【単独インタ】小田凱人 車いすテニス 四大大会 最年少で制覇

車いすテニス界のレジェンド、国枝慎吾さんの引退からおよそ半年。国枝さんの後継者と期待される17歳の小田凱人選手が史上最年少で四大大会を制覇。さらに史上最年少で世界ランキング1位になることが確定しました。

10日の決勝のあと、パリでNHKの単独インタビューに応じ、現在の心境と今後について語ってくれました。

【Q.これまでの人生振り返ってきょうはどんな日になったでしょうか】

A.本当にもう一番幸せな日になりましたし、何て言っていいかすべてに関してまだなんかこう整理ついていない感じですけど、まだ実感がないので、あまり世界一とかグランドスラム優勝というところでヒューウェット選手に勝ったということと、グランドスラム決勝で勝ったというところは今はそれが徐々に来ているので、これから日本に帰ったりして徐々に実感がわいてくると思うので、今はそうですね、本当に幸せな日になりましたね。

【Q.史上最年少で四大大会制覇、史上最年少で世界ランキング1位、そこについての思いは】

A.単純に夢がかなった日なので、というのもありますし、常に『優勝します』『優勝します』とずっと言ってきて、優勝できたので、有言実行できたというのは自信にもつながりますし、よかったなと思います。
【Q.プレッシャーはありましたか】

A.もちろんないわけはないし、怖いというのはもちろんあるし、きょうの試合に関しては今まで以上にすごい緊張したので。あれだけ、自分で言っていれば、その分プレッシャーもあるし、負けたらどうしようという気持ちも多分ほかの選手よりも大きいと思いますし、その分やっぱり勝ったときの喜びというのは大きいですけど、負けた時の代償はやっぱり大きいと思うので、あれだけいろんなことを発言していれば。

そこは本当に口だけじゃないというのも証明できたと思いますし、ああやって言ったからこそ僕は勝てたと思っているので。ああやって自分でどんどん言っていかないと自分の場合は、モチベーションが上がってこないし、頑張れないので、自分で自分を鼓舞して高めていくというようなタイプなので、それは本当に有言実行できてよかったです。

【Q.自分が目標とするヒーロー像には近づいたか】

A.結果を出すことが一番ヒーローになる道へ、自分の中では、大事なので、それがきょうはかなった日なので、夢には確実に近づいてはいるとは思います。

【Q.きょうの自分を、骨肉腫の病気が見つかった8年程前の小田さんは、どう受け止めるでしょうか】

A.いま入院中の子どもたちも絶対に憧れてくれると思うので、それを信じて僕は常に戦っているので、そこは1人でも多くの子どもたちに見てほしいですね。
【Q.決勝でしたいテニスはできたか】

A.満足度はすごくあるし、かなり完成度も高く試合ができたので、本当にやってきたことすべて出しきれたという感覚もあるし、試合前の作戦もすべてはまって、本当に完璧に近い試合をできたんじゃないかと思います。

【Q.完璧に近い試合ができた要因は】

A.やっぱり自信はあったので、それが『やっぱりな』というのは試合中にもすごく感じて、『やっぱりいける』と、最初の1ゲームを取って、『これはいける』とそのときにだいぶ思ったので、そこからは本当に波に乗っていけたので、序盤の時点ですでに自分の中では勝ちまでのストーリーはできていたので、あまり最初でそう思うことはないんですけど。第2セットの中盤まで来てから『よしもういけるぞ』となるんですけど。

試合入ってすぐに『きょうはちょっと違う』というのをすごく感じて、自分の感覚とボールの跳ねたあとの伸び方がフィーリングで、すごくがっちりフィットしたところがあったので、試合中にある意味びっくりしたというか、『うわー、めっちゃいい』となったので、当たる感覚とボールの跳ねる場所と、というのがすべていいところに決まっていた。序盤の時点ですごい『これはいける』というふうに思いましたね。
2022年10月
【Q.国枝慎吾さんの後継者と期待されていますが、四大大会制覇は小田凱人選手として広く知られる第一歩になると思います。それについてどう思いますか】

A.もちろん時代の流れ的には僕が遅れてやってきて、ちょうどタイミング的に国枝さんが引退されるときに自分が一気にきたタイミングなので、そうやって言われてはいますけど、ただ自分の中では、『車いすテニスの小田凱人』なんだよというような意見はずっとやっぱり持っていて。優勝して、これから自分のスタイルをどんどん作っていかないとだめなので、これからもそういう気持ちは増えてくるのかなと思います。

ただ、正直めっちゃプレッシャーあるし、国枝さんの後継者と言われるのも、タイプが似ているかと言われると、『似ているのかな?』というのは自分の中ではあるので、少し違う道で歩んできたと思うので国枝さんとは。

小田凱人という名前だけでいろんな人に知ってもらうためには、四大大会優勝と世界1位の2つのタイトルは、必須になるのかなとは思ってやってきましたし、それは今後もそういう気持ちでやっていきたいと思いますね。

【Q.車いすテニスを、もっと大きなスポーツにしていきたいと話していたことについては】

A.車いすテニスを知らない一般の方に僕は知ってもらいたいというのが一番のモットーというか、一番伝えたいところなので、サッカーや野球を見るのと同じように、四大大会を見て、車いすテニスを見たいと思ってくれる人が増えてもらうことが、一番僕らのプレーへのモチベーションにもつながるし、車いすテニスへの貢献という部分にもつながると思うので。誰もが車いすテニスを知っていて、小田凱人という人物を知っていてというような世界観にまで僕はやっぱりプレーで持っていきたいので、それはこれからも常にずっと思って頑張りたいと思います。
【Q.これからどんな選手像を目指すか】

A.どんな選手、自分でもわからないので、それが逆に面白いかなという、誰も予想がつかないので。僕もどうなるかわからないし、どこまで続けるかもわからないし、そこは逆にわからなくてもいいのかなというのはあって。もちろんパラリンピック優勝とか、いろんな目標はありますけど、どんな選手と聞かれると、そこはもう5年後の自分に任せてやりたいし、パラリンピックのときの自分に任せてやっていきたいので、そこは誰も知らないということで。

【Q.決勝で苦しかったところは】

A.第1セットはデュースが続いていましたけど、その中で第2セットのちょうど中盤くらいのところの展開に関しては、すごく自分もピリピリしていましたし、少し自分のボールもちょっと甘く入る展開にはなってきていたので、そのタイミングでは少し揺らぐ気持ちはありました。

それに彼のサーブだったり、リターンも徐々にコースを突いてきて、ウィナーもどんどん取られていく展開になったので、その時には少し相手の波も徐々に来ているなというのは感じていたので、そのタイミングではちょっとやばいかなというのは感じていました。

【Q.ラブフォーティから巻き返す場面もありました。どうやって精神的な強さを維持できたのでしょうか】

A.特に意識していないですけど、そこからでも絶対に巻き返せるという自信は、世界一あるかなというのはあるので、絶対に気持ちだけでは本当に誰にも負けない強さはあるので。それがラブフォーティでもデュースでも、絶対取れるというふうに思えるので、その気持ちの強さというところは本当に武器になっていますし、そういう局面でも、やっていけている部分はあると思いますね。

【Q.決勝のセンターコート、初めて入ったときはどんな気持ちに】

A.入ったときはもう本当に超わくわくという感じでしたし、『見てろよ日本の子どもたち』というような気持ちで入っていきましたね。

【Q.優勝したときのイメージはしていましたか】

A.いろんなしゃべりたいことあったので、その中でどれをしゃべろうかなというのはありましたけど、ただ頭が真っ白になるので割とアドリブに近いんですけど。ただその前から少しは考えているので、優勝インタビューに関してはふだんからいろいろなことを考えるんですけど、優勝して何を言うかというのが選手としては大事になってくるので、その中で、相手選手への感謝と、これからのところは絶対に語りたいので、そこに関してはふだんからいろんなことを考えていました。
【Q.世界一になって今後は何を目標にしますか】

A.もちろん夢がかなったし、グランドスラム優勝もできたし、すごく今、満足感あります。ただ、別に優勝しても特に何も変わらないし、特にやるべきことも変わらないので、ただただ自分のやりたいテニスと求めているものを、追い求めて追求してというところに尽きるので、別に優勝してももっとこうしたい、ああしたいというのはまだまだあるので。ただ次の大会に入ればもう切り替えると思うので、もっともっとハングリーにいけるんじゃないかなと思います。