13年前の神戸の高校生殺害事件 元少年に懲役20年を求刑 検察

13年前、神戸市の路上で高校2年生の男子生徒を刃物で刺して殺害したとして、殺人の罪に問われている元少年の裁判で、検察は「強い力で複数回、突き刺すなど、殺意があることは明らかで責任能力が認められる」として、懲役20年を求刑しました。

2010年10月、神戸市北区の路上で近くに住む、高校2年生の堤将太さん(当時16)をナイフで刺して殺害したとして、当時17歳の元少年(30)が殺人の罪に問われています。

これまでの裁判で、元少年は殺意を否認しています。

12日、神戸地方裁判所で開かれた裁判で将太さんの遺族が意見陳述を行い、このうち父親の敏さんは、「私たち夫婦にとって、子どもは何より大切な宝物です。将太は殺されるために生まれてきたわけではありません。最も厳しく重い処罰を望みます」と、強い口調で訴えました。

このあと検察は論告で、「強い力で複数回、突き刺すなど殺意があることは明らかだ。凶器を水路に隠すなど、当時から違法性の認識を持って合理的に行動していて、責任能力が認められる」などと述べ、懲役20年を求刑しました。

弁護側 “懲役8年が相当”と主張

一方、弁護側は「事件当時、被告は心神耗弱の状態だった可能性があり、ふだんとは異なる人格だった」などとして懲役8年が相当だと主張しました。

最後に元少年は、「過去の私は、あまりにも未熟で、被害者の人生の何もかもを奪ってしまいました。これからの人生で、自分がしたことを償い続けたい」と述べました。

判決は、今月23日に言い渡される予定です。

翔太さんの母親や3人のきょうだいも意見陳述

12日の裁判では検察の求刑に先立ち、殺害された将太さんの母親や3人のきょうだいも意見陳述を行いました。

将太さんの母親、堤正子さん(66)は、「息子は優しく友達思いで、よく笑わせてくれました。しかし、事件の日から私の時間は止まったままで、心から笑うこともできません。悲しくて悔しい気持ちでいっぱいです」と現在の心境を語りました。

そして、被告に目を向けながら、「息子の命を奪った私たち家族の悲しみや苦しみを一生背負って生きていってほしい」と訴えました。

将太さんのいちばん上の姉は、「弟ともっと思い出を作りたかったです。奪っていい命など一つもありません」と涙ながらに語りました。

もう1人の姉は、「大切な弟を失い、食事ものどを通らず、涙が出る日々が続きました。被告から反省が感じられず、怒りが込み上げます」などと述べました。

そして兄は、「将太との最後の会話はケンカで、仲直りのことばも伝えられず、今も後悔が残っています。私たち家族は心に大きな傷を受けました。この裁判で真実が分かったとは思っておらず、最も重い罪を望みます」と訴えました。

遺族による意見陳述の間、被告は表情を変えることなく、遺族のほうを見ながら陳述をじっと聞いていました。

父親の敏さん「被告には最も重い処罰を」

12日の裁判を終えて堤将太さんの父親の敏さんが記者会見を行い、「きょうで審理が終わりすべて出し切ることができたのかは、結論が出ていないのでまだ分からないです。ただ、考え得るいちばん重い刑を検察が求刑してくれたことは、将太にとってもよかったと思います」と述べました。

そのうえで、「私たちのことばが、彼に届くとはあまり期待していませんが、少しでも届くといいです。裁判官と裁判員は私たちの気持ちを理解してくれたと思います。被告には最も重い処罰を言い渡してほしいです」と訴えました。