ダム決壊 へルソン州報道官 “ロシア側の妨害で救助進まず”

ダムが決壊し、大規模な洪水による被害が広がるウクライナ南部ヘルソン州の報道官がNHKの取材に応じ、浸水した地域のうちロシアが支配する地域では、およそ1万人の住民が救助や支援を必要としているものの、ロシア側の妨害で進んでいないと訴えました。

ウクライナ南部ヘルソン州の報道官、オレクサンドル・トロコンニコフ氏は9日、NHKの取材にオンラインで応じました。

トロコンニコフ氏はダムの決壊で浸水した地域の水位は「下がりつつある」としたものの、ドニプロ川の北西側では少なくとも2300人あまりが避難を強いられたと明かしました。

一方、浸水被害が出ている地域のおよそ7割はロシア側が支配する川の南東側の地域で、およそ1万人の住民が救助や支援を必要としているという見方を示しました。

そのうえで「この3日間、ロシアは住民の避難やボランティアの支援活動を阻んでいる。われわれは飲料水さえ届けられない」と述べ、ウクライナ側からの支援はロシア側の妨害で進んでいないと訴えました。

また浸水した地域ではロシア軍が埋めた地雷が市街地にも流出したと見られるほか、農地の浸水による農業の被害も深刻だとして、水が引いたとしても影響は長期に及ぶという見方を示しました。

一方で、決壊したダムの上流の地域についても「水位が低下し、井戸の地下水さえ減ってきている。多くの魚も死んだ」として、飲み水の確保や漁業への懸念も高まっていると説明しました。

また今後、被害を受けた街の復旧やインフラなどの再建に向けて「これまでに日本から届けてもらった建設機械を活用したい。それらの機材は、今後さらに必要になるだろう。日本は高い技術力を持っている」として、日本からのいっそうの技術支援に期待を寄せました。

現地の被害状況は

IOM=国際移住機関によりますと、ヘルソン州のドニプロ川の北西側の地域では3600棟あまりの住宅が被害を受けています。

またロシア側の当局者はロシアが支配する地域では2万2000棟あまりの建物が浸水していると明らかにしています。

ゼレンスキー大統領 “数十万人の飲料水に支障”

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、SNSを更新し、被害を受けた地域では数十万人の飲料水の確保に大きな支障が出ていると明らかにし「ロシアは人間や自然、生命そのものに対する意図的な犯罪の責任を負わなければならない」と強く非難しました。

国連機関 ロシア支配地域で支援できず

一方、国連人権高等弁務官事務所の報道官は9日、ロシアの支配地域での支援活動をロシア政府が拒否しているとしたうえで「被害にあったロシアの支配地域への立ち入りを認めるよう、繰り返し要求する」と対応を求めました。

また現地で支援活動にあたっているOCHA=国連人道問題調整事務所の担当者も「危機的な状況は悪化を続けている。ロシアが支配する地域の人たちと、どのように連絡を取るかが焦点となっている」と述べ、現地での支援のためロシアと粘り強く交渉を続けていく姿勢を強調しました。