それによりますと、全国の都道府県や市区町村に残っている資料から6550件の手術について調べたところ、家族の意向や福祉施設に入所する条件として、手術が実施されていたことが確認されたとしています。
さらに、医療機関や福祉施設を対象にした調査では、ほかの手術と偽ったケースもあったとしています。
一方、旧優生保護法については、昭和23年に議員立法として提出され、衆参両院ともに全会一致で可決・成立し、当時の議事録からは、手術の強制などに批判的な観点からの議論は確認されなかったとしています。
報告書は、今の国会の会期中に、衆参両院のホームページで公開される予定です。

旧優生保護法 いきさつなど調べた国会の報告書案まとまる
旧優生保護法のもとで、障害などを理由に不妊手術が行われていた問題で、当時のいきさつなどを調べた国会の報告書の案がまとまり、自治体に残っている資料から、福祉施設に入所する条件などとして手術が実施されていたことが確認されたとしています。
国の統計によりますと、平成8年まで施行された旧優生保護法のもとで実施された不妊手術は、本人が同意したケースも含めるとおよそ2万5000人に上っています。
不妊手術を強制された人たちなどを救済するため、平成31年に成立した法律では、国が同じ事態を繰り返さないよう旧優生保護法が制定されたいきさつなどを調査することが定められていて、12日、国会の調査室などが衆参両院の厚生労働委員長に報告書の案を提出しました。
家族の意向や福祉施設への入所条件として手術実施
衆院厚労委 三ッ林委員長「心からおわび」

報告書の原案を受け取った衆議院厚生労働委員会の三ッ林委員長は、「不妊手術を強制的にされた方々が苦痛を感じていたことについて国会に身を置くひとりとして真摯に反省し、心からおわびを申し上げたい」と述べました。
参院厚労委 山田委員長「すべての人が共生の社会へ」

参議院厚生労働委員会の山田委員長は、「当事者の皆さんが味わった苦痛を共有し、これからはすべての人たちが共生できる社会に向けて、負の歴史をしっかりと踏まえなければならないと改めて感じている」と述べました。
「旧優生保護法」とは
「旧優生保護法」は、戦後の出産ブームによる急激な人口増加を抑制することなどを目的に1948年に施行された法律です。
法律では、人工妊娠中絶のほか、精神障害や知的障害などを理由に本人の同意がなくても、強制的に不妊手術を行うことを認めていました。
当時は、親の障害や疾患がそのまま子どもに遺伝すると考えられていたことが背景にあり、条文には「不良な子孫の出生を防止する」と明記されていました。
旧優生保護法は、1996年に母体保護法に改正されるまで48年間にわたって存続し、この間に本人の同意なしに不妊手術が行われた人はおよそ1万6500人に、本人が同意したケースを含めると不妊手術を受けた人は合わせて2万5000人にのぼるとされています。
国は「当時は合法だった」として謝罪や補償を行ってきませんでしたが、不妊手術を受けされられた女性が国に損害賠償を求める裁判を起こしたことなどを受けて、2019年に障害を理由に不妊手術を強制された人たちを救済するための法律が議員立法として施行されました。
法律では、「旧優生保護法」を制定した国会や政府を意味する「われわれ」が「真摯に反省し、心から深くおわびする」としています。
そのうえで、本人が同意したケースも含め、精神障害や遺伝性の疾患などを理由に不妊手術を受けた人を対象に、医師や弁護士などで構成する審査会で手術を受けたことが認められれば、一時金として、一律320万円を支給するとしています。
国のまとめによりますと、ことし4月末までに1233人が一時金を請求し、このうち1047人が認められているということです。
法律では、人工妊娠中絶のほか、精神障害や知的障害などを理由に本人の同意がなくても、強制的に不妊手術を行うことを認めていました。
当時は、親の障害や疾患がそのまま子どもに遺伝すると考えられていたことが背景にあり、条文には「不良な子孫の出生を防止する」と明記されていました。
旧優生保護法は、1996年に母体保護法に改正されるまで48年間にわたって存続し、この間に本人の同意なしに不妊手術が行われた人はおよそ1万6500人に、本人が同意したケースを含めると不妊手術を受けた人は合わせて2万5000人にのぼるとされています。
国は「当時は合法だった」として謝罪や補償を行ってきませんでしたが、不妊手術を受けされられた女性が国に損害賠償を求める裁判を起こしたことなどを受けて、2019年に障害を理由に不妊手術を強制された人たちを救済するための法律が議員立法として施行されました。
法律では、「旧優生保護法」を制定した国会や政府を意味する「われわれ」が「真摯に反省し、心から深くおわびする」としています。
そのうえで、本人が同意したケースも含め、精神障害や遺伝性の疾患などを理由に不妊手術を受けた人を対象に、医師や弁護士などで構成する審査会で手術を受けたことが認められれば、一時金として、一律320万円を支給するとしています。
国のまとめによりますと、ことし4月末までに1233人が一時金を請求し、このうち1047人が認められているということです。
旧優生保護法をめぐる裁判
旧優生保護法のもとで不妊手術を強制された人たちが国に賠償を求める裁判は、5年前に、知的障害がある宮城県の女性が仙台地方裁判所に初めて起こし、その後、全国に広がりました。
これまでに38人が12の地方裁判所や支部に訴えを起こし、1審と2審であわせて15件の判決が言い渡されています。
このうち原告の勝訴が7件、敗訴が8件となっています。
裁判では、不法行為を受けて20年が過ぎると賠償を求める権利がなくなる「除斥期間」がポイントとなりました。
最初の判決となった仙台地裁は、旧優生保護法は憲法に違反するという判断を示しましたが、手術から20年が過ぎ賠償を求める権利が消滅しているとして訴えを退け、その後、各地の裁判所でも時間の経過を理由に原告の敗訴が続きました。
こうした中、去年2月、大阪高等裁判所が「除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」と指摘して、初めて国に賠償を命じる判決を言い渡しました。
さらに、翌月には東京高等裁判所も「原告が国の施策による被害だと認識するよりも前に賠償を求める権利が失われるのは極めて酷だ」として、国の賠償責任を認めました。
これ以降、司法判断の流れが変わって原告の訴えを認める判決が次々と出されるようになり、いずれも国が救済策として設けている一時金の320万円を上回る賠償額が認められています。
これらの裁判も国が上告や控訴をして審理が続いていますが、弁護団や支援者などは原告の高齢化が進んでいるとして一日も早い解決を求めています。
これまでに38人が12の地方裁判所や支部に訴えを起こし、1審と2審であわせて15件の判決が言い渡されています。
このうち原告の勝訴が7件、敗訴が8件となっています。
裁判では、不法行為を受けて20年が過ぎると賠償を求める権利がなくなる「除斥期間」がポイントとなりました。
最初の判決となった仙台地裁は、旧優生保護法は憲法に違反するという判断を示しましたが、手術から20年が過ぎ賠償を求める権利が消滅しているとして訴えを退け、その後、各地の裁判所でも時間の経過を理由に原告の敗訴が続きました。
こうした中、去年2月、大阪高等裁判所が「除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」と指摘して、初めて国に賠償を命じる判決を言い渡しました。
さらに、翌月には東京高等裁判所も「原告が国の施策による被害だと認識するよりも前に賠償を求める権利が失われるのは極めて酷だ」として、国の賠償責任を認めました。
これ以降、司法判断の流れが変わって原告の訴えを認める判決が次々と出されるようになり、いずれも国が救済策として設けている一時金の320万円を上回る賠償額が認められています。
これらの裁判も国が上告や控訴をして審理が続いていますが、弁護団や支援者などは原告の高齢化が進んでいるとして一日も早い解決を求めています。
被害者の弁護団「被害受けた人たちにきちんと向き合った調査を」

旧優生保護法に関する報告書の原案が提出されたことを受けて、全国各地で訴訟をしている被害者の弁護団が会見を開きました。
全国優生保護法被害弁護団の共同代表を務める新里宏二弁護士は、「われわれが把握しているかぎりでは、今回の調査にあたって原告や弁護士が話を聞かれることは無かった。残念な対応で、被害を受けた人たちにきちんと向き合った調査をしてもらいたい」と話しました。
また報告書については、「この法律がなぜ48年間も放置されてきたのかに注目したい。誤りをおかしたときに謝罪し補償するという大事なことが、なぜこの問題ではできなかったのか。それを明らかにすることが再発防止につながると思う」と訴えました。
全国優生保護法被害弁護団の共同代表を務める新里宏二弁護士は、「われわれが把握しているかぎりでは、今回の調査にあたって原告や弁護士が話を聞かれることは無かった。残念な対応で、被害を受けた人たちにきちんと向き合った調査をしてもらいたい」と話しました。
また報告書については、「この法律がなぜ48年間も放置されてきたのかに注目したい。誤りをおかしたときに謝罪し補償するという大事なことが、なぜこの問題ではできなかったのか。それを明らかにすることが再発防止につながると思う」と訴えました。