【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(12日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる12日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア国防省が命令 “全志願兵は今月中に契約結ぶ必要”

ウクライナへの軍事侵攻をめぐり、ロシア国防省は今月10日、ロシア軍の正規兵のほかに志願兵として戦闘に参加する人が増えているとしたうえで、ショイグ国防相がすべての志願兵は今月中に国防省との間で契約を結ぶ必要があるとする命令を出したと発表しました。

国防省は、契約を結ぶことはウクライナ侵攻に参加する志願兵やその家族の社会保障を強化することなどが目的だと説明していて、12日には南部チェチェンの志願兵の部隊と最初の契約を交わしたと発表しました。

国防省の対応について、ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏は11日、SNSで「ワグネルは、ショイグと契約は結ばない。ショイグは軍を管理できていない」などとショイグ国防相らを批判し、国防省と契約を結ぶ考えはないと強調しました。

ロシア国防省とプリゴジン氏との間では深刻な確執が指摘されていて、ロシアの独立系メディアは国防省は今回の措置をとることでワグネルの部隊を監督下に置き、指揮系統の一元化をねらおうとしているという見方も示しています。

プーチン大統領 「ロシアの日」にあわせて結束呼びかけ

ロシアでは12日、33年前の1990年にロシアが国家として主権を宣言した記念日「ロシアの日」にあわせて首都モスクワのクレムリンで関連の式典が行われ、プーチン大統領が演説しました。

「ロシアが困難な状況にある今、われわれの社会は強固に結びつき、特別軍事作戦に参加した英雄たちの支えになっている。われわれは揺るぎなく結束し祖国防衛のために立ち上がり、祖国の共通の利益と繁栄のために働くことの断固たる決意を特に痛感している。こうした遺産は神聖なものだ」と訴え、ウクライナ軍が本格的な反転攻勢に乗り出す中、ロシア国民に結束を呼びかけました。

ウクライナ軍 “3つの地域で軍事作戦展開”

領土奪還を目指すウクライナ軍は、東部ドネツク州から南部ザポリージャ州にかけて少なくとも3つの地域で軍事作戦を展開し、一部では集落を奪還したと主張するなど、大規模な反転攻勢を進めているとみられます。

ゼレンスキー大統領は10日、領土奪還に向けた反転攻勢が始まっていると明らかにし、ウクライナ軍はすでにドネツク州のバフムト周辺、西部地域、ザポリージャ州の西部地域の、少なくとも3つの地域で本格的な作戦を展開しているとみられます。

マリャル国防次官は11日、このうちドネツク州西部では、ザポリージャ州に近いベリカ・ノボシルカをめぐり、周辺の集落を相次いで奪還したと発表しました。

また、ロシア側が掌握を主張したドネツク州のバフムトについても、ウクライナ軍は10日、一日に1.4キロメートル前進したとし、参謀本部は12日、「敵はバフムト方面で先週、甚大な損失が出た」と強調しています。
一方、マリャル次官は、ロシア軍が南部ヘルソン州から戦闘能力の高い部隊を転戦させているとして警戒を示しています。

ロシア国防省は11日、ウクライナ軍に供与されたドイツ製の戦車を破壊したとするなど、撃退に成功していると主張しています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は11日、「ウクライナ軍は少なくとも3つの地域で反撃作戦を実施し、領土を奪還した」と分析する一方で、「ドネツク州西部とザポリージャ州西部でウクライナ軍は前進したが、ロシア側はこの状況を低く扱おうとしている」としています。

イギリス国防省は12日、ウクライナ軍の反転攻勢に対し、ショイグ国防相がウクライナ側を撃退したなどと積極的に情報発信していると指摘し、「ロシアでショイグ氏への批判が高まる中、前向きなイメージを打ち出そうとしている」と分析しています。

歴史学者“明確なロシアの敗北なければ終わらない”

ウクライナ出身の歴史学者、セルヒー・プロヒー氏が12日に都内で会見し、侵攻を続けるプーチン大統領の目的に関して「侵攻を正当化するため歴史が悪用されることは多く、その政治家のなかで最たるものがプーチン大統領だ」と述べ、19世紀の帝政時代のように周辺国を支配するという国家観を抱き、ソビエトの復活をねらっていると指摘しました。

今後の停戦の時期や条件については「分からない」としたものの、2014年にウクライナ東部で起きた戦闘についての停戦合意を引き合いに出し、「これは機能しなかった。ロシアに軍事力を増強する機会を与えてしまった」と述べました。

そのうえで「次の戦争につながるような暫定的な解決策ではなく、いつまでも続く平和を望むならば、ロシアによる武力行使を不可能にしなければならない。この戦争は、明確なロシアの敗北がなければ終わらない」と述べ、侵攻を繰り返させないためにもロシア軍を敗北に追い込み、永続的な和平を実現させるべきだと訴えました。

ウクライナの歴史が専門のセルヒー・プロヒー氏はザポリージャ出身で、アメリカのハーバード大学でウクライナ研究所長を務めています。

ゼレンスキー大統領 “ダム決壊でICCが調査開始”

ウクライナのゼレンスキー大統領は、南部ヘルソン州の水力発電所のダムが決壊したことをめぐって11日、ICC=国際刑事裁判所による調査が始まっていると明らかにしました。

ヘルソン州では、カホウカ水力発電所のダムが決壊して大規模な洪水が発生しています。
ウクライナ内務省は11日、これまでに6人が死亡したほか、35人の行方がわかっていないと発表しました。

ロシアとウクライナの双方は、相手が意図的に破壊したものだと非難しています。

こうした中、ゼレンスキー大統領は11日に公開した動画で、「ダムが決壊した日のうちにICC=国際刑事裁判所に調査を要請し、すでに始まっている」と明らかにしたうえで、調査に協力する考えを示しました。
国際刑事裁判所(オランダ・ハーグ)
ICCはダムの決壊の要因や、それが戦争犯罪にあたるのかどうかなどを調べるものとみられています。

また、同じ動画の中でゼレンスキー大統領は、ダム決壊の被害を受けた地域では、避難する人が乗ったボートをロシア軍が攻撃していると説明し、「その攻撃の一つで3人が殺され、10人がけがをした。ロシアが占領する地域から避難する最中だった」と強く非難しました。

ヘルソン州の州知事が11日、SNSに投稿した発表によりますと、殺害された1人は74歳の男性で攻撃を受けた際に体を盾にし、女性を守ろうとして犠牲になったということです。

ウクライナ軍は、領土奪還を目指して反転攻勢を進める一方、ロシア側もウクライナ軍に供与されたドイツ製の戦車などを破壊したと主張し、激しい攻防が続いているとみられます。

ウクライナへの供与 “ロシアの主張不当”官房長官

ウクライナに対する防衛装備品の供与をめぐり、ロシア側が懸念を伝えてきたことについて、松野官房長官は、今回の事態はすべてロシアによる侵攻に起因するもので、責任を転嫁しようとする主張は受け入れられないと反論したことを明らかにしました。

ロシア外務省は9日、モスクワに駐在する上月大使を呼び、「日本政府がウクライナへの軍事装備品の供与を決定したことは、敵対行為のエスカレートや犠牲者のさらなる増加につながる」と懸念を伝えたと発表し、陸上自衛隊が保有するトラックなどの100台規模での提供といった日本の支援策を念頭にしたものとみられています。

松野官房長官は12日午前の記者会見で、「上月大使からは、今回の事態はすべてロシアによるウクライナ侵略に起因して発生しているにもかかわらず、日本側に責任を転嫁しようとするロシア側の主張は極めて不当であり、断じて受け入れられないと反論した」と明らかにしました。

また、ロシアによる侵攻は明白な国際法違反であり、断じて許容できないと指摘し、即時にすべての部隊を撤収するよう改めて強く求めたということです。

ウクライナ軍「東部で集落奪還」と成果強調 激しい攻防継続か

ウクライナ軍の部隊は11日、SNSで東部ドネツク州にある集落を奪還したと発表し、砲撃などで大きく壊れた建物に兵士たちが国旗を掲げる動画を公開しました。

これについてウクライナメディアは、軍の報道官が「局地的ではあるが、反転攻勢の最初の結果と見ている」と述べたと伝えていて、成果を強調しました。
これに対してロシア国防省は11日、ウクライナ東部ドネツク州や南部ザポリージャ州などへ攻撃し、「ドイツ製の『レオパルト』3両を含む戦車11両や装甲車などを破壊した」などと主張しました。ウクライナ軍が領土奪還を目指して反転攻勢を進める中、双方の激しい攻防が続いているとみられます。

ダム決壊 6人死亡 35人行方不明 ウクライナ内務省

ウクライナ南部ヘルソン州のカホウカ水力発電所のダムが決壊したことによる大規模な洪水について、ウクライナ内務省は11日、これまでに6人が死亡したほか35人の行方が分かっていないと発表しました。

マリャル国防次官は11日、SNSでダムの破壊はロシア側によるものだと強調したうえで「ウクライナ軍による反転攻勢を阻止し、必要な戦力を確保する目的だ」と非難しました。