天皇皇后両陛下 きょう ご結婚から30年

天皇皇后両陛下は、9日、結婚から30年を迎えられました。「これまでの歩みを進めてこられたことに深い感謝の念を覚えます」などと文書で感想を述べられました。

両陛下は、結婚30年にあたって、文書で感想を寄せ、「結婚30年を迎えると思うと、感慨もひとしおです。30年前、雨の降る中で執り行われた結婚の儀や午後の朝見の儀、多くの方から温かい祝福を頂いたパレードなどを懐かしく思い出します。たくさんの方からの助けを頂きながら、二人で多くのことを経験し、互いに助け合いつつ、喜びを分かち合い、そして時には悲しみを共にし、これまでの歩みを進めてこられたことに深い感謝の念を覚えます」と振り返られました。

また、上皇ご夫妻が常に国民の幸せを願いながら心を込めて公務に取り組まれたとして、「そうしたなさりようを心に刻みながら、今後とも国民の幸せを願い、二人で協力しながら務めを果たしていくことができればと考えています」と述べられました。

長女の愛子さまについては「私たちの生活を楽しく和やかなものにしてくれるだけでなく、愛子が学び、経験する一つ一つのことが、私たちにとっても新たな学びへとつながっていると感じます」とつづられています。

そして、「この機会に、国民の皆様より寄せていただいている温かいお気持ちに対して、改めて感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。これからの時代が、皆様にとって明るい希望と夢を持って歩みを進めていくことのできるものとなるよう心から願っています」と結ばれています。

両陛下は、9日、お住まいの御所で宮内庁長官などから祝賀のあいさつを受けられることになっています。

両陛下 ご感想全文

天皇皇后両陛下は、結婚30年にあたって、文書で感想を寄せられました。
その全文です。

今日で結婚30年を迎えると思うと、感慨もひとしおです。

30年前、雨の降る中で執り行われた結婚の儀や午後の朝見の儀、多くの方から温かい祝福を頂いたパレードなどを懐かしく思い出します。

この30年間に我が国と世界は大きな変化を経てきましたが、そうした道のりの中で、たくさんの方からの助けを頂きながら、二人で多くのことを経験し、互いに助け合いつつ、喜びを分かち合い、そして時には悲しみを共にし、これまでの歩みを進めてこられたことに深い感謝の念を覚えます。
この間、我が国は、阪神・淡路大震災や東日本大震災を始め、度重なる自然災害に見舞われてきました。

また、この3年余りの間には、新型コロナウイルス感染症が社会に大きな影響を与え、世界中の人々が多くの困難に直面してきました。

我が国では、新型コロナウイルス感染症の問題が少しずつ落ち着きを見せ、人々が日常の生活を取り戻しつつあることに安堵しておりますが、同時に、今なお様々な困難を抱えている人々の身の上を案じています。
つい先頃、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県の被災地を訪れましたが、これまでの人々の不断の努力と協力によって復興が着実に進んできていることを目の当たりにし、感慨深く思いました。

それとともに、まだ課題も残る中、新しいコミュニティー作りを始め、被災地が今後更に復興していくことを心から願っております。

上皇上皇后両陛下が、常に国民の幸せを願われながら、心を込めてお務めに取り組んでこられたお姿を私たちも拝見してきましたが、そうしたなさりようを心に刻みながら、今後とも国民の幸せを願い、二人で協力しながら務めを果たしていくことができればと考えています。

世界や社会の変化はこれからも続くものであり、そうした変化に応じて私たちの務めに対する社会の要請も変わってくるものと思われますが、そうした中でも、国民と苦楽を共にするという皇室の在り方が大切であるとの考えを今後とも持ち続けていきたいと思います。

これからも各地に足を運び、高齢の方や若者たち、社会を支える人や苦労を抱える人など、多くの人々と出会って話を聞き、時には言葉にならない心の声に耳を傾けながら、困難な状況に置かれた人々を始め、様々な状況にある人たちに心を寄せていきたいと思います。

そして、そのような取組のうちに、この国の人々の新たな可能性に心を開き続けていくことができればと考えています。
愛子も成年を迎え、少しずつ皇室の一員としての活動を行うようになりました。

愛子は、私たちの生活を楽しく和やかなものにしてくれるだけでなく、愛子が学び、経験する一つ一つのことが、私たちにとっても新たな学びへとつながっていると感じます。

この機会に、国民の皆様より寄せていただいている温かいお気持ちに対して、改めて感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

これからの時代が、皆様にとって明るい希望と夢を持って歩みを進めていくことのできるものとなるよう心から願っています。

両陛下と愛子さま 養蚕作業に臨まれる映像公開

宮内庁は、天皇皇后両陛下の結婚30年にあたり、養蚕の作業に臨まれる天皇ご一家の映像を公開しました。

映像は、先月30日に皇居にある蚕の飼育施設で撮影され、両陛下と長女の愛子さまが「蔟」(まぶし)と呼ばれる器具から蚕の繭を取り出して収穫する「繭掻き」(まゆかき)と呼ばれる作業をされています。

皇室では、明治時代から歴代の皇后が蚕を育てていて、側近によりますと、この日、皇后さまは、天皇陛下や愛子さまと繭の形や大きさについて和やかに話しながら作業されたということです。

御料牧場で静養される写真公開

天皇皇后両陛下の結婚30年にあたり、宮内庁は、天皇ご一家がことし4月、静養のため栃木県にある宮内庁の御料牧場を訪ねられた際の写真を17枚公開しました。

天皇ご一家は、ことし4月5日から10日まで栃木県高根沢町にある宮内庁の御料牧場で静養されました。
提供された写真では、滞在中に生まれ、愛子さまが「レインボー」と名付けられたメスの子牛とご一家が触れあわれる様子や、皇后さまや愛子さまが馬ににんじんを与えられる場面が写されています。ご一家は、動物と接する際、防疫対策として、防護服を着用されたということです。
別の写真では、収穫した大きな大根を持って、両陛下と愛子さまが笑顔を向けられています。

ご結婚から30年の歩み

天皇皇后両陛下は、30年前の平成5年(1993年)6月9日に結婚されました。天皇陛下は33歳、皇后さまは29歳でした。

皇居で行われた「結婚の儀」に続いてお住まいのある赤坂御用地までオープンカーでパレードされ、沿道には20万人近くが詰めかけました。

翌月、東京サミットにあわせて開かれた宮中晩さん会で、皇后さまは皇族として国際舞台にデビューし、元外交官のキャリアを生かして外国の首脳と懇談されました。

翌年(1994年)には、初めてお二人での外国公式訪問に臨み、中東4か国を回って、国際親善に努められました。

結婚から2年後の平成7年(1995年)には阪神・淡路大震災が発生、外国訪問の日程を繰り上げて帰国し、被災地を見舞われました。
結婚から8年が経った平成13年12月、長女の愛子さまが誕生されました。

しかし、その2年後、皇后さまは体調を崩し、療養生活に入られました。

宮内庁は「適応障害」という診断結果を公表。慣れない環境と大きなプレッシャーの中で、公務と子育てによる心身の疲れをためられていたのです。

天皇陛下は、記者会見で皇后さまを支え続ける決意を述べられました。

皇后さまは体調に波があり、公務を重ねるのが難しい状況が続きますが、平成23年(2011年)に東日本大震災が発生すると、両陛下で、大きな被害を受けた東北3県を相次いで訪れ、被災者を見舞われました。

平成25年(2013年)には皇后さまにとって、11年ぶりの外国公式訪問となったオランダへの訪問が実現し、回復に向けた大きな一歩を踏み出されました。

上皇さまの退位に伴い、即位した天皇陛下は、令和元年(2019年)10月、皇居・宮殿で皇后さまとともに「即位礼正殿の儀」に臨み、即位を内外に宣言されました。

しかし、令和2年(2020年)、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、両陛下が人々と直接触れあう機会は失われました。

翌年の元日、両陛下は「団結して苦難を乗り越えてほしい」と国民に向けて初めて、ビデオメッセージを発信されました。

さらに、オンラインを通じた人々との交流を始められました。

去年(2022年)からは感染の状況をみながら地方への訪問を再開し、今月、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県も訪問されました。

宮城 丸森町 大雨災害の被災者「皇后さまから優しいことばを」

令和元年に東日本や東北を中心に大きな被害が出た台風19号による豪雨災害では、両陛下は、即位に伴う一連の儀式を終えたあと、宮城県と福島県の被災地を見舞われました。

両陛下と懇談した宮城県丸森町の曽我國子さんは「皇后さまに『台風の時はどうしましたか』と聞かれ、腰までつかって避難してきましたと言ったところ、両陛下そろって『それは大変でしたね』と言ってくださいました。優しいおことばをかけていただき、本当にありがたいという思いです」と話していました。

丸森町の農家、佐藤雄一さんは、自宅と畑を失ったほか、隣の家の女性を助けることができなかったと自分を責め続けていましたが、両陛下のことばに救われたといいます。

佐藤さんは「隣のばあちゃんを助けることもできなかったと話したら、皇后さまから、『とにかく無理をしないで体を大事にしてくださいね』と声をかけていただきました。皇后さまは、涙ぐまれた様子で、本当に優しいことばで話してもらい、ここで負けてられない、落ち込んでばかりいられないと考えるようになりました」と振り返ります。

佐藤さんは両陛下のことばをきっかけに畑をいちから耕し始め、今では被災前と同じくらいの量の野菜を収穫できるようになったということで、「両陛下にはここまでできていますと伝えたいです。収穫した野菜を食べてもらえたら幸せです」と話していました。

両陛下が訪問 美術館館長「40年、50年と末永いお幸せを」

皇居のすぐ近くにあり、両陛下がプライベートでも訪れたことがある「静嘉堂文庫美術館」の河野元昭館長は、両陛下にお祝いのことばを寄せました。

去年12月に公務として来館した際には両陛下は、ときどき目を見交わしながら、国宝の茶わん「曜変天目」などをじっくり鑑賞されていたということです。

河野館長は「お二人が互いを尊敬しあい愛情を持たれている様子が伝わってくるようでした。想像もつかないお忙しい毎日をお過ごしだと思うので、ときには芸術で心を癒やし日々の緊張を解くためにまた足を運んでいただけたらうれしいです。この先も40年、50年と末永いお幸せをお祈りしたいです」と話していました。