箱根 去年の観光客1700万人 コロナ感染拡大前の8割程度に回復

全国でも有数の観光地、神奈川県箱根町を去年、訪れた観光客は1700万人で、新型コロナ感染拡大前の8割程度に回復し、町は「ようやく明るい兆しが見えてきた」として、観光客のさらなる増加を図りたい考えです。

箱根町によりますと、去年、日帰りや宿泊で町を訪れた観光客は1736万人でした。

おととしより386万人、率にして28.6%増え、感染が拡大する前の平成30年と比べて8割まで回復しました。

ただ、おととしと3年前、それにオイルショックで観光客が激減した昭和50年前後に次いで、過去7番目に少なくなりました。

一方、水際対策の緩和や政府の「全国旅行支援」などの効果もあって、10月以降は例年の水準まで回復したということです。

外国からの宿泊客を国や地域別にみると、一番多かったのがアメリカで、香港、韓国、シンガポールの順でした。

箱根町の担当者 “ようやく明るい兆し”

箱根町企画観光部の石川憲一部長は「暗い2年間をこえて、ようやく明るい兆しが見えてきた。インバウンドを増やすため、海外プロモーションを行うとともに、観光客の消費額増加につなげるため国や事業者などと連携していきたい」と話していました。

町内のホテル 個人客増加にあわせて改装中

新型コロナの感染拡大で、旅行のあり方も大きく変わっています。

箱根町のホテルでは、大きく増えた個人の宿泊客に向けて、客室の改装などを進めています。

箱根町湯本茶屋にある「ホテルおかだ」は、122の客室がある創業70年の老舗ホテルです。

以前は宿泊客の4割を団体客が占めていましたが、感染拡大にともなって激減しました。一方で「プライベートな空間でゆっくり過ごしたい」という個人や家族単位の宿泊客が増えたということです。

ホテルは去年観光庁の補助金を活用し、1億円以上の費用をかけて、6つの客室を和室から和洋折衷に改装して露天風呂がついた部屋にしたり一部の宴会場を、仕切りのある個室形式に変えたりしました。

ことし4月の宿泊客のうち、団体客の数は感染拡大前のおよそ6割でしたが、個人客はコロナ前を上回り、1人あたりの売り上げも増加したということです。

オランダから訪れた50代の男性は、「東京がせわしないのに比べて箱根は静かなのがいい。初めて入る温泉が楽しみです」と話していました。

「ホテルおかだ」の原洋平常務取締役は、「コロナ禍になってから個人のお客様が多くなり、プライベート感のある部屋の利用が増えた。今の時期は新緑がきれいなのでお風呂を楽しみがらゆっくりお過ごしいただけたら」と話していました。

観光協会はガイド養成も

箱根町では観光客に町の自然や文化、歴史を紹介するガイドの養成にも力を入れています。

箱根町観光協会「箱根DMO」は、おととしから、町の自然や文化、歴史を詳しく紹介するガイドの養成講座や認定試験を始めました。

観光客に町の魅力を深く知ってもらい、滞在時間を増やしたり、リピーターになってもらったりすることが狙いで、これまでに200人以上が受講したということです。

浅井美香さんはおととし講習を受けて資格を取得し、外国人観光客や県外から訪れた人向けのガイドを始めました。

6月は東京・八王子市から訪れた70代の女性を案内して旧東海道を歩き、歌川広重が描いた箱根の山を紹介したり、石畳が排水しやすいように並べられていることを解説したりしていました。

案内を受けた女性は「いつもは車で通り過ぎてしまいますが、ガイドしてもらうと目に入る景色がふだんと全然違うものに感じられます」と話していました。

浅井さんは、「箱根は温泉もすばらしいですがそれだけでなく長い歴史や文化があり、自然も豊かです。2泊3泊していただき、箱根の魅力を存分にお楽しみいただきたいです」と話していました。