党の高木国会対策委員長は、記者団に対し「解散は岸田総理大臣が適切に判断されるものだ」と述べました。

また、野党側が内閣不信任決議案を提出した場合の対応について「出すか出さないかは野党がどう考えるかであり、それをどう判断するかは岸田総理大臣だ。衆議院を解散するか、与党として粛々と否決するかだ」と述べました。

自民 石破元幹事長「不信任決議案で『即解散』は趣旨が違う」

自民党の石破元幹事長は、記者団に対し「衆議院で示された意思と内閣の意思が異なる場合に、国民に聞いてみましょうというのが本来の解散の趣旨だ。内閣不信任決議案の提出を理由に『即解散だ』というのは趣旨が違う」と述べました。

一方で、「防衛力や子育て支援の強化の予算の規模や財源について、国民の判断を仰ぐということであれば、それは立派な解散の大義になりうる」と述べました。

公明 山口代表「これから準備したいと思う」

公明党の山口代表は14日朝、ラジオ日本の番組「岩瀬惠子のスマートNEWS」に出演し「岸田総理大臣は会期末で、いろいろ野党の動きもあるので、それをよく見極めたいと考えているのだろう」と述べました。

そのうえで、公明党としての対応を問われたのに対し「これから準備したいと思う」と述べ衆議院選挙がいつあっても対応できるよう、準備を進める考えを示しました。

一方、自民党との選挙協力に関連して「自民党は、公明党との選挙協力で得られている議席が相当数ある。衆議院でも参議院でも自民党単独で過半数を取れるだけの基盤は失われている」と指摘しました。

立民 泉代表「国民生活にとって よいのか考えて判断」

立憲民主党の泉代表は、13日夜の岸田総理大臣の記者会見について「衆議院選挙をやるつもりがあると感じた。防衛増税も子ども予算の財源も先送りで、国民にほとんど負担感を感じさせないが、選挙後には負担増が待っている」と指摘しました。

そのうえで、岸田内閣に対する不信任決議案を提出するかどうかについては「最大限、状況を見定め、国民生活にとって出すことがよいのかを考えて判断する。当然の判断をする党代表の立場として、しかるべきときに態度を表明する。決議案を出して解散は野党のせいだとするのであれば、解散権の行使の責任転嫁で、極めて無責任な岸田総理大臣の姿だ。解散されれば、最大限、戦うのみだ」と述べました。

維新 馬場代表「惑わされず 臨戦態勢を整える」

日本維新の会の馬場代表は、党の役員会で「岸田総理大臣がやるのかやらないのかは最後までわからない。立憲民主党が内閣不信任決議案を出すのか出さないのかもよくわからないが、惑わされることなく、臨戦態勢を整えて一歩ずつ選挙に向かって歩んでいきたい」と述べました。

共産 穀田国対委員長「解散権もてあそんではいけない」

共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「岸田総理大臣は、今まで『解散は考えていない』と言ってきたが、今度はニュアンスが大きく違う。解散権をもてあそんではいけない。内閣不信任決議案の提出を引き金に、解散しようとしているのは透けて見えるが、提出が解散の大義になるという理屈は成り立たない。岸田内閣が信任に値しないことははっきりしており、内閣不信任決議案が提出された場合は賛成する」と述べました。

国民 玉木代表「何を国民に問うか 大義示すことが重要」

国民民主党の玉木代表は、党の会合で「神経戦が続いている。内閣不信任決議案を出すのであれば覚悟がいるし、解散を打つ側は、何を国民に問うのかという大義を示してやることが、民主主義にとっては極めて重要だ。解散がいつあってもおかしくないという緊張感を持ちながら、選挙の準備を怠りなく進めていく」と述べました。

令和臨調 佐々木共同代表「『常在戦場』は卒業を」

各界の有識者が参加する「令和国民会議」、通称「令和臨調」の共同代表を務める、元東京大学総長の佐々木毅氏は、超党派の国会議員の会合で講演し「衆議院の解散は頻繁にやるべきではなく、衆議院議員は4年間、落ち着いて活動すべきだ。令和の時代は、むだづかいをする余裕はなく、『常在戦場』はそろそろ卒業してほしい」と述べました。