トランプ前大統領 機密文書問題めぐり起訴か 米メディア

アメリカの主要メディアは、トランプ前大統領の自宅から最高機密を含む複数の機密文書が見つかったとされる問題で、トランプ氏が連邦大陪審に起訴されたと報じました。トランプ氏は、弁護士から起訴されたと連絡があったとした上で「私は無実だ」と反発しています。

今回の事案をどうみればいいのか。
解説を動画と記事それぞれでお伝えしています。

この問題は、FBI=連邦捜査局が去年8月、南部フロリダ州にあるトランプ前大統領の自宅を捜索し、最高機密を含む複数の機密文書が見つかったとされるもので、アメリカ司法省は独立性の高い特別検察官を任命し、捜査を進めています。

アメリカの複数の主要メディアは8日、トランプ氏がフロリダ州マイアミの連邦大陪審に起訴されたと相次いで報じました。

有力紙、ニューヨーク・タイムズは、関係者の話として、トランプ氏は、政府機関が持ち出された機密文書を取り戻そうとしたのに対し、共謀して妨害するなど7件の罪に問われていると伝えています。

トランプ氏はことし3月、みずからの不倫の口止め料の支払いをめぐり、ビジネス記録を改ざんしたとして、ニューヨーク州の大陪審に起訴されましたが、アメリカ大統領経験者が連邦レベルの捜査に基づき起訴されれば、初めてです。
トランプ氏は、みずからのSNSに「腐敗したバイデン政権が私を起訴したと弁護士に連絡があった」と書き込みました。

その上で「アメリカ大統領経験者にこのようなことが起きるとは、考えてもいなかった。私は無実だ」と強く反発しています。

来年の大統領選挙に立候補しているトランプ氏は、共和党内での支持率は今月4日時点で56%にのぼり、共和党内の最有力候補者となっていて、捜査の行方に高い関心が集まっています。

トランプ氏「わたしは無実 それを証明する」

トランプ氏は8日、みずからのSNSに動画を投稿し、「われわれの国は地獄に向かっている。司法省やFBIを武器として利用している」と述べ、バイデン政権が司法機関を利用して大統領選挙に介入していると強く批判しました。

その上で「わたしは無実であり、われわれは、しっかりとそれを証明する」と強調しました。

共和党 マッカーシー下院議長 起訴に反発

野党 共和党のマッカーシー下院議長は、トランプ氏が連邦大陪審に起訴されたと報じられたことについて、「大統領が自分に対じする有力候補を起訴するのは信じがたいことだ。バイデン大統領は長年、機密文書を保管していた」とツイッターに投稿し、バイデン大統領の政治的な思惑が背景にあるとの認識を示して反発しました。

そして「私と法の支配を信じるすべてのアメリカ人は、この重大な不正に対してトランプ氏とともに立ち上がる」として、自分は無実だと強調するトランプ氏を支持する考えを示しました。

また共和党の候補者選びで、現時点でトランプ氏の最大のライバルになると目されている、フロリダ州のデサンティス知事もツイッターに「法の執行機関の武器化は自由な社会に対する致命的な脅威だ。私たちは長年にわたって政治的な立場によって法の適用が偏っていることを目の当たりにしてきた」と投稿し、今回の起訴は政治的なものだと批判しました。

機密文書問題をめぐる経緯

アメリカでは、大統領は、退任時に公務に関わるすべての文書や記録を国立公文書館に移して保存しなければならないことが、法律で定められています。

しかし、トランプ氏はおととしの退任にあわせて機密文書を含む資料を持ち出したとされています。

国立公文書館は去年1月にトランプ氏のフロリダ州の自宅から15箱分の資料を公文書館に移したことを明らかにしています。

その後国立公文書館は司法省に通知し、去年8月には、FBI=連邦捜査局がトランプ氏の自宅を捜索。最高機密を含む複数の機密文書を押収したとしています。

司法省は捜査を妨害する目的で機密文書などが隠されていた疑いがあったと指摘した上で、捜索の際に見つかったものだとして「最高機密」などと記された文書の写真を裁判所に提出しました。

さらに司法省は去年11月、独立性の高い特別検察官を任命し、捜査を進めていました。

機密文書をめぐっては、バイデン大統領の自宅や私的な事務所からも副大統領時代の機密文書などが見つかり、別の特別検察官が調べを進めているほか、ペンス前副大統領の自宅からも機密文書が見つかっています。
今回の事案をどうみればいいのか。ワシントン支局に駐在経験もある国際部の石井勇作デスクに聞きました。

Q1
トランプ氏、以前にも起訴されていましたが、今回の事案はどうみればいいのでしょうか。
A1
前回、3月は、みずからの不倫の口止め料の支払いをめぐりビジネス記録を改ざんしたとしてニューヨーク州の大陪審に起訴されたというものでした。

これに対して、今回は国家の機密に関わる事案で、大統領経験者が連邦レベルの捜査に基づき起訴されれば初めてということもあって、より重大な問題だという受け止めが広がる可能性はあります。

Q2
来年のアメリカ大統領選挙にトランプ氏は立候補を表明していますが、影響はありそうでしょうか。

A2
トランプ氏は疑惑を一貫して否定し、民主党側による恣意的な捜査で「選挙干渉」「魔女狩りだ」などと強く反発しています。

トランプ氏は、これまでも自身にネガティブな情報を「不当だ」とか「いいがかりだ」などと強く主張することで逆に支持の拡大につなげてきた面があります。
こちらのグラフにあるように、ことし3月に起訴された際には、むしろその後、支持率は上がっています。

今回も起訴に反発するトランプ氏の熱心な支持者は、さらに結束するとみられます。

一方で、仮に今後、裁判で有罪判決を受けるようなことがあれば、大統領選挙の本選挙で無党派層の支持を得ることが難しくなるという見方も根強くあります。

司法手続きの進展次第では、現在は一部にとどまっている党内からの批判の声が高まる可能性もあり、今後の司法手続き、裁判が焦点となります。