長崎 海上自衛官自殺 両親が賠償求めた訴訟 国側は争う姿勢

おととし、長崎県佐世保市の海上自衛隊佐世保基地を母港とする護衛艦で勤務していた海士長が自殺したのは、長時間労働に加えてパワハラが原因だなどと主張して、両親が国に対し7700万円余りの賠償などを求めている裁判が7日から始まり、国側は争う姿勢を示しました。

海上自衛隊佐世保基地を母港とする護衛艦で勤務していた海士長の西山大弥さん(当時20)はおととし2月、護衛艦内で自殺しました。

訴状によりますと、西山さんは3年前、複数人の同僚と飲酒し、無期限で上陸を禁止されたほか、1人だけ毎日反省ノートを書くよう指示されたとしています。

また、自殺する前日には、米軍基地内のファストフード店で買い物をしたことについて、禁止されているとして上官から厳しく叱責されたということです。

去年6月、西山さんの自殺は長時間労働による公務災害と認定されましたが、両親は、自殺したのは長時間労働に加えてパワハラが原因であり、上官が心身の状況に配慮する義務を怠ったとして、国に対し7700万円余りの損害賠償などを求めています。

7日、長崎地方裁判所佐世保支部で始まった裁判で、原告側は、20歳未満での飲酒という行為があったとはいえ、西山さんだけを狙い撃ちにした毎日の反省ノートなどは異常な指導だと主張しました。

一方、国側はいずれの請求も棄却するよう求めたうえで、主張については今後明らかにするとしました。

亡くなるまでのいきさつ

西山さんは4人兄弟の3男で、海上自衛官だった兄2人を追って高校を卒業した翌月の2019年4月、海上自衛隊に入隊しました。

西山さんは入隊当初、「兄たちを越える自衛官になる」と意気込んでいました。

しかし、上官とのそりがあわず、数か月後には退職を希望するようになったといいます。

入隊から1年余りたった2020年9月ごろ、当時、未成年だった西山さんは同僚たちと飲酒をして指導を受けました。

その後、「反省ノート」を書かせる指導と、下船を禁じる「上陸止め」が無期限で科されたといいます。

このうち「反省ノート」は毎日、日々の業務上の反省点を書き、それについて上官がコメントするというものでした。

赤い字が上官のコメントで、「すでに信頼がない」などといったことばが並んでいました。

そして、おととし2月、米軍基地内のファストフード店で買い物をしたことについて、禁止されているとして上官から厳しく叱責されたということです。

翌日、勤務していた護衛艦内で自殺しているのが見つかりました。

亡くなる数日前、母の美佐江さんに宛てたメッセージには、「もー限界です」、「理不尽なことで怒られてさ そればっかやったらこっちもやる気でらんやん」などと、上官の指導への不満が記されていました。

両親はその後、西山さんの自殺について、公務災害を申請し、去年6月に認定されました。

一方、自殺の原因については、長時間労働とされ、上官の指導について言及はありませんでした。

このため、今回、両親は真実を明らかにしたいと提訴に踏み切りました。

父親「無念はお父さんが晴らすぞという思いで闘いたい」

裁判のあと、記者会見を行った父親の西山賢二さんは、「何事にもめげない息子がどうして命を絶たなければいけなかったのか知りたいというのが、裁判を起こした理由です。『おまえの無念はお父さんが晴らすぞ』という思いで闘っていきたい」と話していました。

また、母親の美佐江さんは「きょうは自宅の仏壇の前で手を合わせて、息子に『頑張るからね』と声をかけてから来ました。息子には裁判でそばにいてほしいです」と話していました。

防衛省海上幕僚監部「裁判に関することは答えられない」

今回の裁判について、防衛省海上幕僚監部はNHKの取材に対し「裁判に関することについては、今後の裁判に影響を与えかねないため答えられない」とコメントしています。