【詳しく】地震相次いだ5月 専門家の見解 巨大地震との関係は

各地で地震が相次いだ5月。

能登半島では震度6強を観測。千葉県や伊豆諸島、鹿児島県などで5弱以上の揺れが5回発生し、「緊急地震速報」の発表は12回にのぼりました。

ふだんと比べて地震が多い気がするけれど、いったいどうして?
想定される巨大地震との関係は?

詳しく調べてみました。

地震が相次いだ先月、インターネット上では地震に関する声が広がりました。

「最近日本地震多すぎ」
「また地震の夢見たけど、流石に最近多くて疲れちゃう…」
「おや?地震?私が揺れてんの??」
「最近地震多すぎて完全にトラウマ…」
「南海トラフと関係ないのかな…」

防災グッズ 買い求める人増加 売り上げ2倍の店舗も

強い揺れを伴う地震が相次いだことを受け、備えを進める人も増えています。
東京 八王子市のホームセンターでは、家具転倒防止のポールや耐震用の粘着シート、手回し式のラジオといった防災グッズを買い求める人が多く訪れるようになったそうです。

5月の売り上げは去年の同じ時期と比べておよそ2倍に増えたといいます。

停電を想定した充電式の大容量電源にも問い合わせが相次ぎ、店内には特設コーナーが設けられていました。
広報担当 佐藤義一さん
「大きな地震が相次ぎ、防災対策の関心が高まっているのではないでしょうか。できることから少しずつ、大きな地震が起きる前に対策を始めてほしい」

5月 地震は多かったのか この10年で比べると

実感として地震が多かったように感じる5月。実際にどうだったのか。

まずは気象庁のデータベースで5月に発生した地震を調べてみました。
5月1か月だけで「震度4以上」の揺れを伴う地震は17回発生していました。

内訳は、震度6強が1回、5強が2回、5弱が3回、4の揺れが11回でした。

この10年間でみると…その結果がこちらです。
月別に見ると最も多かったのは熊本地震が発生した2016年4月で、122回と桁違いに多くなっています。

次いで北海道胆振東部地震が発生した2018年9月で21回でした。

専門家によると、一般的に規模の大きな地震のあとには揺れが強かったり、やや強かったりする地震が増える傾向にあるということです。

5月はそれに続く3番目で、この10年でみても「多かった」といえる結果となりました。

専門家「科学的にもあまりみられない“まれな現象“」

5月の地震活動について、専門家はどう見ているのでしょうか。

地震のメカニズムに詳しい東北大学の遠田晋次教授に聞きました。

地震の活動を科学的に評価する場合、揺れの強さを示す「震度」ではなく、規模を示す「マグニチュード」をもとにするといいます。
「震度」は私たちが生活している場所での“揺れの強さ”を表すのに対し「マグニチュード」は地震そのものの大きさ“規模”を表すものさしです。

マグニチュードが小さくても震源からの距離が近ければ震度は大きくなり、マグニチュードが大きくても震源から遠ければ震度は小さくなるという関係があります。

遠田さんは規模が比較的大きく、揺れも大きくなりやすいマグニチュード「5以上」の地震をもとに分析しました。
その結果、5月は27回発生し、能登半島や関東だけではなく北海道から沖縄にまでおよぶ広い範囲で起きていました。

遠田さんによると、1923年(大正12)以降、マグニチュード5以上の地震はこれまで1万回あまり。

1か月あたりで単純に平均するとおよそ9回で、5月の「27回」はこれを大きく上回っていました。

震度7を観測した2016年4月の「熊本地震」から1か月間の地震回数の27回に匹敵し、2018年9月に発生した「北海道胆振東部地震」の前後(8月中旬~9月中旬)の21回よりも多くなっていて、マグニチュードで見ても「特に多かったことが分かる」ということです。
東北大学 遠田晋次教授
「日本列島の各地で同時期に群発地震が起きた。科学的にもあまりみられない“まれな現象“が起きていたといえます」

一方で、地震活動には“ゆらぎ”があり、多い時と少ない時を繰り返していて、過去にも大きな地震が同じ時期に集中したことはあるといいます。

遠田さんは「ありえない現象が起きていたわけではない」と指摘しています。

想定される巨大地震との関係は?

もう1つ、気になるのは想定される巨大地震などとの関係です。

これについて遠田さんは「想定されている南海トラフの巨大地震や首都直下地震に直接関係するものではない」とみています。

「5月の地震で最も規模が大きいものが能登半島沖のマグニチュード6.5です。この規模だと地震が直接影響を与える範囲は周辺の数十キロ。南海トラフ巨大地震の想定震源域から数百キロ以上離れていて、直接影響を及ぼしたとは考えにくい。このほかの地震も想定される震源域から遠く離れていて、前兆的なものではないと考えられます」
千葉県や伊豆諸島で震度5強や5弱の揺れを観測した地震と首都直下地震との関係についても「関東は地下でプレートが重なり合う地震活動が活発な場所で、通常の活動として説明できる」としています。

一方、遠田さんは、日本は世界的に見ても地震の多い国で大きな地震がいつ起きるかは分からず、この機会にいずれ来る大地震への備えを進めることが重要だと指摘します。

「今の科学ではいつ、どこで大きな地震が起きるか予知は困難だというのが実情です。日本は地震国であり、いつ大きな地震がおきてもおかしくありません。5月に相次いだ地震は『日本は地震が多い』という自然からの警告だと捉え、日頃からの備えを進めてほしい」

気象庁「それぞれの地震 直接関係はない」

5月に各地で相次いだ地震については気象庁も定例の記者会見で「それぞれの地震が直接関係するとは考えていない」との見解を示しています。
その上で、改めて地震の備えを進めるよう呼びかけています。

(気象庁 下山利浩 地震情報企画官)
「南海トラフでは30年以内に70%から80%の確率で巨大地震が起きるという評価があり、南海トラフに限らず日本はいつでもどこでも大きな地震が発生しうる。『怖いな』と思ったら、備えを改めて考える機会にし、家具の固定などできる備えを進めてほしい」

大きな地震はいつ起きてもおかしくない しっかり備えを

この10年でも“まれな現象だった”という5月の地震活動。

相次ぐ地震に不安を感じた人も多いと思います。

大きな地震はいつ起きるか分からないからこそ、揺れの対策や備蓄など、日頃の備えをできるところから始めてみませんか。