ジャニーズ問題 特別チームが会見 “被害者に寄り添って検証”

ジャニーズ事務所の元所属タレントなどから前社長による性被害の訴えが相次いでいる問題で、外部の専門家による再発防止のための特別チームが会見を開き、今後の調査の方針や活動内容について説明しました。

一方、元所属タレント2人は自民党の会合に出席し、子どもの性被害を防ぐため、児童虐待防止法を改正するよう求めました。

ジャニーズ事務所では、2019年に亡くなった前社長からの性被害を訴える声が相次いでいることを受け、先月、再発防止策の策定などのため法律や性被害などの外部の専門家による特別チームを設置しました。

12日、特別チームが都内で会見を開き、座長をつとめる元検事総長の林眞琴さんと、被害者支援に携わっている精神科医の飛鳥井望さんが出席しました。

会見で林座長は、特別チームについて第三者の立場から調査、提言を行っていくとして「性加害があったということを前提にして、組織風土にどういった問題があったのか検証していく」と説明しました。

そして今後、事実関係の確認や問題点の把握のために、被害を訴えている元所属タレントや事務所幹部の聞き取りなどを行ったうえで、再発防止のための提言を取りまとめて公表するとしました。

林座長は「非常に深刻な問題だと感じている。被害を申告している方々に寄り添い、厳正に検証して、事務所に再発防止策の実行を求めていきたい」と話していました。

会見の主な質疑応答

会見の主な質疑応答は次の通りです。

Q1 再発防止のためには性加害の事実認定が必要だと思うが、どのように解明していくのか。
A 林座長:性加害があったことを前提として、ジャニーズ事務所の過去の対応や問題点を検証していく。その過程で、性加害の事実についても検証することになる。事実認定は私たちの専権だと考えているので、仮に事務所が認めなかったとしても、私たちの認定が左右されるわけではない。

Q2 調査にあたって、ヒアリングする対象者の範囲は?広くアンケートなどを行い全容解明を目指す意向はあるか?

A 林座長:特別チームの目的は、性加害が起きたということを出発点として、それに対して事務所の対応にどのような問題があったのか、ガバナンスがどのように不十分だったのかを検証するというものだ。過去の加害行為すべてについて網羅的に調査することをチームは目的としていない。所属経験がある方にすべからく話を聞くというのは、心理的負担や風評被害を招きかねないことを考慮すると、適切ではないと考えている。
一方で、再発防止策を提言するためには、性加害がどのような状況で起きたのかを把握しなければならない。現在、被害を申告している方については、出来ればご協力頂き、心理的負担を考慮した上で話を聞かせてもらいたいと考えている。もし調査の過程で現役のタレントから被害の申告があった場合も、心情に配慮しながら慎重にアプローチしていきたい。ガバナンスの問題の検証のために、現役の幹部と周辺への聞き取りというのは必須だと考えている。また、ジャニー喜多川氏以外のスタッフなどによる性加害が出てきた場合についても、事務所のガバナンスを検証するという目的からすれば、調査の対象となる。

飛鳥井医師:(全容解明のための調査については)性被害の調査を受けること自体が心理的負担になるため、傷口を広げるようなことはすべきではないと考えている。それで全容解明が出来るのかという懸念はあると思うが、今回の事案は被害者と加害者の関係性や行為類型は恐らく共通している。また複数の申し立てによって、相当数にのぼるだろうということは分かるので、再発防止策を検討することは出来ると思う。その上で、やはり質的に違う問題がありそうだということになれば、話して頂ける方に事情を丁寧に説明して、掘り下げていくことは可能だと思う。
林眞琴座長
Q3 調査のスケジュールや、公表する内容について教えて欲しい。
A 林座長:発表時期のスケジュールは定まっていない。最終的に私たちの検証結果や再発防止策の提言内容をお知らせしたいが、公表する範囲をどうするかなどは、今後調査していく過程の中で決めていきたい。

Q4 なぜジャニーズ事務所は第三者委員会を設置しないのか。日弁連=日本弁護士連合会が掲げている第三者委員会のガイドラインに照らして、今回の特別チームはどう違うのか。
A 林座長:私たち特別チームは外部の独立した有識者で構成しているので、第三者委員会と受け取ってもらっても差し支えないと思う。必ずしも第三者委員会という名前である必要はなく、事務所側が名付けた「外部専門家による再発防止特別チーム」という名前が、端的に私たちの活動内容を表している。日弁連のガイドラインは、第三者委員会による調査のベストプラクティスをモデル化して掲げているもので、私たちもそれを踏まえて活動していきたいと考えている。
Q5 特別チームの活動が、被害者の回復にどのように役立つのか。
A 飛鳥井医師:医師とても大事な点であり、被害者の心を置き去りにしたままで、事務所の信用回復はありえないと思う。どういうことが被害者の回復につながるのかを明らかにしていけたらと思う。
被害者支援に携わる飛鳥井望医師(精神科)
Q6 なぜ再発防止のための特別チームのメンバーを引き受けたのか。
A 林座長:これまでのキャリアの中で、性暴力というのは一般的に社会的・経済的地位の影響力に乗じて、特に立場が弱い、年少のものに起こりやすいという認識を持っていた。そのなかで今回の事案は、その範ちゅうに入る非常に深刻な問題だと考えた。性加害の問題について、どのように再発防止策を講じて2度と起こさないようにするかというのは、社会的に意義があると思って引き受けた。

飛鳥井医師:立場を利用して弱い者に性加害行為を繰り返し、それが否認と沈黙によって続いていくというのは、日本だけでなくハリウッドなどでも見られ、防ぐのが難しい。ただし、勇気ある証言や報道機関によるスクープ、捜査機関が動くということを待たなければどうしようもないのかというと、そうではない。組織のガバナンスの改善によって、どうやって防いでいくかをこのチームで考えていかなければならない。

元所属タレント 自民会合で法改正求める

一方、この問題をめぐり、ジャニーズ事務所の元所属タレントが自民党の会合に出席し、子どもの性被害を防ぐため、児童虐待防止法を改正するよう求めました。

2019年に亡くなったジャニー喜多川・前社長から10代のころに性被害を受けたと訴えている、ジャニーズ事務所の元所属タレントの橋田康さんとカウアン・オカモトさんは、12日午後、自民党本部を訪れ、虐待問題の対策を議論する党の特命委員会の会合に出席しました。
この中で2人は、子どもの性被害を防ぐため
▽芸能事務所や部活動の場を念頭に、子どもの性被害を見かけた場合、警察に通報する義務を盛り込んだ児童虐待防止法の改正案を提出することや
▽被害を受けた場合の相談窓口について、小中学校で周知を徹底すること
などを要望しました。

会合のあと、特命委員会の事務局長代理を務める宮崎政久・衆議院議員は記者団に対し、「子どもたちを守れる仕組みを、政治として提示する責任があると十分自覚した。児童虐待防止法の改正がすべてとは思っていないので、よいものをきちんと実現したい」と述べました。
橋田康さんは会合のあと記者団に対し、「自民党の議員は法改正の必要性も踏まえて、前向きな姿勢で耳を傾けてくれた印象だ。会合の最後には『必ず結果を出します』と言ってくれた。どういう形になるかわからないが、問題をうやむやにするようなことはないと信じている」と話しました。

カウアン・オカモトさんは「込み入った質問も出て、細かい内容について話せた。かなり期待している」と話しました。