中国がキューバに情報収集施設を設置 バイデン政権警戒強める

アメリカのバイデン政権は、中国が中米のキューバに情報収集のための施設を設け、4年前の2019年に増強させていたと指摘し、キューバ政府に懸念を伝えたと明らかにしました。中国がアメリカ本土に近いキューバで、情報収集活動を活発化させているとして警戒を強めているものとみられます。

アメリカのブリンケン国務長官は12日、記者会見で、中国が中米のキューバに情報収集のための施設を設け、4年前の2019年に増強させていたと指摘しました。

そのうえで「中国は自国から離れたところでも軍事的な影響力を行使できるよう、世界各地で情報収集拠点を拡大しようとしている」と述べ警戒感を示しました。

また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者会見で「中国がキューバで情報収集能力を手に入れようとするのは新しいことではない」としながらも、キューバ政府に対し懸念を伝えたと明らかにしました。

アメリカ国防総省が去年公表した報告書では、中国軍は、カンボジアやケニア、それにタジキスタンなど各地で軍事拠点の設置の可能性を検討しているとされています。

バイデン政権としては、アメリカ本土に近いキューバで、軍事力を増強させている中国が、情報収集活動を活発化させているとして警戒を強めているものとみられます。

一方、キューバのロドリゲス外相はみずからのツイッターに動画を投稿し「中国のスパイ施設がキューバにあるというアメリカ国務長官の主張は完全なうそだ」と反論しました。

中国外務省報道官 米側の主張を強く否定

中国外務省の汪文斌報道官は、12日の記者会見で「アメリカ当局やメディアは、中国がキューバにいわゆるスパイ施設を設置したなどと一連の矛盾した情報を拡散した」と述べ、アメリカ側の主張を強く否定しました。

そのうえで「アメリカが、どれだけ中傷しても中国とキューバの友好関係を壊すことはできない。アメリカが、世界各地で大規模かつ無差別に、盗聴や機密情報を盗んでいる事実も隠すことはできない」と反論しました。

専門家 “今後も拠点として強化していくと考えられる”

中国と中南米の関係に詳しい上智大学の岸川毅教授は「ラテンアメリカの中ではキューバは中国にとって長い間、国交を結んでいるし、思想的にも一緒で、一番情報収集の拠点として使いやすいところだ。アメリカに近くて情報もいろいろあるはずなので今後も拠点として強化していくと考えられる」と指摘しました。

中国は、台湾で「1つの中国」の原則を認めない蔡英文政権が2016年に発足して以降、経済援助などをてこに、中南米で台湾の友好国の切り崩しを進め、ホンジュラスやニカラグアなど台湾との断交を表明し、中国と国交を結ぶ国が増えています。

岸川教授は、中国が中南米への影響力を拡大させるねらいについて「中南米全体が『アメリカの裏庭』と長く言われ、いわゆるアメリカの覇権が一番強力な地域だった。そこに自分たちが確実に存在感を高めているというひとつの宣伝材料の意味もあると思う」と分析しました。

そして、今回の件が今後の米中関係に与える影響については「アメリカは中国を刺激しないような言い方をしている。今後、中国との交渉や会談を進めていく前なので、あまり荒だてない程度にひと言、言ったというように見える」と述べ、限定的だとする考えを示しました。