PFAS 東京 多摩地域の住民に血液検査 “約2.4倍の血中濃度”

有害性が指摘されている化学物質を含む「PFAS」をめぐり、専門家と市民団体が、東京・多摩地域の住民を対象にした血液検査で、平均で、国の調査のおよそ2.4倍の血中濃度が検出されたとする結果を公表しました。

「PFAS」は、人工的につくられた有機フッ素化合物の総称で、このうち、「PFOS」と「PFOA」と呼ばれる2つの物質は、アメリカの研究などで有害性が指摘されています。

沖縄県のアメリカ軍基地周辺の河川や地下水などで国の暫定的な目標値を超える値が相次いで検出されたことを受け、京都大学大学院の原田浩二准教授と市民団体は、アメリカ軍横田基地のある多摩地域の住民650人を対象に血液検査を行い、8日、立川市で開いた記者会見でその結果を公表しました。

それによりますと、検査を受けた650人で検出されたPFOSとPFOAを合わせた平均値は14.6ナノグラムで、これは国がおととし、全国の3地点で行った調査の平均値の2.4倍にあたるということです。

PFOSとPFOAの合計の平均値が高いところでは自治体別で、
▽国分寺市で23.2ナノグラム
▽立川市で19ナノグラム
▽武蔵野市で15.8ナノグラムなどとなっています。

原田准教授は「沖縄などに続いて、多摩地域でもこうした結果が出たことから、全国的な問題だと捉えて、国や自治体が、しっかりした調査をしてほしい」と話していました。

検査受けた住民「健康に影響がないかどうか早期発見に努めたい」

8日の会見には、血液検査を受けた住民も参加し、検査を受けたいきさつや結果の受け止めについて話しました。

国分寺市に45年間住んでいるという友田絹子さん(75)は、検査でPFOSとPFOAの合計で、27.7ナノグラムの血中濃度が検出されたということです。

友田さんは「多摩地域は地下水がおいしいというので、それを使った水道水をずっと飲んできました。検査結果を聞いて、『ずいぶん高い』と感じたので、すぐに直接飲むのをやめ浄水器をつけました。国などには詳しく検証してほしい」と話していました。

また、国立市に30年ほど住んでいるという浜みゆきさん(70)は、PFOSとPFOAの合計が20ナノグラムを超えていたということです。

浜さんは「引っ越してきた時に、この地域の水道水は、井戸水を混ぜているので、おいしいと言われ、安心して使っていました。孫たちも近くに住んでいて、子どもたちの健康が心配です。結果も平均より高いことがわかったので、健康に影響がないかどうか早期発見に努めたいです。国や行政には、きちんと対策をとってほしい」と話していました。
有害性が指摘されている化学物質を含む「PFAS」をめぐり、専門家と市民団体が、東京・多摩地域の住民を対象にした血液検査の平均で、国がおととし、全国の3地点で行った調査の平均値のおよそ2.4倍の血中濃度が検出されたとする結果を公表しました。なぜ多摩地域で調査を行うのか?調査結果はどのようなものなのか、まとめました。
Q.1
化学物質の「PFAS」。一体どのようなものなのか?
A.1
有機フッ素化合物「PFAS」は、人工的につくられ、自然界には存在しない物質の総称で、4700種類以上あるとされています。水や油をはじき、熱に強いことから、テフロン加工のフライパンや食品のパッケージなど様々な製品に使われてきました。このうち「PFOS」「PFOA」と呼ばれる2つの物質は、アメリカの研究で有害性が指摘されています。こうしたことを受け、今、国内ではこれらを使用した製品の製造が禁止されています。国は、飲料水とするには、PFOSとPFOAが、1リットルあたり50ナノグラム以下(1ナノグラム=10億分の1グラム)を暫定的な目標値として設定しています。一方、アメリカでは、PFOSは0.02ナノグラム以下、PFOAは0.04ナノグラム以下を基準とすべきとしていて、わずかでも検出されるべきではないとする考えです。

Q.2
今回の血液検査は、なぜ多摩地域の住民が対象に?
A.2
市民団体と共同で調査を行った京都大学大学院の原田浩二准教授は、沖縄県のアメリカ軍基地周辺の河川や地下水などでPFOSなどが検出されたことから、去年、周辺住民の血液検査を行いました。
多摩地域にも、横田基地があり、周辺の井戸水などから検出されていることから、市民団体と共同で実態の把握を進めようと、今回の調査を行ったということです。

Q.3
結果は?
A.3
検査を受けた650人で検出されたPFOSとPFOAをあわせた血中濃度の平均値は14.6ナノグラムで、国がおととし、全国の3地点で行った調査の平均値のおよそ2.4倍の血中濃度が検出されたということです。10人以上が検査を受けた20の自治体のPFOSとPFOAをあわせた平均値は以下のとおりです。
     人数 PFOS+PFOA平均値
国分寺市  84 23.2
立川市   47 19.0
武蔵野市  23 15.8
あきる野市 19 15.2
調布市   21 14.2
国立市   62 14.0
府中市   47 13.9
小平市   28 13.8
西東京市  29 13.4
昭島市   50 13.0
武蔵村山市 40 12.8
福生市   24 12.3
青梅市   19 12.3
小金井市  22 12.2
東大和市  17 11.6
羽村市   23 11.5
三鷹市   13 11.5
日野市   33 10.8
瑞穂町   18 9.6
八王子市  13 7.3

Q.4
検出されているのは横田基地周辺だけなのか?
A.4
都の環境局や水道局などは、地下水や井戸水、水道水の調査を定期的に行っていますが、多摩地域に限らず、都内各地で、国の暫定の目標値を超える値が検出されていて、調査の結果を、ホームページで公開しています。
PFASはかつて、幅広い用途に使われたことから国は「環境中に残っているケースが多いと想定される」としています。

Q.5
各地で検出されているとなると、不安を感じる人も多いと思うが、都はどのように対応しているのか?
A.5
都は、国の暫定目標値の1リットルあたり50ナノグラムを超えているところがないか計測し、超えているところがあれば、監視体制を強化したり、井戸からの取水を停止したりして対応しています。また、専用の電話相談窓口(03-5989-1772 平日:午前9時~午後5時)を設けています。都によりますと、5月1日からスタートした窓口には、1か月間(5月31日まで)で、およそ400件の相談があったということです。
《主な相談内容》
1自分の住むところの水道水に、どの程度含まれているのか。
2浄水器を取り付けたり、ペットボトルの水を使用したりした方がいいか。
3健康への影響はどの程度あるのか。

1や2について、こうした相談は全体の半分程度を占め、最も多いということです。窓口では、自分が住んでいる地域を伝えれば、都水道局が調査を行ったデータをもとに、その地域の浄水場や蛇口の水道水の検査結果を聞くことができるということです。3については以下のように説明を行っているということです。
▼PFOSやPFOAは日本国内では健康被害は確認されていない。
▼免疫系や血液中のコレステロールの値などへの影響が指摘されているが、どの程度の量でどのような影響を及ぼすかは、現時点で明らかになっていない。
▼国で科学的根拠に基づく議論が進められていて、この議論の状況をもとに正しい情報を提供したいなど。

国としても、不明な点が多いことから、ことし1月、国の専門家会議を立ち上げ、現状の把握を進めています。不安を払拭するためにも早急に議論を進め、適切な情報を発信していく姿勢が求められています。